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何時か来る崩壊に告ぐ

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デリカシーって美味しいんですか(沖田+横森)


「沖田勘次郎です」

暗い栗色の髪の毛を揺らす女の視線を貰うために、沖田は声をかけた。女は、まぁご丁寧に、と笑い、頭を下げる。

「横森可奈です。宜しくお願いします。沖田さんですね。今年のファッションショーも期待させていただいてます」

この大学にはファッションショーを大学祭にて行うということが恒例行事となっている。講堂を全て使い、業者の介入も多々必要となるそれは大学の名物にもなっていた。そのファッションショーでは招待チケットと一般チケットが分けられ、一般チケットには観覧料が発生する。しかしそれでも11時開幕の部に朝9時から当日券を狙って並ぶ程に捌けていく。たかが学生の祭と侮るなかれ。その中には教授たちの黒い怨念やら学生間のはしたないプライドの小競り合いやら、果ては大学への入学希望者を増やしたいともくろむ大学側の意図まで組み込まれているのだ。
そのファッションショーだが、しかし学生主体という大義名分が存在する。そしてこれを越えて教員や大人が介入することは出来ない。その今年の学生代表が、沖田勘次郎なのだ。
沖田は面倒くさがりというよりも、猪突猛進なタイプだ。熱情に満ちた心であるという意味ではない。自分の好きなことを探求する以外が、ほんの少し興味に欠けているだけだ、と沖田はいつも弁明する。それを信じるものは、おそらく半々くらいだったろう。

「えーと、委員長、さん、か」
「はい」

興味のないものは名前も役目もすぐに忘れてしまうため、沖田は一度横森の役職を確認する。横森はわずらわしいと思うそぶりもなく、にこり、と微笑んで見せた。
じ、と横森を頭の先からつま先まで見つめると、沖田は顎に手を当てて平然と言う。

「スリーサイズいくつ?」

ぴしり、と音を立ててその空間が軋んだ、ような気がした。

「な、に言ってんだお前!」
「とっ年頃の女の子にっなに聞いてるんですかぁ!」

前者は沖田の級友らしき青年、後者は横森の隣に立つ、おそらく副委員長だろうと思われる女子学生の言葉だ。

「すみません、自分では測ったことが無いので」
「じゃあちょっと測らせてくれる?」
「服は着たままで?」
「うん、まだ寒いから」

言うが早いかベルト代わりにしているメジャーを引き抜き、一歩踏み出す沖田の後頭部が叩かれる音が大教室に響きわたった。
作品名:何時か来る崩壊に告ぐ 作家名:こうじ