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何時か来る崩壊に告ぐ

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君とラノベと後輩と(横森+木虎+利鞘+鹿子)


「ねぇ、木虎ちゃん。彼は超能力者なの?」
「うん、マジマジ。サイキッカーするから見てて。ついでに俺の愛する彼女は総合思念体、まぁようするに宇宙人みたいなもんだ」
「よく分からないけど、彼女は凄いってことなのね?桂秋ちゃん!」
「あぁそうだ、彼女は素晴らしい!」

大学の執行委員会室の専用パソコンでアニメDVDを鑑賞しているのはこの大学に通っている三年生、横森可奈と木虎桂秋であった。桂秋と呼ばれた三年生は姿こそ中性的だが声色は確かに青年特有のテノールであったが、横森は敢えて彼をちゃん付けで呼んでいる。その意図も経緯も二人以外には不明だが、そもそも聞かれることが今まで無かったために今更尋ねられても二人して首を傾げるかもしれなかった。
前述したようにこの部屋は委員会室であるが、この部屋は大学の執行部、つまり高校などで言う生徒会室と同様のものと考えて良いだろう。横森はどこがどうしてそうなったのか、執行部の委員長であり、この部屋の(大義名分的には)持ち主である。しかし隣の桂秋はといえば、横森の文学部での友人であって、執行部委員ではない。つまり桂秋は「突然アニメのDVDを見直したくなったが図書館のメディアブースが満席で見ることができなかったために横森が居る委員会室にやってきた」という経路を辿っていたわけである。勿論横森が止めるべきであったのかもしれないが、当の本人が一緒になって見ているのだから、最早止められる人間は居ないようでもあった。

さて、横森と桂秋が肩を並べている、その後ろ姿を見ているのは一学年下の足立鹿子と今年入学したばかりの利鞘縁の二名である。こちらも男女一人ずつというペアであはあったが、纏う空気は別次元である。
そもそも鹿子は執行部の副委員長で、縁は執行部委員ではなく大学祭実行委員であった。しかも二人ともが横森を介してのみの接点しか持たずに居る状態という、バミューダトライアングルが発生、もしくはベルリンが倒壊するかどうかノックしているようなものであると言えよう。そしてその元凶である横森は未だDVDを見たまま振り向かない。一度でも振り向いてくれればなんとか指示をもらうなり退出を願い出たりできるだろうが、アニメ内ではまだ不思議な転校生は超能力を見せていない。
これは長期戦の予感がする。鹿子は内心で涙目になりながら机の下で携帯電話をいじり、横森が振り向くのを待つ羽目になってしまい、その間に目の前の縁と何度もフェイントの掛け合いにも似た会話を行うことになった。それもこれも全部横森さんの所為なんだ、と深い溜息を飲み込みながらそれでもその背に声を掛けられない自分に落胆する。
スプーンくらいさっさと曲げやがれ。
作品名:何時か来る崩壊に告ぐ 作家名:こうじ