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コンビニへ行こう! 後編

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Take4 恋は大喜劇




折原臨也は、今現在瀕死である。
トイレに閉じこもって数十分。羞恥心で死にたいけれども、このまま死んだならば帝人に申し訳なさ過ぎる。決死の思いをふりしぼり、顔をひきつらせながらぎくしゃくと居間に戻って、ソファに座ってくつろいでいる帝人に向き直る。
消え去りたい。
切実な願いは、しかし一旦飲み込んでおいて。
「そ、その……このたびは、非常に見苦しいところを、あの」
目を合わせられないまま言い訳をしようとした言葉を、帝人は軽く遮る。
「あ、いえいえ、こちらこそすみません。さすがにお手伝いとかはできませんので……」
「手伝っ……!?」
そそそそりゃ無理ですよね当たり前ですよね何をおっしゃるんですか帝人君!?
ますますいたたまれなさに目を伏せる臨也である。っていうか何この状況。抱きしめただけで反応するとか俺の体バカじゃないの。死ねばいいのに、むしろ今なら心置きなく死ねる気がする!
「っそ、その」
「こちらこそ試すような真似をしまして、すみませんでした。さっき停電の時、臨也さんに抱きついたじゃないですか?あの時も当たってるような気がして……、でもさすがに勃ってますか?とか聞けませんし」
「聞かないでください!」
「なので確かめてみようと思って」
「確かめないで欲しかった!」
「えーっと、その、なんていうか……若いですね?」
「とってつけたようなフォローやめてぇえええ!」
しかもフォローになっていない。羞恥心に押しつぶされて、臨也はおもいっきりテーブルに突っ伏した。もうこのまま世界の一部となってお星様になりたい、今ならば許されるはずだ。
しかしそれにしても、帝人があまりにも平然とし過ぎではないだろうか?
普通もうちょっと何かあるだろう、自分の友人が自分に対して欲情していたと分かったら、こう、修羅場的なものが。
「……あの、まさか、まさかだけど、帝人君もしかして、俺の気持ちに、」
「あ、ごめんなさい、それは気づいてました」
あっさり。
返った肯定に、一瞬の硬直と静寂。
「い、いつから……?」
「えっと、実は割りと最初から」
「死にたい!」
なんてことだ。
つまり臨也が地道に印象づけ大作戦だとか友達になりましょうだとか言っている間、気持ちはすべて筒抜けで「必死だなあ」とか思われていたというのか!
これは死亡フラグ!なんて立派で容赦ない死亡フラグ!
しかしそんなふうにのたうち回っている臨也に、落ち着いて、と手で示して、帝人はさらに言葉を続ける。
「実を言いますと、僕が臨也さんとお友達になったのって下心があったから、なんです」
「……はい?」
したごころ?ってなんだっけ、シタゴコロ、下心……え?下心!?
「なに、えっ?あ、おわ、が、」
「日本語でお願いします。あ、やっぱりいいです、ええとですね、つまり」
オーバーヒートして壊れた臨也にもう一度落ち着いて、と繰り返して、帝人は言葉を探した。どうすれば分かりやすく伝わるだろうか?
「ええと、実に趣味が悪いのは自覚しているんですが。その……僕、非日常とか大好きなんです」
自嘲らしきものを浮かべながら、帝人が言う。


「僕があなたみたいなイケメンに恋愛的な意味で好かれるなんて、すごい非日常じゃないですか?」


「……死んでもいいかな」
「あ、ごめんなさい。でもどっちかって言ったら可愛かったです、臨也さん」
だれか、この傷をどうにかふさいではくれないだろうか!だからそのフォローになっていないフォローはいらないよ!
「君のほうが可愛いよ!」
「いやほんとに、朝ごはん食に行く時、一旦準備するためにバックヤードに引っ込むじゃないですか。それで、支度してまたバックヤードから出てきた僕を見つけて、一気にばあっと笑顔になるところが可愛いなあって」
「そ、そんなんだった?」
「はい」
「殺して!」
うわああん。
なんかもういろんな意味で泣きたい臨也の気持ちは、帝人には理解出来ないものである。一生懸命フォロー(したつもり)なのに、なぜ泣いてしまうんだろう、と帝人は思った……面倒くさいこの人。
「じゃ、じゃあ帝人君はっ……俺をニートとか無職とかって、からかって……!?」
「え?ニートなんですよね?」
「そこは本気だったの!?」
「臨也さんがニートでアニオタでひきこもりなことは知ってます、だからこそそんな人に好かれるってすごく非日常だなって……」
「ちっがああああう!」
どうしてそうなってしまうんだ!っていうか、君は鋭いのか鈍いのか!もはや何も考えられない位の衝撃の中、臨也はがっくりと項垂れることしかできない。傍から見れば、単に臨也の恋心が分かりやすいだけであり、そしてまた挙動不審な臨也を誤解するのは実に当然の事に見えるのだが、本人は帝人と話している時常に一生懸命なので、自分が外からどう見えるかについて分かっていないのである。
折原臨也、素敵で無敵な情報屋。
……の、はず。だよね? 自分でどんどん自信がなくなっていく。
「み、帝人君は、俺のこと、その、面白がってたの?」
しゅんとうなだれたままそんなことを尋ねてみる。
今もしも臨也に耳があったならば、確実にへにょりと伏せられている、そのくらい分かりやすい凹みっぷりだった。
「うーん、実をいうと関わっていくうちに臨也さんは、我に返るんじゃないかなって少し思っていました」
「どういう意味?」
「僕は、自分で言うのも何何ですけど、ちょっと人より好奇心が強いくらいで、本当に普通の人間なんですよ。臨也さんに好かれる要素っていうか……よくわからなくて。だから、その内きっと臨也さんも飽きるんじゃないかなって」
「それはないよ!」
吠えるように叫んだ臨也に、はい、と帝人は微笑む。臨也からすればそれは正しく天使そのもののような、優しい笑顔で。
「あはは、そうですね。まさか台風の中僕を心配してコンビニに来てくれると思わなかったので、あの、」
ほんの少し照れたように首をかしげて、正面の臨也を優しく捉えた視線。臨也はどきりと大きく脈打った心臓を押さえて、何を言われるのだろうかと緊張の面持ちになる。期待して裏切られることなら慣れている、この上期待はすまい。一生懸命自分にそう言い聞かせていると、思いがけない帝人の言葉が。


「ちょっと感動しました……嬉しかったです」


……あれ?
だ、騙されないぞ。どうせいつもみたいに舞い上がらせてたたき落とすんだろう?そう思って臨也は以前緊張感を保ったまま、それでも言われた言葉はものすごく、嬉しいことのような気がして。
胸が苦しい。
……痛いほど、彼が愛しい。
「俺のこと、少しは、あの、意識してくれたって、思っても?」
「そういうふうに、聞こえませんでしたか?」
「き、聞こえたから尋ねてるんじゃないかぁ!」
もう、天国から地獄へ突き落とされるのはたくさんなんだよ!
けれども帝人は「ふふふ」と小さく笑って、まるで余裕の表情をするから、だから。臨也は大きく息を吸い込んで、吐き出して、それから。
「帝人君!」
「はい」
意を決する。
今日、きちんと自分の思いを帝人に、言葉にして伝えるんだ!
「あ、あの、俺は、普段はおしゃべりなんだ、本当に、口から先に生まれてきたって言われるくらい、だけど、その」
作品名:コンビニへ行こう! 後編 作家名:夏野