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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン-黄砂に舞う羽根-

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第1章 砂漠の都


 太陽が燦然と降り注ぐ枯れた大地に少年はいた。
 舞い上がる黄砂に吹かれながら、少年は砂に埋もれる足を一歩一歩着実に動かし、どこ行く当てもなく歩いているようだった。
 少年の年の頃は十五、六歳と言ったところだろうか?
 頭には耳の垂れ下がった犬に似ているパイロットハットを被り、その帽子にはゴーグルが付けられ、身体を覆う茶色い服は帽子と同じ素材らしき色褪せた皮製の物で、その服は砂や陽の光を拒むような厚手の服だった。
 衣服の所々は汚れ、解れ、破れ、少年の旅が長いものだったことを物語っている。
 ――そう、少年は旅慣れた物腰をしていた。
 そのことは少年の表情からも見て取れた。
 深く被った帽子から覗く瞳は、遥か彼方を見つめているようで、なにも見つめていないような眼差し。
 少年はあの先になにを見る?
 そして、なにを求め、旅をしているのだろうか?
 その時、少年の腹が奇怪な音を立てて鳴いた。
 ぐぅぅぅぅぅ〜〜〜っ。
 腹を押さえた少年が砂の上に膝を付き、そのまま前のめりになりながら顔面から砂にダイブした。
 少年の口から微かな声が漏れる。
「腹減ったぁ〜〜〜」
 今、少年に最悪最強の敵が襲い掛かる!!
 ――空腹。
 たかが空腹と莫迦にすることなかれ。この少年は金銭的な都合から旅の途中で食料を切らせ、一週間もの間、口に入れた物は塵と空気と水だけ。その水もついさっき飲み干してしまった。
 少年は意識を朦朧させながら砂の上に寝転び、仰向けになりながら顔の前に腕を置いて天を仰いだ。
 太陽はまだまだ高い位置にあり、陽の光が少年を串刺しにするが、気温そのものは高くない。大地が枯れている理由は、灼熱の太陽のせいではないのだ。
 地平線の向こうで砂埃が霧のように舞い上がり、轟々と風が鳴る。
 上体を起こした少年は目を細めた。
 視線の先に映る光景。砂の上を走る巨大な影と小さな影。それを見た少年は思わず声をあげた。
「食料!」
 舞い上がる砂の中を巨大な影が小さな影を追っている。
 轟々と砂を巻き上げ、風を鳴らしながら爆進する巨大な影の正体は岩蛇だった。その全長は約三〇メートルもあり、岩のような鱗に全身を覆われていて、小象であれば丸呑みにされてしまいそうだ。――これでも小物の岩蛇だ。
 巨大な岩蛇に追われていたのは、二足歩行のクェック鳥と呼ばれる飛べない鳥に乗った男だった。
 『クェック』と鳴き声をあげることから、その名を付けられたクェック鳥は、人を乗せた状態で時速約六〇キロメートルの速さで走ることができる。だが、それでは岩蛇の魔の手からは逃げられない。
 身体をくねらせる岩蛇は砂の上を泳ぐようにして獲物を丸呑みにしようとしている。このままでは、男はクェック鳥とともに真っ暗な岩蛇の腹の中に納まってしまうだろう。しかし、そうはならなかった。
 巨大な穴としか思えない大口を開けた岩蛇が男を呑み込もうとしたその時、男の手から閃光を放ちながら煙を撒き散らす弾丸が発射された。――信号弾だ。
 男の放った弾は巨大な口の中に消えていき、岩蛇は巨体を揺らしながら狂うように頭を振った。
 表皮は岩のような鱗に覆われていようとも、口の中に弾を打ち込まれたのでは岩蛇も堪ったものではない。しかし、致命傷にはならず、むしろ岩蛇は怒り狂うように暴れまわった。
 一部始終を見ていた少年はお腹を擦りながら呟いた。
「皮剥がせば食えるな」
 少年は岩蛇を仕留める気でいた。いや、喰らう気でいた。
 暴れまわる岩蛇によって砂の大地は波打つように動き、砂に足を取られたクェック鳥が男を乗せたまま転倒する。
 砂の上に大きく放り出された男の上に巨大な影が覆い被さる。
 巨大な壁のように迫ってくる岩蛇から男は逃げる術を失っていた。だが、男は見た。陽光を浴びて空に舞い上がった小さな影を――。
 ぼろ切れのマントを空中で投げ捨てた少年は、天に向かって咆哮しながらもだえ苦しんでいた岩蛇の口の中に飛び込んでいった。
 少年が岩蛇の口の中に飛び込む瞬間、どこかで歯車の鳴る音がして、少年の右手が激しい閃光を放った。
「喰らえ糞蛇っ!」
 怒号をあげた少年が岩蛇の長い舌に右手を押し付けた瞬間、岩蛇は巨大な身体を大きく震わせてスパークした。岩蛇は少年によって電撃を喰らわされたのだ。
 舌をだらりと伸ばして痙攣する岩蛇は巨体を砂の上に大きく打ちつけた。
 砂煙が舞い上がり、砂を被る岩蛇は微かに痙攣するものの、気を失っているようで動く気配はもうない。
 息を荒げて砂の上に大の字になって寝転ぶ少年の顔に男の影が射す。
「おまえ、人間か?」
 体躯のいい無精髭を生やした男の声には感嘆と畏怖の色が雑ざっていた。
 自分を見つめる男を霞む目で見ながら、少年は息絶え絶えといった声で呟いた。
「……飯…食わせろっ」
 そして、少年の意識は闇の中に落ちていった。

 砂漠の中心に聳える鉄の要塞。シュラ帝國が世界に誇る皇帝ルオの居城である巨城だ。
 権威を示すためだけに広い玉座の間。大理石の床に敷かれた金糸の刺繍が施された紅い絨毯が玉座まで伸びている。その玉座に座る者は、この帝國の若き皇帝 ――ルオだ。
 皇帝であるルオの前に威風堂々と立つ、雄ライオンのような髪型をした女性。白衣のようなロングコートを着た彼女は、濡れた唇からセクシーな低音で掠れた声を部屋に響かせた。
「目下のところトッシュの行方は不明。街の外に出かけたとの情報もあるけれど」
 目の前にいるのが皇帝だというのに、?ライオンヘア?の口調には敬意の欠片も含まれていなかった。それに対して皇帝も気にしたようすもない。
「トッシュは行方知れずか。して、あの話の真意は?」
「裏づけは取れたわ。すでに坑道は我が軍が占領し、発掘は至極順調よ。トッシュが街に帰って来て、このことを知ったらどんな顔をするか、楽しみだわ」
 妖々と魅惑的な笑みを浮かべる?ライオンヘア?。それにつられて皇帝ルオも静かに笑う。
「大地の下に眠るモノは、神か悪魔か……」
「なにが飛び出して来ようと、?失われし科学技術?は、この世界に新たな風を吹かせるわ」
「それは滅びの風かもしれないよ」
「滅びの力でも手玉にとって見せますわ」
「それは頼もしい」
 陰を纏い、くつくつと嗤う皇帝ルオの表情は、悪戯な悪魔のようだった。
 皇帝ルオの悪評は多く、独自の美意識を持つ彼の虐殺の数々は国を跨いで人々に知られる。
 三年前、前皇帝であるルオの父が崩御し、十三歳という若年でルオが帝位を継承して間もない時であった。ルオは領土拡大のために、とある砂漠に住む部族の要塞を落とすことになり、彼はただ一言を発した
 ――串刺し刑が観たい。
 その一言だけで、女子供関係なく一二〇人あまりの人間が串刺しにされ、その半分以上の人間が生きたまま串刺しにされたのだった。
 その光景は凄まじく凄惨であり、串刺しの刑を実行させられたルオの軍隊ですら躊躇いを覚え、嘔吐する者や、最後までルオの命令に従えずに串刺しの刑に処された者もいたほどだ。