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学園を制し者 第一話

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俺はスウェー運動ぎりぎり高見山の一閃をかわしてから、後ろに飛びのくようにして何とか距離をとった。
「おまッ! 今のはマジで当たりそうだったぞ!」
「あたりまえだ。当てるつもりで行ったのだから」
「あんなのが当たったら、ただの怪我じゃすまねぇよ!」
風見山の一閃はまったく音がしなかった。つまりそれだけ鋭い一閃だった。
こいつの家は風見山流剣術という道場を開いている。
古くからの名門らしく、門下生も100人単位でいるらしい。
そこの一人娘、それこそが『風見山 楓』だ。
幼いころから剣術の英才教育を受けたこいつは、化け物レベルで強いのだ。
「しかし、やはりな……」
風見山は満足そう腕を組みにうんうんとうなずいている。
「……なんだよ」
「やはり貴様と戦うのは楽しい。私の初太刀をかわせるものは、今のところお父様とお前以外しらない」
「そりゃどうも……」
ほめられているのにぜんぜん嬉しくない。
俺だって目で見えてかわせているわけではなく、勘で運良くかわせているだけだ。
勘というよりは、生存本能といったほうがいいかもしれないが。
「……そ、それでこそ私の……」
今度は顔を真っ赤にしてもごもごと何かをつぶやいている風見山。
「なんて?」
「え? あ、いや、その……」
普通に聞いただけなのだが、なぜか風見山はしどろもどろになっている。
「言いたいことがあるならはっきりいえよ……」
「う、うるさい! それでこそ私の……い、許婚だと言ったのだ!!」
『『『………………』』』
「うぉい! 風紀委員の諸君! なぜ無言で警棒を取り出すんだ!? ていうかなんでそんな危険なものを持ってるんだよ!」
この学園の生徒には武器が必需品なのだろうか……
俺と風見山は許婚だ。
といっても、こいつの親と俺の親父がその場のノリで決めた。
口約束で何の効力もないものなのでいちいち従う必要はないのだが……
真面目な風見山は従う気でいるらしい。
「風見山も! そんな親が勝手に決めた口約束に振り回されるなよ!」
「………………」
「何でそんな怖い顔で睨みつけるんだよ!?」
どうやら、完全にみんなの地雷を踏んでしまったようだ。
「それで? この絶対絶命の状況をいったいどうすると言うのだ?」
「………………」
 武器を構えながら距離を詰めてくる、風紀委員と風見山。
 なぜだろう。今回は俺が悪いはずなのに、立ち位置だけみると向こうが悪役に見えてくる。
(……やるしかないのか)
「ふっはっは! そろそろお別れの時間のようだ!」
 俺はおじけづきそうな自分を制するため、再び演技口調に変えた。
「ふっ! この状況でどう逃げるというのだ!」
 楽しそうに笑う風見山。
 そして俺は覚悟を決めた。
「――ッ!」
 俺は走り出す。
 俺が向かった先は……
「何がしたいのだ貴様は! そっちは行き止まりだぞ!」
そう、俺が今走って向っている先は行き止まりになっている。
安全のために取り付けられた柵があるだけだ。
しかし、俺は走るのをやめない。
「ま、まさか!」
 ここまできて、風見山はようやくおれのなさんとしていることに気づいたらしい。
 が、もう遅い。
 
「I can fly!!」


俺は一息で柵を飛びこえた。
作品名:学園を制し者 第一話 作家名:hirooger