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桜田みりや
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novelistID. 13559
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空白の英雄 終

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ミーファは静かに目を閉じた。彼女は1人でお姫様と勝負をして、勝った気分になっていた。
「私はトオンの腕の中で、トオンに守られて…眠るんだから…」
誇らしげにそう言った。事実、誇りに思っていた。ミーファはトオンを独り占めにしていることが堪らなく嬉しかった。
「ありがとう」
ミーファの目には涙がにじんでいた。
「でももう少しだけ…一緒にいたかったよ…」
ミーファはそれ以上喋らなかった。しばらくは空気の抜ける音がしていたが、それもすぐに聞こえなくなった。
瓦礫の村には遠吠えの微かなこだまが響いていた。



巣窟を抜けると白い花の草原が広がっていた。
トオンはその一角にミーファを埋めた。
小さな5角の花は少女にきっとよく似合うだろう。それにうるさいくらい咲き乱れたこの草原の中ならひとりでも寂しくないだろう。この場所なら人恋しくなって追ってはこないだろう。そう思う。
トオンはミーファの墓の前に腰を下ろした。
「ミーファ」
返事を期待したわけでもない。ただ口から零れただけの言葉だった。それでもどこからか返事が返ってくるような気がして振り向いた。もちろん何もなかった。強いて言うなら白い丘に大剣が刺さっているくらいだ。
そっと白い花を摘んで真新しい土の上に乗せた。
「すまない」
植物以外の生き物がいない丘をただ風が通りすぎた。トオンの声は風にかき消されるくらい小さなささやきだった。
「俺はお前を…」
しばらく言葉に詰まって考えた。何を言っても言い訳のような言葉しか出てこない。それにどんな言葉にしてもミーファにはもう届かない。だから考えることを止めた。
「待っててくれ」
白い花をまたひとつ、乗せた。
「すぐそっちに行く」
トオンは立ち上がると、錆びた剣を引き抜いた。

作品名:空白の英雄 終 作家名:桜田みりや