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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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11.



 緊急脱出区画へ向かう為、通用路を飛び駆ける一同。彼らの後ろには変異体達の黒い影。
 追いすがる変異体を斬り伏せ、打ち払い――その最中、ヒューケインが凛に尋ねた。
「ところで艦の爆発。ありゃ一体何が原因なんだ?」
 凛は、ばつが悪そうに口をとがらせて、
「う…うむ。すまん…やり過ぎた」
「あん?どう言う事だよ。<UG―MAS>は破壊したんだよな?」
「ああ。変異体化していたので、全て撃滅した。しかし、残った一体がジェネレータールームに逃げ込みリアクターと同化しようとしたのでな…」
 そう語る凛は、どこか歯切れが悪かった。
「で?」
「…リアクターごと、まとめて『作業』してやった」
「おぉーい!そりゃ超過(オーバーキル)すぎるだろっ!」
「だから、やり過ぎたと言った!それに、私は『<UG―MAS>を全破壊しろ』というお前からの指示を忠実に実行したまでだ。私は自分のパーソナルに従い機械的且つデジタルに思考し行動した。機械は主人(マスター)から命令されたこと以外は出来ないし、しない。それが、主人の望まぬ結果を生もうとも悪いのは機械ではない。命令を出した主人の方だ。つまり…」
「つまり?」
「つまり、そんな命令を出したお前が悪い」
「んがっ…!なんでそうなるんだよ!?少しは融通効かせろよ!この石頭シスター!!」
「黙れ、この『゛』!ああしなければ、どの道この艦自体がアクトゥスゥに完全支配されていたんだ。むしろ私の判断に感謝してほしいくらいだ。まぁ、多少のオマケはついてきたがな」
「結果、リアクター破壊の衝撃で艦の対A機能が一部不全を起こし、後ろの変異体共は、それが原因で生まれたって訳か。艦は爆発寸前。それが、”多少のオマケ”…ねぇ…?」
「ネチネチと嫌らしい奴だな!脱出時間が幾らかあるだけマシだと思え!」
 顔を紅潮させて抗議する凛。実に感情的。そこに機械的な冷たさは感じない。
 ヒューケインは、へへっと笑い。
「…ん、まぁー。そうだな。確かに、この艦が変異体化すれば、その内部にある一切合切を取り込んで変異を遂げるだろうし、そうなったら逃げる間もない。どのみちこの艦はもうだめだ。言う通り感謝しておくぜ、お姉ちゃん」
「ふん。最初からそう言え、この無能『゛』リーダーめ。サブリーダーである私と栞におんぶに抱っこで頼りよって。さっきも栞、栞と狼狽えていたな。全く情けない男だ」
「くくっ…てめぇ…。感謝の仕打ちがそれかよ…!」
 ――空気の偏りを/異変の兆候を――感じた。
「なんか、妙です…」
「あなたも感じたの?…私も…、ですわ」
 その異変に気が付いたのは、ミミリとエリカだった。
 ボゴォッ…。という、鍋にくべられたシチューが煮え立つ様な音が聞こえた。背後の薄暗い通用路の暗がりから。艦の内部から。――波打つ様な音が。
 音は次第に近づいて来る。こちらに。こちらに――音が――。
 波打つ様な――蠢く、”肉”の音が…!
 一度見れば、『確定』してしまう。取り返しがつかなくなる。
 そうした予感と恐怖心を抱きながらも、ミミリは背後を振り返って…。
 …見た。
「ひぃ…ッ!」
 ――そこにあったのは、肉。艦の構造物を食い破り、変異体達をも飲み込んで迫る――蠢き、波打つ――どす黒い、巨大な肉壁だった。
 肉壁は、その身から掌を模した触手を伸ばし、掴み。進路状にある一切合切を飲み込んでいく。
「なんだよありゃぁぁッ!?」
 そう驚愕混じりに叫んだのはヒューケインだった。
 栞が、独自の分析結果を述べた。
「この艦はもう既に浸食されていたと言う事ですよ!二体の特異体も大量の変異体達も、艦を支配する為の時間稼ぎだったんです」
「俺達を丸ごと取り込む為にかよ!でも、どのタイミングで乗っ取られた!?」
 凛が、思い出した様に言った。
「…心が辺りがある。私が<UG―MAS>を撃滅した時だ。黒い液体が、機体から滲み出すのを見た気がする。変異体化した<UG―MAS>と共に消え去った物だと思っていたが…。思い返して見れば、あれは分離した変異体の一部だったのかも知れないな」
「なるほどな。お前は、連中に嵌められたって訳だ!奴らはリアクターにわざと同化したんだろうよ!お前に”殺されて”、対A機能に不全を起こさせる為にな」
「ちっ。そして、変異体である黒い液体は、身を潜めてその瞬間を待ちわびていたと言う事か」
「そう言うこと!ってわけで…」
 ――途端に、肉壁の勢いが増した。

「すたこら逃げろぉぉぉ――――!!」

 デバイスを展開させ、推力全開。皆が皆、一直線に伸びた通用路を飛び翔る。
 進路状に黒い影――蝙蝠(こうもり)に似た――新手の変異体。
「もうっ!野暮ったらしいですよ!どいてッ!!」
 焦燥から来る苛立ちだった。ミミリが珍しく声を荒げる。
 一分程度だったが、体を休めたお陰で幾分か疲れは取れた。超人的な性能(スペック)を持つマジェスターは、常人よりも遙かに疲労回復が早い。――それもある。
 あの女性士官を守ると決意した。任された。そう言う使命感が、ミミリを支えていた。
「ぃいッ、やぁッ――!」
 縦軸のアクセルを繰り出し、レイピアで一閃。蝙蝠を真っ二つに斬り裂く。
 ――またもや違和感――空気の偏り。
 変異体達の様子が何かおかしい。まるで――、
(わざと殺されに来ているような…?そんな気がする)
 ――でも、どうして?
 それ以上は考える余地も、暇(いとま)も無かった。
 今は逃げる事。生き延びる事を優先させるべきだ。
 蝙蝠型の変異体を粗方片付け終わった直後。
 メギョ…、ボギョ…。金属と有機物が混ざり合わさった様な音と共に、進路状の壁面――
その側面が爆ぜた。
 その破砕面から飛び出してきたのは、黒い肉塊。後ろから迫るそれと同一の”モノ”。
 肉塊は、対面の壁にへばり付き棒状のアーチとなって、一同の進路を阻む障害と化した。
 ミミリはアーチを避けようとして、デバイスの推力を弱めたが、思わずつんのめってしまい、床に落ち掛ける。
「ミミリ!危ない」
 そう叫んだツツジがとっさに手を伸ばしてミミリを拾い上げた。
「ありがとう、ツツジ!」
「お安いご用よ!マルチカノン起動!そして機動ッ!薙げぇ――!!」
 ツツジの横合いから現出した三機のマルチカノンが機動を繰り返し、鋭いビームを放ち――進路状のアーチを溶断。破壊していく。
 今度は床から。黒い掌――触手が伸びて来た。
「ッ!…えっ!?」
 その異変を真っ先に感じ取れる筈の能力=鋭い感覚を持つエリカが、その時だけは反応出来なかった。
 ――いや、正しくは反応が遅れた。
 マジェスターとは言え、エリカ・シュンシエンも人間。試行回数百回の内、一回は失敗を喫する事はある。そう言うミスを、寄りにもよって、今この時弄してしまったのだ。
 触手に足首を掴まれ、エリカは失墜。床に叩きつけられた。その拍子に、抱き抱えていた女性士官を手放してしまう。
 床に放り出され、共に地べたを転がる二人。そこを狙って、床から這い出てきた触手が彼女達を襲う。
「エリカ!」