小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

INDEX|74ページ/80ページ|

次のページ前のページ
 

9.



 <ラース・カーフ>の脇を抜けて散発的に襲いかかってくる変異体をレイピアで斬り捨てながらミミリは走る。
「ヒューケインさん!」
「あいよ!」
 呼びかけに応じて裁断剣を両手に構えるヒューケイン。
 一本で<ラース・カーフ>の胸部を斬りつけスリットを作り、残った一本をスリットの内部に深々と突き刺す。理論防壁で護られていようが関係ない。<アクエリアス>もまた、理論防壁を中和し突破する機能が備わっているからだ。その効果を武器に付与する事も出来る。
 ヒューケインは後ろへと飛び退き。
「”自壊プログラム起動”。爆砕!」
 ヒューケインの一声と共に、突き刺さった裁断剣が爆炎を伴い爆ぜ散った。
 万が一、EVB兵器がアクトゥスゥ素子に汚染されたりした場合、自動的またはユーザーの任意のタイミングで自爆させる事が出来る。その機能を利用して裁断剣を自爆させたのである。
 爆風と共に、カンカン、コンコン、パラパラと飛び散る装甲の欠片。
 爆発により、<ラース・カーフ>の装甲に穴が開いた。
 ミミリの予見通り、その傷口が再生する様子は見られない。
 飛び散った欠片が、本来の場所へ戻ろうとカタカタと小刻みに震えだした。
 そこでミミリの出番となる。
 ミミリの目に淡い光が灯った。
「吹きとべぇ―――ッ!!」
 どこからともなく突風が吹きすさび、飛び散らかった欠片を通用路の奥へ奥へと追いやった。
 ミミリは大気を操るフリージア属。能力を行使し、艦内の大気圧を変えて突風を巻き起こしたのだ。
 ミミリが引き起こした突風により、小柄な変異体達も欠片と一緒に吹き飛ばされていく。十字路の回廊の奥へ横へ、四方八方へと。

 通信端末から聞こえてくるのは栞の声。彼女の近くにはエリカもいた。
『<弾頭>は撃滅効果を付与せず<破砕>にまで効果を限定。スキャンコンプリートまで、あと6.56秒…。5.00秒…』
 通常<弾頭>は、物質を原子から分子レベルにまで物理的に『破砕』した上で素粒子還元し対象を消滅させるよう<精錬>されるが、調整次第では効果を『破砕』までに押さえ込める。特異体の性質とミミリの作戦に合わせた調整だった。
『静まっていた変異体達が動き始めましたわ!』
 エリカの言うとおり、今まで動きを止めていた変異体達が一斉に襲いかかってきた。
『だめね…!<ソード>の操作にまでメモリを割いていては間に合わない…。スキャンに集中します!すいませんが、暫くの間護衛をお願いしますエリカさん!』
 そう言う栞の声は鋭く、普段の穏やかさが消えていた。
『分かりましたわ。なるべく早めにお願いしますわね!!』

 装甲の欠片が、ある程度の飛距離を飛んだのを確認してから、ミミリが次の一手を発した。
「深冬さん、今です!」
「了解(アイコピー)!凍れ!」
 深冬の目が光るのと同時に、突風の波に乗ったまま凍り付いていく無数の欠片と変異体。同じくその軌道上にあった通用路もパキパキと凍り付いて行く。
 飛ばされた有象無象は氷漬けのまま床に叩きつけられ、滑り。凍った通用路の壁面と床に縫いつけられた。
 が、装甲の欠片達は凍り付いてもなお、本体へ回帰するのを諦めない。氷の幕を破ろうと蠢いている。まるで各々が、独立した自我を持つ生物であるかのように。
 破片の身悶えに、バキバキと軋む音を上げる氷の膜。
「あんな状態になっても本体へ戻ろうとしている!?深冬さん!状態をそのまま維持して、液体窒素を作り続けて下さい!二重三重に氷の膜を張って動きを止めるんです。変異体達も丸ごと!」
「安心なさい、もうやっているわ!」
 ヒューケインが叫ぶ。
「栞!」
『コンプタイム4.75秒。一層目、スキャンコンプリート。<弾頭>送信!』
「あいよ――!装填、イグニッション!一層目突破!ま(`)だ(`)いくぞ!」
 <ラース・カーフ>のコアへと至る”一層目”の装甲を裁断剣で破壊。
「二層目の装甲をを同じ要領で吹き飛ばす!頼むぜ皆さん方!」
 そう言ってヒューケインは裁断剣を<ラース・カーフ>の傷穴に突き立て、再び同じ手順で”二層目”の装甲表面を吹き飛ばした。
 カンカン、コンコン、パラパラと、新たに吹き飛んで来る装甲の欠片達。
 ミミリも同じ手順で装甲の欠片を、襲い来る変異体達ごと纏めて突風で吹き飛ばす。
 同様に、深冬も同じ手順でそれらを液体窒素で氷漬けにする。
「続いて<ラース・カーフ>の傷口を凍らせて下さい。それで装甲の再生を阻害出来る筈です」
「わかったわ!」
 通用するかどうかは試さなければ分からないが、傷口を凍結させておけば再生を阻めるのではないかと(または再生を遅延出来るのではと)ミミリは予測を立てていた。
 実際、その目論見は当たっていたようで再生の兆候は今のところ見受けられない。
「よし、読み通りです。この調子でいきましょう」
 能力を行使する傍ら、深冬はミミリに尋ねた。
「それはいいけど、まだまだ増えていくであろう大量の欠片を縫いつけておくのに、こうも液体窒素を生成し続けていては、この艦内にある窒素の量ではとても足りないわ。何(いず)れ尽きてしまうわよ!それに大気成分量の比率が偏ればこの区画は愚か、船自体が気圧差で瓦解してしまう危険性も出てくる。それは大丈夫なの!?」
 そう言われてミミリは艦内の環境状態(ステータス)を診た。
 深冬は<アクエリアス>を使って試算したのだろう。彼女の言う通り、艦内全域の大気を構成する窒素の量が著しく減衰していっている。このまま行けば間違いなく、空気中の窒素は枯渇してしまう。そうなれば、この艦自体が”保たない”のは明白であった。
 それでも、ミミリは毅然とこう言い放つ。
「問題ありません!私は大気を操る事に特化したフリージア属です。大気成分を作り出すのも能力の範疇の内。窒素を作り出す事だって出来ます」
 ミミリの目が光った。
「アイテール素子から素粒子を生成。事象定義、原子形成・分子結合。窒素形成…」
 過去、粒子でも無く波形でも無く、謎の物質と言われて来たダークマターだったが、今の時代ではその正体は明らかになっていた。近年の実験結果による定説では、ダークマターは宇宙の中心部――重力が集中する”場”から滲み出て来る高次元からの物質であると定義されている。驚くべき事にダークマターは、あらゆる物質・現象の記憶(設計図)を内に含む”モノ”であった。数学演算処理により物質と事象ごとに定められた方程式解を求める事で、ダークマターはこの世の様々な”モノ”に姿を変える事も判明している。
 つまりダークマターこそが、全ての物質と事象を形作る大素(コア)であったのだ。今現在、ダークマターは名を変え、こう呼ばれている。古代ギリシャで『根源』を意味する言葉にちなみ――『アイテール』と。
 マジェスターの『能力』は、アイテール素子を操る事で発現させているとも言える。
 キラキラと光の粒子がミミリの体から立ち昇っていく。数学演算処理により、アイテール素子から物質を生成する時に観測される発光現象だった。
 それと同時に、装甲の欠片と変異体達を覆っている氷の膜が、より一層強固に凍り付き始めめた。窒素が供給されているのだ。