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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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8.



 左右の壁と隔壁に穴が空き、十字路になったスイレーンの通用路では、大激闘の大乱戦が繰り広げられていた。
 十字の戦場の北側では、ヒューケインが<ラース・カーフ>を相手にしながら散発的に襲いかかってくる変異体の処理をしている。
 時折、彼の脇をすり抜けてくる変異体をねずみ取りのように刈り取るのはミミリの仕事だ。そのずっと後ろには、ぐったりと床に寝そべる女性士官の姿がある。
 エリカは、<H―EX>によってぶち抜かれて出来た十字路の西側で、たった一人で変異体の相手をしている。彼女の『能力』であれば、多対一の状況でも問題は無いだろう。
 十字路の中心では、栞と深冬が<ソード>と<H―EX>を遠隔操作し、四方八方から押し寄せて来る変異体の群れを、ビームと高周波刃で切り裂いて蹴散らして行く。二人が担当する、十字路の南と東側は比較的攻勢が穏やかであった。時に、他のメンバー達をフォローする余裕も垣間見える。
 攻撃頻度の比重で言えば深冬の方が高い。<ソード>の操作と並行して、変異体のスキャンにも(デバイスの補助演算機能も総動員して)インプラントされた電脳素子のメモリを割き、並列演算処理を行っている栞をカバーしている形だ。
 攻撃に、スキャン。精錬した<弾頭>の配布。三つの仕事を受け持っている栞の負担は相当だろう。肉体的損傷はないにも関わらず、彼女の顔からは苦悶と疲労がうかがえる。
「大丈夫ですか?栞さん」
 相も変わらず氷の声の深冬だが、一つ年上である上級生の栞を気遣う優しさがあった。
「ご心配には及びませんよ、深冬さん…!<ソード>、撃ち貫いて戻りなさい!!」
 遠くで<ソード>が荷電粒子を放ち、変異体を次々に無力化。その隙を狙い、別の複数本が光波を放ち動けなくなった変異体をまとめて薙ぎ払い撃滅する。
 <ソード>の激しい機動は、栞の健在ぶりを証明するかの如く機敏だった。
「”剛毅木訥”ですね。私もそうでありたいものです。…はぁッ!」
 気合いの一斉とともに深冬の目が淡い水色の光を発する。『能力』の発動だ。
 途端に、深冬の前に見える、一直線に伸びた長い通用路の壁面がバキバキと凍り付いていく。その通用路を走っていた、変異体達をも巻き込んで。
 液体を組成・分解し、操作する深冬の『能力』は、大気中を漂う水分の温度や状態変化までをも可能としていた。
 <ソード>と<H―EX>が、凍り付き無防備になった変異体達を切り刻み、光波を放つ。
 光を浴びた変異体達が、次々に氷漬けのまま砕け散って行く。バラバラ、パラパラと。
 敵の消滅を確認した深冬が言う。
「前方に敵なし。オールクリア」
 南側は一旦制圧。これでようやく、二十体ほどは処理出来た筈だ。
 カンカンカン!
 ――光が舞う中、床を蹴るブーツの音が響いてきて、
「広域殲滅タイプが、一つ所に固まって。非効率的だと思いませんの!?」
 棘のある口調で言うのはエリカであった。
 通用路の奥からやってきた彼女は後ろを見やりつつ、軽やかな足取りで二人に走り寄ってくる。
 深冬は、エリカの棘のある物言いにむっとしたのか、珍しく眉間に皺を寄せて言った。
「状況の流れというのがあります。そちらはどうなの、エリカ」
「十六体ほど始末しましたわ。で、敵の攻勢が一旦収まったのを確認してから来たんですのよ。文句はないでしょう?」
 エリカの言うとおり、先程まで激しかった変異体達の動きは、丸きり鳴りを潜めていた。
 レーダーにはまだ、大量の敵影が映っている。十字路の曲がり角の向こうで、こちらの様子を覗い、息を潜めているのだろうか。
 エリカは、更に何かを”感じた”様だ。それは予感にも近い。
「敵が、こちらの戦術パターンを解析して、対策を打ち始めている…?深冬さん。私が栞さんをカバーしますわ。貴方は”あの子”を」
 エリカが言う”あの子”とは、ミミリのことである。
 「了解(コピー)。”唯々諾々”と承ったわ」
 深冬は、静かに言って頷いた。闇夜に舞い落ちる雪のように、しんしんと。



「かぁっ!!」
 可憐でキャッチーな容姿に似合わず、その口から怒声のような気合いを発して、ミミリはレイピアで猿に似た変異体を真っ二つに切り裂いた。
 場にも慣れてきたのだろうか、それとも多少はマジェスターとしての自分に自信を持てるようになったのか。ミミリの立ち振る舞いには、威風堂々とした物が感じられる。
(――体が、軽い…!)
 もしかしたら、冶月フィラが現場に行って来いと言ったのは、自身が抱えるトラウマを振り払わせる為であったのかもしれない。
 周囲に不運と不幸をもたらす事に負い目を感じている自分に、マジェスターとしての使命を果たすことを実感してもらう事で自信を持って欲しいと。(勘ぐりすぎかもしれないが、怪人物であるフィラならば、自分の事情と心情を知っていて、そうした計算をしているに違いない)
 高揚する気分の中、ミミリは『空気の偏り』を感じた。
 変異体達の攻勢が、ぱたりと止んだからだ。当初と比べてその数は大分減ったと思うが、レーダーにはまだまだ大量の敵影が映り込んでいる。
 ―――これは一体…?
(敵はまだ余力を残しているはずなのに…。なんだろう?妙な『空気』を感じる)
 ミミリの目の前。そこでは、ヒューケインが<ラース・カーフ>と相対している。形勢では、『欺瞞の力』を備える彼が優位を誇っているが、立ち塞がる真珠色の雄牛はいくら攻撃を加えても甦ってくる。
 このままではじり貧だ。――彼も皆も体力が保たない…――。その結果は…。
(…『全滅』。…どうしよう?何か、何か手は…。状況を打開する手は…)
 ――辺りを見渡せ。観察しろ。分析しろ。なにかヒントになるもの。天から垂れ下がる一本の蜘蛛の糸を探すのだ…。あの特異体を倒す、逆転の一手に繋がるヒントを!
 十字路の南側。氷でバキバキに凍った回廊が、ミミリの目に映った。
 …――あった。逆転を喚起出来るファクターが。そのファクターを持つ人物が。
 ミミリの目が捉えていたのは――。
「ミミリ!」
「深冬さん!」
 通用路を駆けてきた深冬が、ミミリの側に立って言った。
「私が、ヒューケインをカバーします。あなたは後ろに下がって士官の方を…」
「深冬さんの『能力』って液体の操作と組成ですよね!液体窒素って作れますか!?」
「…えっ?…ええ、まぁ」
 意表を突かれた突然の質問に、きょとんとする深冬。
「お願いしたい事があります。<ラース・カーフ>の装甲を剥がした後、剥がれ落ちた装甲を凍らせて欲しいんです!しかも一斉に」
「それはいいけど。剥がしたとしても、再生するのではないの?」
「いいえ。EVB兵器や理論障壁などで消失・解体されて欠損・消失した場合、変異体は質量保存の法則を無視して、無から物質を生成してそ(`)の(`)場(`)で(`)再生を行う様ですけど、欠損した部位が残っていた場合は違うんです。残った部位を寄(`)せ(`)集(`)め(`)て(`)再結合して再生を図ろうとするんですよ」
 ミミリは戦いの一部始終をしっかりと観察していた。そうして<特異体>の性質を独自に分析していたのだ。