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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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7.



 狭い艦の通用路には、瓦礫などであつらえた急造のバリケ―ドがそこかしこに設置されていた。 そのバリケードの影から身を乗り出し、向こうから迫り来る変異体に向かって兵士達がアサルトライフルを撃ち散らす。
 銃撃が奏でる激音の中、その上級士官は大声を張り上げた。
「クル―の八割は船外に脱出できたようじゃぁ!協力感謝するぞ。<リミテッドテン>ヒューケイン・D・プラタナス殿」
 そう言う上級士官は、豪快な喋り口調の偉丈夫であった。
 AQUA―S(アクアス)の上にコンバットベストを羽織っているこの上級士官は、連邦政府直属の特務部隊<GASS>の隊長だったが、ヒューケインはそのことを知らなかった。
 <スイレ―ン>の艦長をはじめとする将校や上級士官は、無残にも”染死”してしまったので、現状、彼がこの艦と現場を取り仕切る最高責任者ということになる。
「ま(`)だ(`)八割だ。終わったわけじゃ無いでしょう?ところで救艇ランチは大丈夫なのかい、シナノ一佐」
「詮無いことよ。対A処理は施してある。問題ありゃせん!」
 空になったライフルの弾倉を交換しながら言う、シナノ一佐。再び、銃撃を開始する。
「オーケー。一佐も、ほどほどにして引き上げて下さいよ!」
「しからば。よし…皆引き上げじゃぁ!我々も船外へ脱出するぞ」
 シナノ一佐の命令に「了解(コピー)」と復唱し、<GASS>と艦所属のアサルトチ―ムは銃撃の手を止め、この場から離脱していった。
 彼らが向こうの区画に消え去るのを確認してから、ヒューケインは一人ごちた。
「ま、退避してくれた方が、こちらとしてはやりやすくなるんだけどね」
「そうですね。守りながら戦うと言うのは…骨が折れますし!」
 それを聞いていた栞が語尾を荒げて、<ソ―ド>を放つ。
 飛来した四本の<ソード>が、バリケードの向こうにいるであろう、犬型の小型変異体達をビーム束で焼き払い、撃滅効果のある光波を放って舞い戻ってきた。
 バリケードの向こう側で、淡い光の粒子が立ち昇る中。
「ヘイヘイ。連中が、『足手まとい』って言ってるみたいに聞こえたぜ、栞。”潔癖症”がお前の基幹パーソナルだろ?そんな黒くていいのかよ、生徒会長」
「いいえ。わたくしの”潔癖症”は、『一貫性を貫き通す』事にこだわるという価値観に基づいたものです。クレバーな事柄を嫌うと言う意味ではありません。今、私たちが成すべき目的は”襲来した変異体を全て撃滅する”と言うことでしょう?もちろん、行きがかり上、皆さんも守ってみせますが」
 ニコリと言う栞だが、つまり救助は、付随的な『オマケ』であると言っているに等しい。
「ハ!ホント『クソ潔癖症』だな、アンタ。まぁ、間違っちゃいないがよ」
「あらあら、うふふ。お褒めにあずかり光栄です」
 そうにこやかに言う栞を見て、ヒューケインは肩をすくめて見せた
 ヒューケインは思う。
 ――冷酷な論理だが、理想論的な偽善を掲げるよりはずっと良い。
 時に、そうした理想を語る”熱さ”も、リーダーである自分には必要なのだが…――
「ん…?あ…!」
 ヒューケインは後ろを振り返り、気がついて目を疑った。
「おい、ミミリ!そのお姉さん、一佐達と一緒に逃げてなかったのかよ!?」
 そう言われてミミリはおずおずと口を開き。
「…あっ!すいません…。一人で歩くこともできないほど、その…参っているみたいで」
 慌てて言うミミリの肩に支えられて、女性士官は床にへたり込んでいる。
「PTSDですね…。精神的なショックとストレス障害で自律神経をやられてしまったのでしょう。無理もありません。酷い出来事でしたもの。まぁ、一時的なものだとは思いますが…」
 栞が言うPTSDとは、正式名を『心的外傷後ストレス障害』と言い、死に直面する程の体験をした人間が患う、精神疾患――俗に言う、”トラウマ”であった。
「仕方ねぇ。俺達も、一先ず脱出しよう。あのお姉さんを船外に逃がすのが最優先だ。ミミリ、たのん…――」
 ヒューケインは思わず言葉を失い絶句した。バリケ―ドの向こうから更に、大量の犬型変異体の群れが押し寄せて来たからだ。
「キキャ、キャキャァァァ―――――ッ!!」 
 犬の形をしているが、変異体が発するその泣き声はサルのいななきに似ていた。
 とっさに対処したのは栞だった。
 スカートから、八本の<ソード>を展開させる。
 <ソ―ド>が宙を舞い飛ぶのを見て、、ヒューケインがその後を追って床を蹴る。
 続いて栞も。

 あっという間に二人は、バリケードの向こう側へと行ってしまった。
 ――二人は、一瞬の間だけ失念していた。背後にいたミミリ達のことを。
 二人が、レーダーとセンサーで『そのこと』に気がついたときにはもう遅く――大勢の犬型が一斉に飛び掛り、目の前を覆い尽くしていた。



 ボバァァン!
 ミミリと女性仕官が座りこんでいるその後ろから、耳をつんざくような破砕音が巻き起こった。
 金属で形成された艦の隔壁を突き破り”それ”は現れた。
「え?」
 突然の出来事に、自失呆然とするミミリ。
 砕け散った隔壁のホコリと瓦礫が舞う中で、三メ―トルほどの全長を誇る”それ”は、人一人分の長さはあるであろう腕を振り上げるモ―ションを取り、
「きゃあぁぁぁっ!」
 悲鳴をあげたミミリと女性士官に向かって、巨大な拳を振り下ろしてきた。
 とっさに女性士官を抱きかかえ、ミミリは跳躍、回避する。
 先程までいた場所に”それ”の拳が叩きつけられる。その跡には、大きなたわんだ窪みが硬質合金製の床に穿たれていた。
「ひぇぇぇ――…」
 あんなモノの直撃を食らえば、<アクエリアス>を装備したマジェスターと言えども只では済まないだろう。戦闘に支障を来すほどの大ダメ―ジを負うのは明白だ。
 ゆらりと、煙埃の中で”それ”が動いた。コンパクトかつ俊敏な動作で。
 ――二撃目!拳が再び打ち出される。巨体に似合わず、凄まじい速さだ。
 ミミリは、腰部装甲を正面に展開し、防御の構えを取る。
 着撃!
 とっさに反応したものの、受けの体勢が不自然だったせいか、完全に受け流すには至らない。
 拳撃で生じた慣性の衝撃波が、ミミリと女性士官を襲う。
 体が浮き、二人は二十メートルほど宙を舞った。
 吹き飛ぶ中、ミミリは女性士官を抱きかかえて庇う。そして、衝撃!
 床に叩きつけられ、ミミリは体をしたたかに打ち、転がり滑る。
 その拍子に女性士官を手放してしまい、彼女もミミリと同様に床を滑って転がった。
「あ…がっ…!」
 衝撃を浴びて、あまりの重さに呻き声をあげるミミリ。重い痛みに一瞬、気を失いかけそうになる。
 痛みに細める目の向こうで、女性士官がぐったりと床に倒れ伏していた。
 体を這わせるミミリ。彼女の傍へ行かなければと必死に床を這い進む。。
(助け…なきゃ。私が…守らなきゃ)
 足を踏みならして迫りくる異形の巨体。
 ミミリの眼前へとやってきた”それ”は、彼女を無視して素通りし、女性士官へと手を伸ばす。
「…やめ…て。逃げ…て!」
 呼びかけるも、気絶しているのか女性士官はピクリとも反応しない。
 ”それ”は女性士官をその巨大な掌に掴み、ギリギリと…。