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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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3.



 軍港のカタパルトから射出され、高速艇はプランタリアを出立。三分ほど、エイス・イ
ルシャロ―ムの衛星軌道上を巡航した後、巨大な長方形型の構造体が現れた。
 ――全長、三十Km。幅、五00mからなる長大な加速装置。
 <銀河星間往還螺旋重力子レ―ルカタパルト>。通称<OGRc>とは――重力子加速装置
を内蔵したレ―ルカタパルトにより、その架線上を走る船舶の速度を乗算的に加速させる
交通インフラシステムの事を指す。
 架線上を走る船舶・物体は理論推進効果を付与され、周囲の空間位相と物理関数を変位
させながら前進する。加えて、ヒグス粒子によって定義されている被加速物の質量係数が
書き換えられ、理論上の最高速度は準宇宙膨張等速度にまで到達可能と言われている。
 レ―ルはとびとびに数十キロ感覚で宇宙空間に配置されている。特定の宙域にだけ設置
されている訳ではなく、そのレ―ル網は宇宙各所にある星系間を繋ぐ”MSSM(多重並
行空間跳躍移動)ワ―プタ―ミナルゲ―トウェイ”を経由して、他星系から別銀河の星系惑
星間を越え、果ては銀河団規模の隅々にまで張り巡らされている。
 そのレ―ル網を銀河団の真上から俯瞰した場合、ネオンで照らされた夜の大都会を、上
空から見下ろしたような情景として覗うことが出来るだろう。
 OGRcの架線上を、光速度の1.75乗(〜現在も加速中)の速度で航行していると言うの
に高速艇の機内は揺れ一つなく静かなものだった。
被加速物に係る、物理変化の定義関数値さえも書き換えながら前進する理論推進効果の
副産物――事象変化を防ぐ理論防壁が高速艇の船体を覆い、保護してくれているお陰である。
 一同は、取り留めない雑談や、作戦に関する事を話しながらフライトの余暇を潰していた。
 その最中、栞がこんなことを申し出た。
「ヒューケイン、提案なのですが。私がミミリさんの側についても宜しいでしょうか?」
「ああ、別に構わないぜ。俺も目を光らせるからさ」
「ありがとうございます。ミミリさん、これを」
栞がAQUA―Sのツ―ルポシェットから指輪を取り出し、ミミリに手渡した。
「T―アクエリアスです。教練用のダウングレ―ドモデルですが、身を守るには申し分ないはずです」
 <アクエリアス>は通常時、アクセサリ―型の収納コンテナに量子情報として格納されいる。栞が渡したのは、そうした代物だった。
「あ、はい。ありがとうございます、金雀枝さん」
 ミミリは、受け取った指輪を左手の人差し指に嵌めた。その指に嵌めたのは、精神的にポジティブであれという意味がある。
 ミミリは、対面の席に座る凛を見て気がついた。彼女も、指輪型のアクエリアスコンテナを身につけていたのだ。よく見ると彼女は、左手の薬指に指輪を嵌めている。
 中指に指輪をするのは、婚約や愛の進展などにまつわる意味があるというが…。
(…婚約者がいるのかな?それとも――)
 双子の弟であるヒューケインにそういう感情を抱いているのだろうか。
 いや、仮にも二人は遺伝子上の”姉弟”だ。本人達もその気はないと否定しているし、その線は薄いだろう。――ではなんなのか?
 …答えが出そうにないので、ミミリは考えるのをやめた。
 ミミリの耳に、ふらっと席を離れたヒューケインと、サブシ―トに座るリ―ンの会話が聞こえてきた。盗み聞きする気はなかったが、思わず聞き入ってしまったのは、その内容が彼女の興味を引く物であったからだ。
「しかし、政府の対応。やけに早いですよねぇ。やっぱり、規模が規模だけに?」
「こんな大規模の変異体郡襲来は五年ぶりだものね。あの時は、なんとか変異体のエイス・イルシャロ―ム侵入は防げたけど。本星に打撃を被ってしまった」
「苦いことですよねぇ」
「全くね。現場としては前回の失敗を教訓にして、今回は早々に手を打つ決断をした政府の対応は評価するわ。振るうべき時に鞘から抜けない剣に価値はないもの」
 二人の話は、五年前バ―ベナの街を襲ったメテオインパクトに関係していることだった。
当時、政府の対応が遅れたばかりに本星に変異体進入一歩手前という未曾有の事態になった。結果、バ―ベナは戦禍に巻き込まれ、ミミリの両親は帰らぬ人となった。
「でも、不自然なのよね。特に落ち度も無く、無難に運営を行ってきた当時の政権が、何故かあの時だけは対応が後手に回っていた。不思議だと思わない?」
「変異体襲来の一次情報が知れ渡った後。誰かがバイパスの箇所で、わざと情報を差し止めていたと?何のためにです」
「そうね。国民の不信を煽り、政権与党の支持率を下げるため。もしくは、軍や政府内重役の更迭を狙った、抵抗勢力の謀略とか。自分たちを、その後釜に据えるためにね。思い当たる節は色々あるわ」
「しかし、憶測に過ぎず。当時の担当者達は左遷され、方方に散り散り。中には死亡した者。事件の恨みを買って殺された者もいる。生存している人間に聞いても、知らぬ存ぜぬの一点張り」
「きな臭いわよねぇ。ジャ―ナリストにも未だ事件の裏を追っている人間がいるって聞くけど。世間はもう昔のことだと割り切り、忘却し、日常に追われ、こだわる人は既に皆無だわ」
「人の世の常。諸行無常…ですねぇ」
 二人のやりとりを耳に挟んでいたミミリの顔には、若干の剣呑さがにじみ出ていた。
(そうだとしたら…。そんなの…冗談じゃないよ…)
 もしも、利己的な野心の為に、そんなことをした連中がいたとしたら、自分は彼らを許
すことなど出来はしないだろう。

 ――数十分後。
「見えてきたわね」
 リ―ンが、CGで補正された船外映像を見て言う。
 高速艇の数キロ先に、ミストルティン所属の艦隊が見えた。
 対A仕様の攻撃型巡洋母艦三隻。護衛艦二十七隻。駆逐艦三十五隻。遊撃戦力である遠隔操作型無人<UG―MAS>が百五十機。加えて、<アクエリアス>を装備したマジェスター、総勢六百人。この時代では、約一個旅団に相当する戦力だ。
 これと同規模の部隊が、変異体群を包囲する形であと四つ。数千キロ彼方の宙域にも展開されている。総数合わされば、一個師団の大規模な部隊だ。
 『汚染災害処理』とはこんなにも大規模な戦力を投入して行うものなのである。なんとしてでも、変異体の進行は、阻止されなければいけない物なのだ。
 それが出来なければ、<エイス・イルシャローム>も、消えていった星々と同様の末路を辿る。<星喰い>にあい、そして――――。
「総員、傾注」
 リ―ンの命令に一同は座したまま、彼女の方に目線を向けた。
「方々に展開している分隊のマジェスターにも招集をかけたわ。213分隊に派遣中のリミテッドテン<No.5>と<No.7>も合流する予定だが、あくまでも『予定』だ。ここにいるメンバ―で状況に対処してもらう。そのつもりで」
 一同は不動のまま、司令官であるリ―ンの言葉を待った。
「<アクエリアス>のロックを解除。装着を許可します。総員、戦闘準備」
 リミテッドテンメンバ―達の手元に『Resrict un hold.safety released』と表記されたCGコメントボックスが現出した。