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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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4.



「まぁ、真面目に言うとだな。AQUA―Sがアクトゥスゥ素子に汚染されていないかスキャンしてたんだよ」
 ヒューケインは、凛が先ほど使っていたペンライトを取り出して見せた。聞くに、アクトゥスゥ素子を検出するスキャンツ―ルだという。
「ス―ツが破損してて抗アクトゥスゥ因子含有液も漏れ出していたし、念のために、な。天下のプランタリアに、アクトゥスゥ変異体が現れたとあっては一大事なんでね。ここの防疫管理体制を世間に疑われかねないし、色んな人の首も飛ぶ。なにより、俺が『サンフラワ―』に怒られる。あのババァ、怖ええんだよ。気だるい低いテンションで、グサグサと心に突き刺さること言うし」
「ともかく、そういう事だ。悪いが君が寝ている間に、身体検査と洗浄のため、着衣を変えさせてもらった。事後承諾で申し訳ない」
「所で皆さんも私も、なんで水着のままなのでしょうか?」
ミミリにとって、それは第二の疑問だった。
「ああ。これは学園長の趣味だ。前々から『いつか邸宅のプ―ルサイドに沢山の水着美女を招きたい』と仰っていたことがあってな。その願望を叶える為に秘書官の私まで水着を着る羽目になった。完全なパワハラを兼ねたセクハラだな。一回死ねばいいと思うぞ、あの変態紳士。あ、君の叔父上だったな、すまない」
「あ、いえ…。そ…そうですか」
 厳粛な叔父にそんな願望があったとは意外だった。
「それと、ヒューケイン。管理事務次官の悪口をさりげなく言うな。上司に対して不敬だぞ。今度私の前で言ったら、コロニ―の太陽光パネルに括りつけて、燻製にするからな」
「ヒィイィッ!?」 
 情けない声を上げるヒューケインだったが、すぐに平然を装い、キザッぽく口元に人差し指を立てて。
「…おっと。オフレコにしといてくれよ?」と、ニヒルな調子で気取ってみせた。
「貸一つだな」
 それに対し、凛はヒューケインの顔を建てる気もないようで、情け容赦なく、冷淡に言い放った。
「マジかよ…ッ!今度は何奢らせる気だよ。三点堂の三百グラムLサイズデミグラオムライスとジャンボチョコシュ―サンデ―とか言うんじゃねぇだろうな。それとも、バン〇イの100/1HGデンドROビウムや、エバンゲリヲン初号機とかか…?いっとくけど、もう今月金ねぇからな」
「うむ、プラモデルは好きだがな。パ―ツがガッチリと組み合わさるデジタルなところがいい。でも、何かを買ってくれとは一言も言ってないぞ。まぁ、思いついたら言うさ。ふふっ、せいぜい楽しみにしておいてくれ」
「あ―…へいへい。了解だぜ、お姉様」
『抗弁の余地なし』と、観念した様子でうな垂れる、ヒューケイン。
 ミミリは、この二人のやりとりを見て、互いに気の通じ合った良いコンビなのだなと思った。二人も、自分とツツジのような関係なのかも知れない。
 そういう間柄にある気安さや、相手に向ける信頼を、言葉と態度から感じたのだ。
「ふふふ。仲がよろしいんですね、おふたりとも」
 ミミリとしては、感じたままのことを言ったつもりだった。
「ははは。そう見えるんだったらきっと見間違いだぜ。いつか、◯◯◯して×××してヒ
ィヒィ言わしてやるぜ、こんな憎らしいワカメ頭。頭固くて、融通利かないし。人を痛め
つけて喜ぶドSだし。成績学園二位の俺を、やれバカだ、やれヤンキ―呼ばわりするしよ。
ほんと、ミミリちゃんはバカだなぁ。このクソ天然お花畑め(ニコ☆キラ)」
 白い歯を見せてニッコリと満面のスマイルを浮かべるヒューケイン。正直ヒドイ言い草だ。
「あぅあっ、身内を罵倒するついでに、さりげなく罵倒されました!すごいドSっぷりです。やっぱり許してないですよね、さっきのこと。本当に、スイマセンでした。いやぁ、学園二位とは恐れ入りますぅ、えへへ―。実は優秀な方だったんですね、ヒューケインさん。尊敬しちゃいますぅー」
 目を輝かせ、手のひら返したように褒めちぎるミミリ。
「まぁ、なぁに。大したことじゃねぇよ」と返す金髪ヤンキ―。
 凛は顔をしかめて憮然と答えた。
「ああ、奴の言う通りだ。それは見間違いだミミリ君。誰があんなヤツ。公然と上司の悪
口言うし、無礼で無作法で、いい加減で適当だし。キザでニヒルきどって、自分がカッコ
いいと勘違いしてるナルシ―だし。シスコンでキモイし。それなのに何故か人望があるし、
女子にモテるし。全くもって理解に苦しむ。どこがいいんだ、こんな『゛』野郎。
いちいち鼻につくヤンキ―だよ全く。おまけに、頭いいくせに下品で、私を性的な目で見
てるし。ホント死ねばいいと思うぞこの『゛』」
(あ…。『゛』って二回いった)
「それに学園二位とは言っても、一位の私とは天と地の差があるんだぞ。出来の悪い弟で本当にこまる」
 凛のほうが罵倒の文句が多いのは気のせいだろうか。こちらも非道い言いようだ。
「てめぇ、凛。言ってくれるじゃねぇかよ、俺の人気に嫉妬してるのか?その前『プランタリアを守る学生マジェスター特集』で二人でテレビに出た時、俺ばっかりインタビュ―されてたのがそんなに気に入らないのかな?」
 やれやれと肩をすくめて言うヒューケイン。
「ははは、馬鹿を言うな。私が嫉妬だと?面白い冗談だ。私はそんなモノに全く興味がない。俗物のお前と違ってな」
「へっ、よく言うぜ。その番組レコーダーに録画してたくせに」
「んなっ…!?き…貴様ぁ――。なぜソレを知っている…」
「ヘイヘイ、お姉さま。俺の人徳と情報網を甘く見てもらっちゃあ困るなぁ。堅物で人付き合いが苦手なお前とは違うんだよ俺は。柔和で社交的だからな」
「ぐぐぐ…。ふん!いちいちムカつく奴だ。やはり貴様とは気が合わん」
「そりゃぁ残念だな。俺もだぜ」
(あるぇ〜?) 
 なんでまたここまで罵り合うんだろう、この二人は。仲がいいと感じたのは自分の思い違いだったのだろうか。
「ま…またまた。喧嘩するほど仲が良いって言うじゃありませんか」
 ミミリはこめかみに汗をかいて言った。
 凛は『はんっ』と捨て吐き、
「本当にそう言ってるなら、節穴すぎるぞミミリ君。ホント、見る目がない上に愚かすぎ
るほど鈍感だ。深海魚とナマケモノのほうがよっぽど目も気も利くぞ。しょうがないか、
私が熟女に見えるくらい眼が悪いようだし。レ―シック手術を薦めるぞ、このクソ失敬な
鈍感ピンクめ。そうだ。いい眼科を知っているんだ、今度紹介しよう(キラ☆ニコ)」
「凛さんもヒドイですッ!あぐぅ、凛さん…さっきの根に持ってますよね絶対。本当にス
イマセンでした。今後あんな失礼は致しませんので、どうか許してください」
 誠申し訳なさそうに、深々と頭を垂れるミミリ。
「気にするな、謙虚で素直なことは美徳だ。私はそんな君が好きだぞ。あ、それとヒューケイン」
「あん?」
「あとでボクシングのトレ―ニングに付き合ってくれないか?」
「おいおい、ジムにあるサンドバッグはお前がその前ブッ壊したじゃねぇか」
 怪訝顔で言うヒューケイン。
「ハハハ、それなら問題ない。お前がサンドバッグになるんだからな。毛布でぐるぐる巻にして簀巻きにすれば、簡易サンドバッグの一丁上がりだ。いやぁ、人一人と毛布一枚でサンドバッグが作れるなんて、いい時代になったものだ」