題名、無題。4
つけっぱなしのテレビから最近よく聞こえてくる単語だ。
まだまだ現役の炬燵から抜け出し、彼は窓際に立った。
そこから見えるのは、茶色や灰色の建物、隣のお庭の植木の緑、そして空の青や白。
今や満開の桜並木のある学校や駅前と違い、ここから見える風景は一年通して大して変わらないのだ。
窓を開いて一歩ベランダに出れば、まだまだ薄着で外出するには堪えられるかわからない風が身を包む。
彼は、遠くの方に少し見えた桜の数を、一つ、二つと数え始めた。
一つ、二つ、三つに四つ。
そこまで数えたところで、一際強い風が吹く。
それに追い返されるように、彼は炬燵へと戻っていった。
寒がりな彼にとっての春は、まだまだ先になりそうだ。
そんな4月の、ある日の午後だった。