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迷宮神話

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空想遊泳



 くすくす、と少女の笑い声が響く。
 暗闇の中、一つの光がぽおっと灯った。少女の姿が、幻灯機に映し出されたように浮かび上がる。少女は髪の毛を二つ結びにし、男の子のような服装をしている。そして、大きな黒い瞳で全てを見回した。
 くすくす、と少女が笑った。幼い響きを持つ声が、果てない宇宙に吸い込まれる。
 少女を映し出した光は、気まぐれにその姿を変えた。時には小鳥のように少女の周りを飛び交い、時には猛獣のように少女を押し倒そうとした。少女はそのいずれにも嬉しそうな笑みを漏らすだけで、暗い空間を泳いでいく。
 少女を取り巻く空間には、巨大な亀が幾匹も生息していた。星星の陰から不意に姿を現すヤドカリもいる。少女は宇宙と同じ眼でそれらを見、包み込み、笑った。全ては彼女の想像の産物だった。だが、少女が自らを空想し始めた今となっては、想像と現実に境などなかった。全てが少女の手の中にあった。
 少女は歌った。聴く者の無い、純粋無比な歌を。
 少女はやがて、彼女の世界の中で唯一の光を手のひらに載せ、そのまま口元へ運んだ。光が彼女の小さな口の中に吸い込まれたとき、再び世界は暗闇で満たされた。
 何も見えない空間で、少女の笑い声だけが、絶えることなく響き続けた。
作品名:迷宮神話 作家名:tei