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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編4

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 「ゲームのほうは……内線二〇一ね……」
 まったくてらいもないままにな小娘は受話器を取った。
 「あのーすんません。丸山っていいます。市原さんをお願いします……はい。市原。丸山!」
 小娘は用件を言うと受話器を切り――そしてすぐに市原が出てくる。
 「いやー、どうも……」
 市原はそつがなく、腰は低いのだ。相手を侮ったり馬鹿にしたりするようなところはない。見てくれはピアスをつけるなど、普通ではないが物腰は柔らかなのだ。ただ、だからといって、一般社会で通用するかというとそういうことは多分ない。三井、三菱で勤めるサラリーマンに、市原のようなナンパな者はいないだろう。
 「暑いところ、どうも……こちらにどうぞ!」
 市原はそう言って姉妹を中に導きいれ、大井弘子は軽く頭を下げた。一方、丸山花世のほうは挨拶を姉に任せて社内の観察である。16CCの社内は左手に大きな液晶テレビが二台。液晶テレビの前にはソファがそれぞれ一台ずつ。あるいは、ソファは仮眠用のベッドになるのだろうか。ソファの前にはテーブルが一台ずつ。テーブルの上にはゲームの雑誌にゲーム機。
 ――雑然としたところだな。
 入居してすぐということだからか、社内にはプラスチックやビニールの匂いが漂う。
 右手には間仕切りがあって、その向こうにはデスクが並んでいる。数は三十……四十? つめている社員の間には会話はまったくない。ただ、エアコンのモーター音が響くばかり。
 「ふーん」
 丸山花世は足を止めて部屋の中を観察する。色を塗るもの、何か文字を打ち込んでいるもの、社内は……忙しいのだろうか?
 「こちらです」
 市原は遅れている丸山花世に向かって声をかける。一番奥の部屋。そこが16CCの会議室。
 「あ、うん」
 小娘は悪びれる様子もなく会議室に入った。
 「そちらにどうぞ」
 市原は大井弘子と丸山花世に席を勧めた。真新しいテーブルに……椅子は何故かパイプ椅子。
 「すみません、まだ、事務所、移ったばかりで……」
 白い壁がいやに目に痛い会議室。
 「それにしても、お二人とも綺麗で……本当に美人姉妹ですね」
 市原は女好きなのだろう。そのようなおべんちゃらを言った。大井弘子はただ営業スマイルを浮かべ、一方、丸山花世は聞いていない。