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リンドウの唄詠い

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“リンドウの唄詠い”


「唄詠いの……トウコウ…」
名を聞いた瞬間、ピクリとも動かなかった老婆の表情が変わる。
さっきまでとは打って違って明るい笑顔で鼕煌の目を真っ直ぐ見つめる。
「あんた、もしかして噂の“リンドウの唄詠い”なのかい!?」
刹那、辺りがドッと騒がしくなった。
そして同時に鼕煌の表情がやはりといった感じに歪む。
「“リンドウの唄詠い”…?」
「あの有名な…?」
「こんな優男が…」
「顔も良かったのか…」
人々は口々に好き勝手に喋りだす。
若干の皮肉を耳にしながらも、鼕煌は唱柧の頭を押え付けるようにして顔を近付けて小声で喋りだした。
「このおバカッ!ばれたら面倒臭いことになるっていつも言っているだろう!?」
「べ、別にいいじゃないか!それに兄様は悪名の意味で名高いんじゃないんだから、ばれたって大丈夫だろう!?
なにをそんなにこそこそするんだよ!天下の“リンドウの唄詠い”だよ!?」
「人にそれを強調して言われるのが嫌なんだよ!っもういい!宿で部屋が取れたら後でお仕置きだからね」
「うぇええええッ!!?」
本気で嫌そうな声をあげる唱柧に対し、鼕煌はぎこちない笑みを浮かべながら老婆の方へ向きなおした。
すると彼女は幾分か優しくなった声音で語りだす。
「“リンドウの唄詠い”といえば、その清らかな声は遥か遠くの王妃様のところまで届き、聞く者全てを魅了するほどといわれている唄詠いでも最高峰のお方じゃないか」
「はあ、まあ…そう言われることも…ありますね…」
「それに聞くところによるとその声を耳元で聞いた女子はみな失神してしまうとか!」
「………」
とんでもない、そんなことは偽りです。
…とでも言いたいのだが実際2,3回あったので嘘は言えない。
とにかく自分で言うのもなんだが結構自慢の声音なのだ。
そんなことさすがに起こるはずがないと思っていたのだが実際本当に倒れてしまった女はいる。
まるで走馬灯のようにその情景を苦笑いで思い出しながら、熱く語っている老婆にやんわりとストッパーをかけた。
「あの、ところで、この街の長様は…」
「おお、おお。そうじゃったな。自己紹介が遅れてしまった」
『え?』
鼕煌と唱柧の声が重なる。
老婆は少しだけ胸を張ると、威厳のある声で言った。
「わしがこの街の長、灯柚じゃ」
作品名:リンドウの唄詠い 作家名:karigyura