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灰かぶり王子~男女逆転シンデレラブストーリー~

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 計画が実行されたのは夜だった。
 その夜城では舞踏会が開かれていて、王家の人間や貴族たちが優雅に踊っていた。
 最初に異変に気が付いたのは、国境の小さな農村に住む農民だったはずだ。その農村を統治する男爵が、城に転がり込んできた。
『隣国の農民たちが、攻め込んで参りした!』
 血まみれの領主が這う這うの体で城に転がり込んできたときは、ドレスを着た貴婦人が一人悲鳴を上げた。
 その後は目が回るように城から皆が逃げ出した。こっそりホールに出てきていた当時13歳だったアールイは、タキシード姿の紳士に見つかって手を引かれ走り、そして。
 城は見る見るうちに炎上し、紳士はアールイを庇い倒れた。アールイは紳士の遺体を一度だけ振り向き、走って走って、命からがら逃げ出した。何とか逃げおおせていた両親に再会し、大好きな母に抱き着いた。
 そして、同盟国であったこのペテロアーヌ王国まで逃げてきたのだ。
 ミッディール王国は、隣国の農民たちに全てを盗まれ、全てが燃え尽き、生き物が死に絶えた。逃げ出した者を追いかけて来ることはなかったので、命からがら逃げ出した者も多数いた。しかし少数の人間は、あの紳士同様死んでしまったのだ。
 その後は、ミッディール王国襲撃のきっかけとなったリリアン王家が何食わぬ顔で介入し、ミッディール王国の領土を我が物顔で独占した。
 アールイの父親は公爵から男爵へと成り下がり、アールイの母親は国が滅んだショックで寝込みそのまま帰らぬ人となった。そしてアールイの父は男爵家の未亡人と再婚し、出稼ぎに出て今に至る。

………………………
…………

 ふぅ、とアールイは安堵の溜め息をつき、腰に手を当てた。
「…終わった……」
 洗濯物を干し終わったアールイは、洗濯物の入っていた大きな籠を持って屋敷の中へと入っていく。
 屋敷といっても、そこまで大きくはない。とはいえ、屋敷という区分ではそういえるが、農民や漁民の家に比べれば大きい。
 そしてアールイが5年前まで暮らしていた城は、この小さな屋敷より比べ物にならないほど大きかった。