二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

赫く散る花 - 桂 -

INDEX|16ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

四、







 外はよく晴れていて明るい。
 穏やかな黄金色の陽射しが降りそそぐ秋の午。
 風の涼しさを頬に感じながら桂はゆっくり歩いていた。
 やがて、病院に到着すると、病室に向かう。
 その途中の廊下で、新八と神楽に出くわした。
 立ち止まり、話をする。
「銀さんのお見舞いですか?」
「ああ」
「もうすっかり元気ですよ」
「食事制限中なのに隠れて甘い物を食べるから困るアルね」
「そうか、あいつらしいな」
 そんな軽いやりとりの後、桂は歩きだそうとした。
 しかし。
「……桂さん」
 新八に呼ばれる。
 だから、桂は踏みだそうとしていた足を止める。
「今日、お屋敷に行ってきたんですが、奥様から日割り計算したお給料をいただきました」
「ひとり分でいいって言ったんだけど、ちゃんとふたり分くれたヨ」
「奥様は屋敷を売り払って田舎に引っ越されます。そして、そこで旦那様を待つそうです」
 複雑な表情をして新八は言った。
 惣兵衛を含め、津倉屋による転生郷の密輸・密売に関わった者のほとんどが警察に捕らえられた。
 転生郷の取引をしている倉庫に乗りこみ、そして最後に桂が惣兵衛を倒した後、佐一郎が警察に通報したのである。佐一郎はそのまま残ったが、指名手配犯が警察の来るのを待つわけにはいかなかったし、それに一刻も早く銀時を病院に運ばなければならなかったので、桂は付近に止めておいた車に銀時を乗せて倉庫から去った。
 惣兵衛も政府高官の天人も、初めのうちはなにも知らないと言い張っていたらしいが、惣兵衛の部下たちが罪を認め密輸・密売の詳細を話したので、仕方なく白状したという。
「旦那様はともかく、奥様はいい方でした」
「ウン」
「……あの時、桂さんに止めてもらって良かったです。もし旦那様を捕まえるためにあの倉庫に行っていたら、奥様に合わせる顔がなかったかも知れません」
「……そうか」
「それに、万事屋にきた仕事を手伝ってもらって、感謝してます」
「いや、あれは俺にとっても都合が良かっただけだ。幕府高官の天人の悪事を暴けて、良かったんだ」
 だから貸し借りはなしだ、と付け加え、桂はふたたび歩き出す。
 今度は呼び止められることなく、銀時のいる病室を目指した。

 桂は六人部屋の病室に入ると、銀時がいるはずの窓際をベッドを見た。
 カーテンが締め切られ、なかの様子はわからない。
 病室を歩いていく。
 銀時の隣のベッドは開いていて、向かいはカーテンが閉め切られていた。
 そして目的地に到着すると、桂はカーテンをシャッと勢いよく開けた。
 銀時の顔をチラと見て、言う。
「……隠れケーキか?」
「ケーキなんざ食ってねェよ」
「では、その口の端についている白い物はなんだ?」
「汗に決まってんだろ」
 即座に言い返し、銀時は口元を右手の甲でぬぐう。
「どう見ても生クリームだろう」
「違ェよ」
 銀時は手の甲についた生クリームをなめた。
「甘くねェ、塩辛い」
 あくまでも汗だと主張する。
 桂はフンと鼻を鳴らした。
 それから、つい先程までのようにカーテンを閉め切る。
作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio