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旅人さんと3つのながれもの

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海に一人の旅人が漂っていました。
船が沈んだのでしょうか。
旅人は浮輪一つでした。
そうしてゆっくりと旅人は漂っていました。
やがて旅人は自分と同じように海原を漂う人影を見つけ、仲間がいたと大喜びしました。
旅人はとても孤独だったのです。
なので、マネキンだった人影に裏切り者と言いました。
裏切り者、と旅人が叫ぶとマネキンは海の底へ沈んで行きました。
すると浮輪の空気が少しずつ抜けていきました。
そこへ枝が流れて来て「俺につかまりなよ」と言いました。
旅人は言われた通り枝につかまりました。
しかし枝は段々と沈んでいきます。
旅人は枝に裏切り者、と叫びました。
枝は、パキリと折れて、旅人から離れて行きました。
さて旅人は沈んでいきます。
そこへ藁がやってきて「私につかまって」と言いました。
しかし旅人は「申し訳ありませんがもう疲れました、私は海に沈みたい」と力なく首を振りました。
藁は言います。
「あなたを助けたい。私はひとりで寂しいの、だからあなたの役に立ちたいの」
旅人は心を打たれ藁をつかみました。
そうしてしばらく旅人と藁は海原を漂いました。
しかし沈んでいく旅人を藁が支えきれるはずもなく、藁も段々と沈んでいくのでした。
旅人は呑みこんでしまった海水のせいで癇癪をおこしてしまい、藁に「役立たず」と叫びました。
藁は悲しくなって旅人から離れてゆっくり沈んで行きました。
旅人はまた一人海原を彷徨っています。
その様子を流木と板が見て「わたしも助けにいかなくては」と言います。
旅人はもう疲れきって沈もうとしていました。
でも中々沈みません。
何故ならマネキンと浮輪と枝と藁がこっそりと支えていたからでした。
そうして今日も旅人は空を眺めて浮かんでいるのでした。

めでたしめでたし