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一生懸命頑張る君に 1

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Episode.3 【人生経験不足】part3



琥瑦は着いてから、はっとした。
(なにやってんだ、俺)
別にここまで来る気は―――全然とは言い切れないが―――なかった。
それよりも、武隆に合わせる顔がなかった。
頑張っている武隆に、琥瑦は確実に負けていた。
(俺は・・・)
ここに来て琥瑦は、やっと、半年間の自分が判ったような気がしていた。
初めは、多分、自分のタイムが伸びなかったり、置いていかれているような気がしていたんだろう。
けれど、日が経つにつれて、琥瑦は武隆との差を身にしみるほど実感した。
武隆は、琥瑦に比べて、タイムが伸びないことがしばしばあった。
その度に武隆自身も琥瑦や他の仲間たちとの差を自覚したはずだ。
それでも、武隆はいつだって「走る」ことから眼を逸らさなかった。
琥瑦はたった一回の、それもごくごく小さな挫折で、走ることをやめてしまったのだ。
弱い。
誰にだってあるはずの悩みに、自分は戦いのスタートラインにすら立てていなかった。
もう、この半年で、武隆はどれだけ進んでしまったのだろうか。
目の前が滲む。
けれど今、琥瑦も強くなりたいとあの日から初めて望んだ。
琥瑦は、競技場に足を踏み入れる。
陸上という形でも、なんでも、琥瑦はスタートラインに立ってみたかった。

一歩一歩、進んでいった。

作品名:一生懸命頑張る君に 1 作家名:雛鳥