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一生懸命頑張る君に 1

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Episode.2 掴みきれない夢



四月。
武隆と琥瑦は入学式を迎えた。
彼らはまだ、すれ違っていた。

「武隆!また同じクラスじゃん。よろしく~」
「おう!」
クラスメイトと他愛のない話をして、一日が過ぎて行った。
すると、隣の女子が話しかけてきた。
「工藤君・・・っていうの?初めまして。私鈴木紫乃っていいます。よろしく!」
武隆と紫乃はこうして出会った。
彼女は非常に快活で、元気な子であった。
武隆と紫乃は直ぐに仲良くなった。



一方の琥瑦は、あれからずっと無気力なままだった。
琥瑦には誰の言葉も入って来なかった。
ぼんやりと黒板を眺めていた。
「何ぼやっとしてんのや!」
いきなり声をかけられた。後ろに座っている男子だった。
「な、何・・・」
「もう中学生やで!?青春や!中学生日記みたいなことが起こるんや!」
・・・。
琥瑦は不審に思ったし、その少年Aがなぜ自分にかまうのかと思っていた。
(中学生日記かよ・・・・・)
ため息をついた。
「・・・なんで俺に話しかけんの」
「だって席が近いし、お近づきになれたらと思うて」
天真爛漫という言葉がぴったりな男子だった。
「あ、そうや。僕の名前は谷口裕也。宜しゅう」
「・・・田中琥瑦」
谷口裕也が何を考えているのか、琥瑦にはさっぱり分からなかった。

入学式が終わり、暫く経つと、クラス自体が周りと打ち解けるようになっていた。
琥瑦も裕也のお陰か、周りと普通に話せるようになっていた。
それでも、琥瑦と武隆が話すことは、まずなかった。
紫乃も裕也も気づいていた。
なんでこの二人が話さないのかと。
小六の冬から離さなくなったことも、人づてから聞いていた。

体験入部が始まって、周りがどうするのかと話しだした頃。
武隆はもちろん、陸上部に入ろうと思っていた。
琥瑦のことは、もう、半ばあきらめていた。
話すことさえ出来ない。
今度こそ、縁が切れてしまうのではないかと思った。
もうこれ以上琥瑦とこんな関係になりたくなかった。
だから琥瑦の分まで頑張ろうと思った。
そう、自分に言い聞かせることしかできなかった。

裕也も陸上部に入ろうと思っていた。
琥瑦のことも、もちろん誘った。
「もう俺は陸上はやらないと決めているんだ」
と言って、断られた。
裕也は、なぜ琥瑦が陸上をしないのかと思った。
まだ陸上をやりたい、みたいに聞こえた。
武隆と何のやり取りがあったのかは分からなかったが。

琥瑦は、陸上をやるつもりはないと言い聞かせていた。
もう、クラスの中だけでやっていけると。


そして、時間が過ぎて行った・・・・。

作品名:一生懸命頑張る君に 1 作家名:雛鳥