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夢と現の境にて◆参

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家に帰った俺は父から早めに帰るとの連絡を受けたため、久しぶりの二人そろっての夕食に何を作ろうか悩んでいた。冷蔵庫にはそんなに残ってなかったが今日買ったものでも充分手の込んだものが作れる。折角だからあまり食べていないものがいい。さて何を作ろうか。そう考えていると、いつのまにか外が暗くなっていた。帰ってくるのは何時だろうか。多分8時過ぎにはなると思うが早めに考えて作らないと間に合わない、そうため息交じりに台所で突っ立ったまま食材を睨み付けていると、父からの連絡の後静かにしていた携帯が突然鳴り始めた。まさか急用で無理になったのだろうか。前にそんなことがあったのを思い出しながらあまり進まない気持ちで携帯を手にした。どうかそうではないようにと開けて見てみれば、メールは父からではなく、狭霧からだった。その名前を見れば、俺は先程の公園での出来事が一瞬にして思い出された。恥ずかしさと気まずさ、あと恐らく期待が混ざった思いでそれを見つめる。あの会話のあとでいったい何を言われるのだろう。平常心でいられなかったが考えてもしょうがないと思いつつ、急ぎの用だったらいけないとそれを開き、内容を確認した。

「狭霧:夢を見た。同じ学校の同級生。名前は多分、藤本 紗絵。場所は、屋上だ」

見た瞬間、俺は鈍器か何かで打ちのめされるかのような衝撃を受けた。狭霧のメールが何を意味しているのか理解したくなかった。何度も信じられないと訴える思考の中で、俺はその名前を改めて見つめた。藤本 紗絵。中学の時の元彼女。先日被服室で別れたばかりの女。狭霧とこういう関係に至った原因。
俺は恐怖のあまりその場に蹲った。またか、またなのか。頭を抱える。ブルブルと身体が震えだす。また俺のせいで誰かが死ぬっていうのか。取り返しのつかない行動、言葉。自分はなんのことはないと思っていたことだったのに、相手には命さえ奪うような重要なことで。そしてそれをいつも理解した時には、もう、その人に会うことすらできなくて。

…場所は屋上だって?俺は小さく空笑いをした。

「自殺するなんて、きいてねぇよ…」


力なく吐き出される自分の声。情けないにも程がある。俺は震える手で力の限り携帯を握った。後悔する前にどうにかするのが先だ。俺は意を決し、狭霧へとあるメールを送った。

「なんとかしてみせる…今度こそ…助けてみせる。」

体の震えを抑えるように自らを抱き、誰にもなくそう呟いた。

作品名:夢と現の境にて◆参 作家名:織嗚八束