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コンビニへ行こう! 前編

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take3 女神の気まぐれ




「おい帝人、あれ、噂のストローさんだろ?」
今日も女子大生に敗北した正臣が早朝シフトで一緒になった。月に一度はこういう日があるよなあ、と帝人は親友の女性に弱い性質を心配してみたりするが、それでも気心の知れた正臣と一緒だと、何かと仕事が楽でいい。そんなことを思っていた帝人の小脇を、正臣が軽くつついてあれ、と指差した先に、黒いコートが目に入った。
「あ、ほんとだ、ストローさんだ」
「マジでプリンにストロー付けろって言うのか?あんな美青年が?」
「言うよ、もう五回はレジ打ったけど、毎回付けてるよ」
……最初の遭遇から、一ヶ月以上がたとうとしていた。ストローさんはまるで帝人がいるときを狙ったかのように、毎週土曜日の早朝七時前後にやってくる。その時間帯だと帝人がレジにいることが多いので、帝人はわりとストローさんの来店を楽しみにしていたりした。
他意はない。
しいて言うなら、挙動が面白いからだ。焦って小銭を落としたり、カウンターに思いっきりぶつかったり、毎回あきない。変な人だけど。
だが今は、いつもよりストローさんの来店が遅かったせいもあり、帝人は正臣と一緒にパンの廃棄チェックをしているところである。残念ながら今日は接客できそうに無い。何しろストローさんはいつもプリンの棚に直行して、レジに急ぎ足でやってくるのだ。
「正臣、こっち終わったよ」
「おー、そこのカゴに入れておいてくれ。こっちももうちょい」
コンビニという場所は、食品の管理チェックが非常に厳しい。パンもおにぎりもお弁当も、賞味期限がかなり早めに設定されている。短いスパンで売れ残ったら、それらはほとんど廃棄にまわされたりする。もちろん店によってその廃棄製品をどうするかは店長の采配によるところが大きい。ちなみにこのコンビニでは、勿体無いから欲しいものは持って帰ってもいいよ、と言われているので、一人暮らし貧乏高校生の帝人には非常にありがたい。
廃棄品とはいえ、実際の賞味期限までは間がある。これのおかげで週に4食分は浮くのだ。
「よっし、おっけー、あとは俺がやっとくから、レジ戻っていいぞー」
「うん、お願い」
廃棄のパンをバックヤードに持っていく正臣を見送って、帝人は店長がいるはずのレジに戻った。新人アルバイターも一ヶ月たてばほかの仕事の要領が分かってくる頃だけれど、それでも土曜日の早朝は人数と客数の関係から、帝人が主にレジに入る事になっている。
店長はこれから発注もあるので即座にレジを離れ、帝人は改めて店内を見渡した。雑誌の立ち読み客が一人、二人。それ以外にお客さんはいないようだ。今日も平和に暇である。
「あれ」
ふと、その立ち読み客の片方と目が合った。
と思ったらものすごい勢いで目が逸らされた。
「……ストローさんだ」
レジ袋を取りやすいように整えつつ、ぼそりと帝人は呟く。あれ?いつもストローさんは、プリンに直行で即刻レジに来るのに、今日に限って立ち読み?
今まで一度も、そんな余計な行動を見せたことは無かったのに。しかもさっき、レジの動向をうかがっていなかっただろうか。でも、何のために……?
首を傾げつつ帝人が自分の名札バーコードをスキャンし、レジを打つ準備を整えたまさに、そのとき。


「これ」


ぽんっと、プリンが差し出された。
「はい?」
顔をあげれば、いつもと同じように若干緊張気味の顔をしたストローさんが、帝人から微妙に顔を逸らしつつおずおずとプリンを差し出している。
今日は抹茶プリンか。
いや、そうじゃなくて、あれ?
「あ、はい、百四十六円です!」
ぴっと商品のバーコードをスキャンして、帝人は一番小さなビニール袋を用意した。手早くそのプリンを袋に入れ、いつもどおりにストローをつける。しかしその迷いの無い作業を行いつつも、頭の中は疑問符だらけだ。
あれ?今ストローさん、僕がレジに入るのを待ってたり、した?
手渡された五百円玉にお釣を返しながら、帝人は思わずストローさんの表情をうかがうようにその顔を見詰める。
「……な、なにか?」
ぎこちなく商品を受け取った男性は、帝人の視線にほんのりと頬を染めつつ、小さな声でそう尋ねる。余りじろじろ見るのは失礼だと、分かってはいるのだけれども。
「ありがとうございました、またおこしくださいませ」
ごまかすようににっこり微笑んでそう言った帝人に、男性はギクシャクと「ど、どうも」と答え、それからロボットのようなぎこちなさでコンビニを後にするのだった……あの、よくみると同じ方の手足が同時に出ているんですが。それは歩きづらくないんでしょうか?
だがしかし、もちろんそんな指摘が出来るはずもない。今日も面白い人だなあ、とその後姿を見送った帝人に、バックヤードからレジ前のガムの補充にやってきた正臣が、
「何ぼーっとしてんだ?」
と声をかける。
帝人は、大きく息を吐いてそれに答えた。
「……正臣、僕、気づいちゃったかも」
「何に?」
「さっきの、ストローさん」
「今日もストローだったのか?」
「ストローだったよ。あの人、僕がレジに入るの待ってた気がする」
「え?なんで?」
「多分、店長のレジでストローつけてって言いたくなかったんじゃないかな。だから僕のレジにしか並べない……」


「つまりあの人、ものっすごく恥ずかしがり屋で人見知りなんじゃないかな!」


なんか可愛いね!
なんて目を輝かせた帝人の言葉に、遠くでどこかの誰かさんが盛大にくしゃみをしたとか、しなかったとか。





水曜日の夕方と土曜日早朝を固定シフトとする帝人だけれども、中にはどうしても出られないときがあったり、ほかのアルバイトに頼まれて代わったりすることもある。
その週は金曜日の夕方から夜までのシフトを代理でこなした帝人は、初めての夜番の忙しさに目を回しながら、ようやく帰宅の時間を迎えた。このへんは住宅地で、飲み屋も近くにあるので、仕事帰りのお客さんは多いのだという。まして、金曜日ならばなおさらだ。
酔っ払い相手の接客は疲れるなあとしみじみ感じつつロッカールームで上着を着替え、その夜の分の廃棄製品の中から、新発売のパンとおにぎりを二つほどピックアップし、カバンに詰め込んだ。裏口のない店なので、従業員用の出入口から店に出て、そこから外へ出ることになる。お疲れ様でした、と交代の深夜番アルバイトに頭を下げつつ、店の外に出ようとしたところで店に入ってくる客が視界に入った。
店員としては、ここは待つべし。
足を止めてお客さんが店内に入るのを待つと、ドアを押して入って来た男性のコートが帝人の視界にひっかかる。
あれ、このコート、確か……。
「あ、ストローさんだ」
思わず口にした声は、忙しい店内の雑踏にまみれて消えた、かと思われたが。
「え?」
ぱち、と瞬きをしてこちらを振り返った男性が、帝人を視界に入れて「あ、」と声をあげた。
私服で遭遇するのは初めてなので、店員だとは分からないかなあと予測していた帝人だったが、相手の反応を見るに、どうやら帝人のことはばっちり分かったようである。
「あ、あれ?今日、土曜日……?」
慌てたように携帯を取り出す男性に、帝人は思わず吹き出してしまった。
「こんばんはー」
にこやかに挨拶をしてみれば、かあっと赤くなったあと、
作品名:コンビニへ行こう! 前編 作家名:夏野