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無題Ⅰ~異形と地下遺跡の街~

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「・・・・ここまでがお前が呑気に人の肩で酔いつぶれている間に起きた出来事だ」

出来事の回想を説明し終えた鬨は、そう言って一息つき、用意された紅茶に口をつけた。説明には自分の感じたあの感覚は省いた。しようとしても説明するための言葉が見つからないのでは説明のしようがない。

「・・・・・・・・そうか」

ヴェクサは重い溜息をつくと、前かがみになっていた体を背もたれに預けた。
ここはヴェクサの自宅らしいのだが、なんというか・・・豪邸だった。
椅子一つとっても値段が想像できないほど高そうだが、金ぴかというわけではない。 
部品の一つ一つが職人の手によってつくられ、木でできている家具はとても落ち着いた
上品さを与えている。部屋も一部屋一部屋がとても広く、隅々まで綺麗にされていた。
・・・・・・一体何人の使用人がいるんだろうか。

「すまねぇ、そんなことになってたなンてな・・・・・」
「・・・・・・・・」
「おい、なンだその顔は」
「いや、そんな反応が返ってくるとは思わなかった」
「いちいち失礼なやつだな。・・・ったく、巻き込むつもりはなかったってのに・・・」

「面倒臭いことになった」

そう言ってヴェクサは片手で後ろ髪を掻きまわすと、立ち上がった。

「お前に見てほしいもンがある。だが、見るか見ないかは自分で決めろ」
「・・・それをいまさら聞くのか」
「・・・・だろうな」

ヴェクサは肩を竦めて「ついてこい」と先を歩きだした。
鬨はその後ろ姿を見て、無性に蹴ってやりたくなったが、大人しく立ち上がって歩きだした。
どうやら目的の場所は下にあるようで、ヴェクサは階段を下りていく。
「ここだ」
そう言ったヴェクサの後ろには本棚が広がっていた。どうやらここは書斎のようだったが、明りがほとんどないので薄暗い。しかし、ヴェクサが見せたいのはここの本ではないらしく、本棚には目もくれず奥へと歩いていく。
しかしそうして奥に行くうちに、最奥に来てしまうのはあたりまえのことである。

「・・・本しか見えねーけど」
「あぁ、本だな」
「・・・・・・・」

おちょくられてるんだろうか。

そう思っていたら、「おちょくってはねーよ。…顔にでてるぞ」と言われた。

「おちょくってんのか?」
「無表情で言っても声に出したら意味ねぇよ!」
「そんなことより、さっさと説明してくれよ」
「何、この理不尽」

ヴェクサが目に少し涙を浮かばせていたが、見なかったことにした。鬨は、ヴェクサが本の位置を並び替えていくのを見て、書斎という場所に合点がいった。

「隠し扉か」
「ご名答」

その声とともにゴゴゴゴ・・という音がして、本棚が一つ動いた。その先には地下へと続くのであろう階段があった。明かりはなく、数歩先は暗闇に包まれている。

「えらくベタな展開だな」
「王道って言え」

お互い、そんな戯言をはいて、一歩前へ足を踏み出した。