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かぐたんのぷちぷち☆ふぁんたじぃ劇場Q2

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マ夕゛オさんと僕〜party is over〜



「行ってらっしゃい」
僕は今日もマ夕゛オさんに弁当を作る。
「……じゃあ、行って来るよ」
マ夕゛オさんは風呂敷包みのそれを抱えていそいそ出かけて行く。
新しい勤め先はまだ決まらないけど、面接用にびしっとスーツなんか着て、ヒゲも無精じゃないおされワンポイント的に整えたマ夕゛オさんはちょっとした、いやかなりだいぶそれなりにすごくダンディだ。
何たってまずあのイカすグラサンがイイ。とにかく黒いグラサンが圧倒的に他の追随を許さず有無を言わさぬ勢いでグンバツにカッコイイ。あとポイントはやっぱグラサンとか、グラサンとかグラサンとかグラサンだ。例えば仮にマ夕゛オさんが前と後ろと頭の上と顎の下と、都合四つグラサンを掛けてちょいとステップ踏んだ日にゃ、それこそ某エ○○イルなんかが束になってかかったって敵わないだろう。
(……、)
そして、アホみたいなニヤケ面でそこまで考えたところで僕ははっとした。
――どうして、なんでそんな最強男子(候補)のマ夕゛オさんが、僕みたいなシス&ふぁざこんこじらせたイタイ眼鏡っ子ヲタ男子にすぎないド底辺と一緒に暮らして(いやちゃんと姉上の許可取った上での特例出世払い債居候扱いだけど)いるんだろう。不自然だ、ありえない、まったくもってセオリー無視だ。
「……。」
マ夕゛オさんを送り出したあとの四畳半の片隅で、僕の背中を冷たい汗が滴り落ちる。
――僕は何だ? 何様のつもりだ? 僕なんか到底近寄り難い、元カースト最上位のマ夕゛オさんに昨晩のおかずの残り物にちゃちゃっとたまご焼きとタコさんウィンナとうさぎさんリンゴ的なものをプラスした程度の弁当渡していい気になって、何が「行ってらっしゃい、がんばって」だ、人励ます前にオマエがもっとガンバレっつんだよこのダメガネぱっつん野郎!
「……!」
幻聴の罵声に僕は耳を覆って床にしゃがみ込んだ。
――はは、ははは、何てこった、縮こまって膝を抱えて、僕の唇には乾いた薄ら笑いしか出てこない。
ねぇマ夕゛オさん、だって僕は気付いてしまったんだ、一升瓶担いでワッショイしてたり、後頭部げしげし踏まれてイヤッフ!姿のマ夕゛オさんでも、なぁに他愛のないことだ、僕には怖いモンなしさ、どんなマ夕゛オさんだって愛してみせる、ほんのこないだ誓ったばかりのはずなのに。
だけどやっぱり、それはマボロシだったんだ、僕は抱えた膝に額を伏せた。
……だって僕は、マ夕゛オさんには今まで通りずっとダメなマ夕゛オさんでいて欲しい、ヲタっ子眼鏡のこの僕にもひょいと軽々手の届く位置の、ぶっちゃけそういうマ夕゛オさんだからこそ、僕は安心してマ夕゛オさんを好きでいられた。認めようと認めざるとそれは多分に真実で、――なのにそうじゃなくなったら? バリキャリに戻ってちっともダメじゃなくなったマ夕゛オさんのことを、僕は今まで通り、同じ気持ちで愛せるのか? ……ウソだろ、あまりに現実味がなさ過ぎて、シミュレーションしてみることすら脳が拒否する。
「……シンちゃん?」
いつの間にか夕方を過ぎて、部屋の中は真っ暗だった。帰って来たマ夕゛オさんが部屋の灯りをつけて驚いたように僕に訊ねた。
「どうしたんだい?」
「――イヤ、」
僕は膝から額を上げ、ずれた眼鏡を直して心配顔のマ夕゛オさんに笑いかけた。
「ちょっと、ボーッとしてたら寝ちゃってて」
立ち上がろうとして、頭の底も膝頭がふらつくのもなんとかうまくごまかせた。
「マ夕゛オさんはどうでしたか?」
――今日の面接、振り返って僕は訊ねた。
「あっ、ああ……、」
ややためらったあとでマ夕゛オさんは続けた。
「まだはっきり決まったわけじゃないけどね、明日もう一度、会社の方に来てくれって」
「良かったじゃないですか、」
僕はにっこり、マ夕゛オさんに笑いかけた。本心だったかどうかはわからない。だけどどこかほっとしていたのも事実だ。
「あの、メタボ対策メニュー本とか出した大っきな社食のあるトコでしょ? 僕のお弁当作りも明日でオワリかな、」
「シンちゃん」
マ夕゛オさんが真剣な顔で僕を見る。両肩に置かれた手がずしりと重かった。泣いちゃいけない、僕は思った。
「……どうして、何か気に入らないのかい?」
――もっと喜んでくれると思ったのに、ため息交じりにマ夕゛オさんが漏らした。
「嬉しいですよ」
僕は小さく笑った。笑いながら、肩から外したマ夕゛オさんの手を下に降ろす。
「シンちゃん……」
マ夕゛オさんの抱える不安が、ひたひたと二人の足元に濃く流れ出す。けれど僕らは足を取られてはならない、僕のためにも、何よりマ夕゛オさん自身のために。
「今度こそ、夢の時間はおしまいですね」
僕は真っ直ぐマ夕゛オさんを見上げた。
「えっ」
僕の視線を受け止めてマ夕゛オさんが言葉を失う。僕は深呼吸した。
「これ以上一緒にいたら、僕もマ夕゛オさんも、望まないのに、お互い傷付け合ってしまう」
「……」
マ夕゛オさんがまじまじ僕を見つめた。きれいに揃えた髭面がほんの少し震えて見えた。