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Juno は きっと微笑んだ

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月曜の午後は自転車走らせて


「劉、電話しなくてよかったのぉー・・ステファン神父さん教会にいないかもよ・・」
2人でちょっと寒かったけど、豪徳寺のマンションから赤堤の聖ラファエル教会まで、自転車を走らせていた。もうすぐ角を曲がると、教会の屋根が見えてくるはずだった。
「でもさ、いそがしいのに約束とらせちゃっても、ステファンさんに悪いからさぁー」
少し後ろで真っ赤な自転車に乗っている直美に大きな声で答えていた。
「いないかもよー そうしたらどうするのぉー」
「その時は、その時、いいじゃん、一緒にサイクリングも久しぶりだし・・叔母さんとこも 行ってないし・・お茶でもご馳走になって帰ってこようよ」
「叔母さんもいないかもよー」
「その時は、また、その時」
「そればっかり・・」
直美はあきれたいたけど、天気も良かったし、気持ちよさそうな顔で直美は自転車をこいでいた。女の子のくせに、俺に負けない速さできちんとついてきていた。
「よっしゃー 到着」
「ふっー どこに自転車置こうか・・」
「叔父さんの家の駐車場に置かせてもらおうか・・」
「うん、そうだね」
教会の隣の叔父の家まで、自転車を降りて二人並んで歩き始めていた。
「まずは、叔母さんいますかね・・直美はどっちだと思う・・」
「どうなんだろ、この時間って・・電話してくればよかったのに・・いなかったら自転車は教会に置くの・・」
「いや、駐車場に置かせてもらっちゃおうかな・・叔父さんの車は昼間だからないだろうし、平気だろ」
「劉が決めることじゃないような・・」
「たしかに・・」

「こんにちわー 直美ですけど・・」
屋根に風見鶏がのった古い洋館には、ちょっと似合わなそうなインターフォンを押しながらだった。
「あら、どうしたの、いらっしゃい・・いま、開けるから」
うんよく叔母の聞きなれた声が小さなスピーカーからだった。
「良かったね・・いてくれて」
「うん」
直美がにっこり顔でこっちを見ていた。
「いらっしゃい、ひさしぶりね・・さ、あがって・・」
洋館のドアを開けながら叔母が元気そうだった。
「こんにちわ、いきなりですいません・・教会に用があって・・」
直美も一緒に頭を下げていた。
「あら、なにかしら・・とりあえず立ってないであがりなさいよ」
「じゃあ、ちょっとおじゃまします。あっ自転車ここに停めさせてもらってもいですか」
「いいわよ・・さ、直美さんも早くあがって、寒いでしょ・・」
「はぃ、おじゃまします」
返事をした直美と一緒に玄関から洋館の中にだった。
「さっ 座ってね・・今、お茶いれますからね・・」
「すいません、突然で・・」
ソファーに座って直美が俺の代わりに謝っていた。
「いいのよ、で、教会に用ってなにかしら・・」
台所から叔母の声がこっちにだった。
「ちょっとしたことで・・ステファンさんいますかね・・」
「どうでしょ・・電話で聞いてあげましょうか、劉ちゃん」
「いや、隣だから、行きますよ」
「そう・・ま、お茶でも飲んでから行きなさいな・・」
「はぃ、いただきます」
紅茶好きの叔母だったから、当然、おいしそうな紅茶が目の前にだった。
「2人とも元気そうね・・バイトいそがしいのかしら、直美さんも・・」
「いそがしいってほどじゃないですけど、それなりに・・」
「直美さんは大丈夫そうだけど、劉ちゃんもきちんと単位とれたのかしら・・」
「大丈夫ですよ・・劉もしっかり取りましたよ。体育はダメだったみたいですけど・・」
「それは、仕方ないわよね、足が折れてたんだから・・」
入院してたから、どうにも出席日数がそれだけは足りなくて、不可になっていた。
「で、劉ちゃんお隣には今日はなんなの・・」
「結婚式の事で・・」
「えっ・・」
叔母が顔に似合わない大きな声を出していた。
「結婚式の相談なんですよ」
直美も続いていた。
「えっー 困っちゃうっていうか、どうしようっていうか・・どうしましょ・・」
急に落ちつかなくなった叔母を見て、直美と顔を見つめ合っていた。
「あのう・・・」
直美がゆっくりちいさな声をだしていた。
「あのう・・・結婚式っていうのは・・・」
「おめでたいけど、 その・・なんていうのかしら・・いきなりでちょっと、びっくりしちゃったから・・」
「あのう・・ですから・・結婚式っていうのは・・」
「いえ、おめでとうだわね、直美さん・・ごめんなさいね・・突然だったから・・おめでとう」
おかしくて笑いそうになっていた。
「いや、違うんですけど・・わたしじゃないんですけど・・」
「直美さんじゃないって、どういうこと・・」
叔母がこっちを見ながらだった。
「いや、俺でもないですから、叔母さん・・」
「劉ちゃんでもなくて 直美さんでもなくてって・・どういうこと・・」
「ですから、わたしでもなくて劉でもなくて、劉の友達っていうか先輩ですから・・」
笑いながらだったけど、直美がやっと説明を最後までだった。
「えっー そうなのー やだぁー はっきり言いなさいよ、あんた達・・」
叔母は椅子に深く座りなおして、息を大きくついて、少し首を横に振りながらだった。
直美がこっちを見て、笑いを抑えていた。
「そう、そうなの・・なんか勘違いしちゃったわ、わたし・・いやねー そう、お知り合いの方なのね・・お隣で結婚式なさるのね・・劉ちゃんと直美さんじゃないのね・・」
「その お願いで・・・」
にっこり笑って、叔母に話しかけていた。
「で、なんで劉ちゃんがなの・・ご当人でいいんじゃないの教会にいくのって・・」
「クリスチャンじゃないんですよね・・2人とも」
「あら、そうなの・・それでなのね」
「はぃ、むずかしいですか・・聖ラファエル教会で結婚式だけを挙げさせてもらうのって・・」
「信者さんになってくれるなら、平気なんだけどねぇ・・」
「そうですよね、カソリックですもんね・・・」
ちょっとため息をつきながら叔母に答えていた。
「やっぱり、難しいんですか・・信者さんじゃないと・・」
直美が両手でカップを手に紅茶を飲みながら叔母にだった。
「これから、信者さんになってくれるなら・・ダメってわけではないと思うんだけど・・そのへんの細かいところは、わたしだとあまりわからないわ・・」
「そうなんですか・・」
「結婚式だけってのは、どうなんだろうね・・たぶん断られるんじゃないかしら・・そういう話はいっぱい来るみたいだけど・・」
「そうなんだ・・」
直美が静かにうなづいていた。
「ま、聞いてみます、ステファンさんに・・聞いてみないとわかんないし・・これから行ってみます、教会に・・」
「そうね、劉ちゃん、それがいいわね・・わたしに相談より、ステファンさんにね・・いるかしらステファンさん・・」
「いてくれると いいんですけど・・」
「ま、もうちょっとゆっくりしてから行きなさいね・・これも、おいしから一緒に食べてね」
クッキーをお皿に出しながらの叔母に言われていた。

「お茶いただけませんやろうかぁー お客さんでっかぁー なんや派手な自転車とまってますけどぉー 聖子さん いてはりますかぁ・・」
玄関から 妙な大阪弁の聞きなれた大きな声が響いていた。まちがいなくステファン神父だった。