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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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手鏡

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【 手鏡 】
 
 我が家に伝わる手鏡は不思議な鏡だ。
 覗き込むと時々うっすらと文字が浮かぶ。
 
 隠れキリシタンが使ったカラクリ鏡かと思ったが、浮かぶ文字が漢数字のみなので、それとは違うようだった。

 「もしかして、宝のありかを記すものじゃないか?」と欲張り亭主は言ったが、方向を記す文字がないので、それでもないようだった。

 結局、正体は分からずじまいだったが、数年前突然その謎が解けた。

 その年、出産をひかえた娘が難産で、一時母子共に危険な状態に陥ったのだ。

 あわてて病院に向かう時、思わず鏡に向かって「どうか母子共に無事で、健康な赤ちゃんが生まれますように」と祈ったところ、突然鮮明な漢数字が現れたのだ。

 私は何か不思議な力を感じ、その手鏡を病院に持ち込んで祈り続けた。

 すると驚くべきことに、祈れば祈るほどその数字が減って行き、零になった瞬間、元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえて来たのだ。
 
 「なるほど。これは神様が願い事を聞き届けて下さる、順番待ちの数字だったのね・・・」
 私の脳裏に、銀行の整理番号票が思い浮かんだ。
 
 
 その後、色々試した結果、分かった事はといえば、
 
 鏡自身は願かけを受け付けてくれるものの、さほど霊力がなく、
 あくまで願かけの順番待ちの数字が現わされる存在だという事。
 
 その数字を減らす最も効果的な方法は、近所の栗の花神社にお参りに行けば良いという事だった。
 ことに御百度参りは効果抜群で、末の息子は難しいと言われていた難関大学に無事入学を果たすことができた。
 
 
 願い事の種類においても成願(じょうがん)率に差があるらしく、切実な願いは比較的早く聞き届けられ、亭主のハゲ頭を治したいというような願いは却下されるようだった。
作品名:手鏡 作家名:おやまのポンポコリン