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今日聞いた話

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今日聞いた話。実話。
カウンターの席に座っていた綺麗な若い女性。
パイナップルのカクテルを飲んでいた。



「私ね、高校生の頃、ラクロスしてたの。部活で。


私、スポーツとか、それまで全然ちゃんとやったことなかったの。
走ったりとかも、学校の授業でやるくらいで。
そんなんだから、大声出したりとか、とっても苦手だったの。
どうしても団体競技だから、そういうのやるじゃない?
自分の情けない掛け声きくたんびに、あーあ、って思ってたの。


でもね、頭の中空っぽになるくらいまで走ったりとか、
みんなで部活終わりの夕方に、コンビニでいつまでも、
えんえんとお喋りしたりとか、そういうのは好きだったの。
とっても楽しかった。
だから、あんまり辞めようとかは思ったことなかったけど。


入って四ヶ月目くらいで、初めての試合があったの。
私、その時にね。ほんとに嘘みたいな話なんだけどね、
私、その時に産まれて初めて電車に乗ったのね。
すっごくすっごく緊張したの。
どこか遠くに行く時は、家族としか行ったことなかったの。
それもお父さんの車に乗せてもらってよ。
だから電車に乗って、友達と知らない町へ行くっていうのが、
とってもへんてこりんな気持ちだったわけ。
まるで売られていくかわいそうな仔牛みたいな気分よ。ドナドナよ。
おまけに知らない人たちとこれからラクロスするわけでしょ、
人数もそんなにいない部活だったから、私もレギュラーなのよ。
したくないけどさ、試合しないといけないのよ。

とっても不安だったの。
それだけじゃなくてね、もっと嫌なのが、そろそろその時に
生理が始まりそうだったの。よけい不安じゃない?
それがきたら、ラクロスどころじゃないし。
でもね、人数がぎりぎりだったから、『私きょう生理なんでちょっと』
みたいにはいかないわけよ。もう憂鬱だったの。


それで、試合する相手の学校についてさ、更衣室で着替えたのね。
ソックスはいて、髪くくってストレッチしてさ。そのあとになんか、
土のにおいのするユニフォーム渡されて、それ着て。
もうすぐ試合だなってドキドキしてたらよ。
ちょっとおしっこしようってお手洗い行ったら、生理が始まったわけ。
最悪よ。もう本当に泣きたかった。
初めて来た、よく知らない学校の薄暗いお手洗いでさ。
なんだか寂しくて、みっともなくて、申しわけなくて。
本当に私泣きそうになったの。冗談じゃなくて。
どうしよう、って思ったの。頭がうまく回らなくて。
ああ、みんながそろそろ私を探してるんじゃないのか、とか、
よけいなことばっかり考えちゃって。
今でも思い出したら泣きそうになるんだけど。


でね、ふと思い出したのよ。
お母さんがさ、もしも始まったらこれ使いなさいって。
タンポン持たせてくれてたのね。それを思い出したの。
で、一回トイレから出てそれをカバンから出してきてさ。
またトイレに戻って、ぴりりってタンポン出したの。
で、いざって思ったんだけど、それが入らないの。
なっかなか入らないわけ。もう本当に泣きそうだった。
いまだったらすっと入るんだと思うんだけど、
その時はね。もうすっごい慌てながらなんとか入れたの。
でもそしたらね、なんか、血があふれてくるの。
もうどうしようって思って。


それで私、結局タンポン二本入れて、ラクロスの試合やったの。
『こんなにいいものあるんだ』って、思ったけど。」









―――それ抜けたんですか。



「うん。ふつうに抜けたよ」
作品名:今日聞いた話 作家名:追試