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臨帝小ネタ集っぽいの

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効率のよい復讐の方法




ねえ、嘘つきな君の名前を、ただもう一度呼ぶから返事をくれよ。


帝人君なら俺を許すだろうと思っていた。いや、かたくなに信じていたと言ったほうがいいのかもしれない。
確かに散々酷いことをしたという自覚はある。友人を追い詰め、池袋に彼を引きずり出し、その後も様々な手を使って彼の大切なものを壊していった。向けられた信頼を叩き壊すようなことをして、それでも、俺には確かに自信があった。
帝人君なら俺を許すだろうと。
根拠を問われたら困る。ただ、あえて言うなら俺は彼の非日常への憧れを、その比重の重さを知っていたからだろう。彼にとって俺は非日常そのもののような存在、そんな俺を完全に拒絶できるはずが無いと。
全てが終わったあと、俺は7:3くらいの比率で帝人君に負けた。お互いに妥協できるぎりぎりのラインだったように思う。俺をにらみつけた帝人君が、もう二度と会いません、と告げたそのとき、俺はただ素直に「嫌だ」と思っていた。
確かに、世界は面白い。人は愚かで愛しい。彼をどれだけ利用しようと、どれほど裏で手を引こうとも、確かに「竜ヶ峰帝人」が特別だったことは俺の中で真実だった。それを、彼本人を含めて第三者にわかって欲しいとは思わない。俺の感情は俺だけが理解していればそれでいい話で、俺の物なのだから。それでもやっぱり、二度と会えないなんて絶対に嫌だった。我侭なことだったとしても。
「君は非日常が好きだろう?」
問いかけた俺に、帝人君は小さく息を吐いた。
「好きじゃありません」
「君は地味に嘘つきだよね」
「別にそんなことないです。僕には日常の生活が大事で、あなたはそのために邪魔な存在なんです」
「酷いな、それは。俺にだって人並の日常くらいあるんだよ?」
「とても信じられません」
そうは言っても、彼は絶対的に非日常に焦がれていることを、俺は知っている。正しくは、日常の上に横たわる非日常に、だけど。
今はほんの少し、紀田正臣や園原杏里の比重が彼の中で重いだけ。いつかそのバランスがほんの少しでも崩れたとき、彼はもう一度非日常を強く求めるはずなのだ。
「今まで君には、素敵な非日常をたくさん贈ったはずなんだけどねえ」
「そんなの知りません」
「これから先、君は日常にまた三日で飽きるよ?断言してもいい。そして俺を求めるはずだ……何かを起す元凶として」
それを言うのは卑怯なことだと分かっていた。帝人君は帝人君なりに、三日で飽きる日常とこちら側との間で悩んで、そして三日で飽きることを理解したうえで日常をとったのだ。分かっていて、知っていて、それでもなお。
「ねえ、帝人君」
帝人君の言葉は嘘つきだから、嫌いだと言われても信じない。
だって俺はこんなに好きなんだから、帝人君も俺を好きで居るべきだ。
「俺の気持ちは知ってるんだろ?」
隠したつもりなんかなかったし、気づいているはずだ。口にしたことは無かったけれど、そしてこれから先も言葉にはしないけれど。
「……知りません」
嘘つきな唇が、それでも少し震えたのを見逃さない。
大丈夫だ、いける、許されるはず。俺はただ、そう確信して彼の体を抱きしめた。帝人君が俺を心底嫌えるはずが無いんだ、だって俺は非日常なんだから。
「今なら俺の恋人になれるんだよ帝人君、YESと言えよ」
確かにそのとき俺は、揺ぎ無い自信を持ってその言葉を口にしたのだと、思う。



「君は、俺のことが好きだろう?」



もしも今、あのときに戻れるならば、俺は笑って彼に別れを告げることができたのだろうか。彼の未来の為に、なんて綺麗事を思えたのだろうか。
考えてはみたけれど、結局無駄なことだ。おそらくこうなることが分かっていて、それでも彼を手放すことはできなかっただろうから。
「……笑っちゃうよねえ、俺のことが好きだろう?なんて。俺の方こそ君が好きで好きでそれだけだったのに」
小さな自嘲は空気に溶けて、病室の静かな空気を震わせる。握りしめた手。あたたかい手。生きている手。それなのに、ねえ、なんで君は。
「……好きだよ」
虚しく響くだけのその言葉を、それでも繰り返す。その耳に届かなくても。
どうせ恋なんて、自己満足なんだ。
そうでなきゃ君だって、あの時あんなふうに泣きそうに笑わなかった。


『好きですよ臨也さん、残念なことに』


弱々しく、それでも認めたその声が、嘘じゃないことくらいは。


『でも、僕はあなたを一番大事なところで裏切りますよ。それでもいいなら、恋人だろうがなんだろうがご自由に』


どうせ去勢だと思っていた。
愛して愛して、愛しあって恋人同士になってしまったら、その安寧の場所を彼は手放さないだろうとタカをくくっていた。万が一逃げられたら追いかけて捕まえるだけ、彼だってそれを望んでいるんだからと。
甘かった、認めよう、俺の敗北だ。
完全敗北で、それでいいよ。
白い包帯をまいた少年の手首をなぞり、ただ、眠り続ける彼が目覚めて、失敗してしまったと笑うのを今は待とう。
あなたの一番大事な存在のままで死んでやろうと思ったのにと、この子ならきっと言うのだろう。そうしたら馬鹿だなと俺も笑って、そして、彼を抱きしめよう。
「好きなんだよ、帝人君。俺は、ただ」
嘘つきな君の唇が、臨也さんなんて大嫌いだと言ったら、分かっているよとささやいてキスをしよう。
これが復讐だというのなら、本当に頭がいい。
これ以上の復讐なんか、これ以上効果のあるものなんか、世界に二つとない。
「……だからはやく、目覚めてよ……!」



俺のこと好きだろう?なんて。
ただ君が好きなんだと、言えばよかった。
作品名:臨帝小ネタ集っぽいの 作家名:夏野