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(*・L・*) ya.
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novelistID. 23644
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タイトル未定

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―第一章―



 一年後。

四月。春の日差しが心地いい。翔は授業中にもかかわらず、窓際の机に突っ伏していた。その頭を細かくちぎった消しゴムが直撃する。
 「・・・んん?」
 重い瞼を上げる。真っ先に視界に入ってきたのは、おそらく消しゴムを投げつけてきた本人であろう人物だった。
 「いやぁ、テスト前のこの時期居眠りなんて、翔くん余裕ですなぁ」
 皮肉たっぷりに言うのは、翔と同じサッカー部の芝崎颯。色黒で背も高く、本人曰く、女子からの人気もそこそこ、らしい。髪の毛は短く刈っており、まさしくサッカー部、という感じだ。人一倍の努力家で、毎日部活の後居残り練習をしている。
 「うるせーなぁ。お前の自主練に付き合ってるせいで疲れたんだよ」
 「まぁまぁ、そんなこと言わないで下さいよ、ダンナ。おいらはあなたに憧れてサッカー部入ったんだからさー」

 翔と颯が初めて会ったのは、今から一年前。高校一年生の春だった。

 「じゃああそこの小学校でも行ってみるか」
颯は中学時代からの彼女である梓とのデートの途中、コンビニで肉まんを買って、座って食べれるところを探していた。
「おぉ?いいねぇ。気分はお花見だね」
梓は好物の肉まんを買ってもらったことでとても上機嫌だった。
近くの小学校の校庭に入る。校庭の周りには桜の木が埋まっており、つい最近まで満開だった桜の花びらは散り始め、校庭をところどころピンク色に染めていた。
平日ならば元気な小学生が遊ぶ声が絶えず響いているが、日曜の夕方の校庭はとても閑散としていた。
「あれ?誰かいるぞ」
最初にその人影に気づいたのは颯の方だった。
歳は颯と同じくらいだろうか。ゴールから三十メートルほど離れた所から何度もボールを蹴り、その全てをゴールポストに当てている。
「ホントだ。一人でサッカーしてるよ?」
「一人で練習なんてすごいな。尊敬しちゃうぜ」
ブランコに腰を下ろした颯が言う。
「てか颯は部活やらないの?」
颯の隣のブランコにちょこんと座り、梓がきく。
「んー、これといってやりたいのがないんだよなぁ。それに、もう入学して一カ月も経つだろ?なんか入りにくいしさ」
二人でそんな話をしていると、足元にサッカーボールが転がってきた。
「すいませーん」
ボールの持ち主が駆け寄ってくる。先程は遠くて分からなかったが、顔を見て颯はその少年が誰かすぐに分かった。
「あれ、藤沢君じゃない?」
「あらら、颯知り合い?」
肉まんにかぶりつきながら梓が言う。
「知り合いも何も、クラスメートだよ。藤沢翔君、だよね?」
「うん。えーっと・・・」
どうやら翔は颯の名前をまだ覚えていないらしい。
「芝崎颯。颯でいいよ。」
「あっ、そうそう颯だよね。珍しい名前だからすぐに覚えちゃったよ」
「嘘だね。今絶対忘れてたじゃん」
けふけふと笑いながら梓が言った。
「もしかして颯デート中だった?」
梓に気づいた翔が颯の耳元でささやく。
「まぁね。こいつは後藤梓。同じ高校だよ。クラスは違うけどね」
「はじめまして。あたしは後藤梓。クラスは四組だから、多分会うのは初めてだよね。よろしく」
そう言うと、梓は丁寧にお辞儀をした。
「んで、藤沢君は一人でサッカーしてたわけ?」
サッカーボールを拾った颯が翔に聞く。
「今日は部活なかったからね。あと、オレのことは翔でいいよ」
颯からボールを受け取ると、翔はリフティングを始めた。
「じゃあサッカー部なんだ。どおりでうまいわけだ」
「うん。オレの親父が元日本代表でさ。ちっちゃい頃からずっとボール蹴ってたから」
「え?親父さん元代表なの?」
一瞬の沈黙の後、
「もしかして藤沢巧さんかっ?」
「そうだけど・・・」
「マジかよっ?じゃあ将来はプロとかプロとかプロとか目指してんのかよ?」
颯が急に興奮しだした。まるで水を得た魚のようだ。
「まぁ、なれたらなりた・・・」
翔の答えを最後まで聞く前に、颯が決心しように言う。
「よぉし、決めた。オレもサッカー部に入るぞ。一応サッカー経験者だし、翔。お前となら、ゴールデンコンビになれそうな気がする」
「それは嬉しいけど・・・彼女のことはいいのか?」
翔と颯が顔を向けると、梓は颯の分の肉まんをほおばり幸せそうな顔をしていた。
「あたしのことはいいよ。颯がサッカー部入るなら、あたしはマネージャーになるから。だって、颯のそばにいたいもん」
「梓・・・」
颯が梓の方へと歩み寄る。翔は急に居心地が悪くなったような気がした。

「それはオレの肉まんだろーがぁ!」
颯が梓にチョップを食らわせていた。
「いやん、おやめになってー」
仲良くじゃれあう二人を眺めながら、翔は一人考えていた。

<確かにこいつとなら、いいコンビになれるかもな>
作品名:タイトル未定 作家名:(*・L・*) ya.