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りんみや あんにゅい3

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「私の娘なんだもの。そんなことは当たり前よ。」 と、水野のママは胸を張っていた。パパも、「気にしないでいいんだ。おまえは、うちの娘なんだからさ。」 と笑っていた。佐伯の両親も、「出来る限りの教育を受けさせて貰うほうがいい。」 と、認めていた。どちらも、本当の子供はいない。弟も血は繋がらない。赤の他人ばかりの家族だけど、それでも、本当の家族ではある。叱られるし、喧嘩もする。そうでなければ意味がないと思う。対面的に取り繕う必要なんてない。
「真理子、芙由子さんは帰ったか? 」
 ぼんやりと、そんなことを考えていたら、声がした。気付いて、寝台を覗き込んだら、だるそうに林太郎が身じろいでいた。
「ええ、明日の午後まで、あたしが付き添いよ。」
「別にいいさ。帰っていいよ。」
「いいの。付き添いたいから・・・・ごめんなさい。音信不通にしてて・・・あの・・」
「うん、それはいいんだ。気にしなくていい。もう、じいさまに苛められたんだろ? だから、俺は何も言うことなんかないんだ。それ、気にしてたのか? 」
「・・・うん・・・・」
「じいさまの所為で、俺は娘に愛想を尽かされたのかと心配させられたわけだ。あのくそじじいは、ほんと、忌々しいな。」
 少しやつれたな、と真理子は気付いた。それに、いつもより弱弱しい。こんな姿は、初めてかもしれない。あの目が見えなくなった時でも、こんなに弱弱しい態度ではなかった。
「何か飲む? パパ。」
「ああ、コーヒーが飲みたい。」
「え? それはないと思うよ。」
「じゃあ、コンビ二で買って来てくれよ。金は貸しにしといて。」
 何もかも屋敷に置き去りで、財布がないのだと、リンは苦笑する。仕事のほうも、放棄させられていて、かなりまずいと漏らした。
「でもね、パパ。」
「あ、おまえも説教モードか? もう、いいよ。佐伯夫婦と小椋先生、留めに浦さんから大量にやられたから、もう勘弁してくれ。」
「そうじゃなくて、身体のことは、ちゃんと治したほうがいいと思うのよ、あたしも。パパは、ずっと無理してたんだろうし、仕事だって信じられないくらいにしてたでしょ? みやくんが心配するわ。」
 弟の看病と、仕事の両立。それを五年間、ほぼ休むことなく続けていた。それは真理子も知っている。浦上が怒鳴りながら仕事を止めていたのだって、一度や二度ではない。たぶん、相当の無理をしていたのだ。泣き虫で甘えん坊の弟は、最終的に、リンに頼る。そうなったら昼夜関係なく付き添いをしていることになっていた。それらを鑑みれば、倒れたというのは当たり前なのだ。
「大丈夫だ。鳥頭は、向こう五ヶ月は、じいさまのところでお預かりだから、戻るまでには治ってるさ。瑠璃さんも一月は戻らないはずだしな。なあ、真理子、コーヒーを頼むよ。」
 大したことはないと、リンは再度告げてくる。だが、これを信じてはいけない。いつもこうだ。リンは、いつも自分のことには無頓着で、どうなっていても変わらない。瑠璃ママは、疾うに諦めて、「倒れるまで、ほっておきなさい。」 と、苦笑するばかりで注意しなくなった。だいたい、コーヒーなんて刺激物を摂取したい、ということが、すでに間違いなのだが、当人はわからないんだろうと、真理子は大きく、これ見よがしに溜息を吐き出した。
「あのね、パパ。コーヒーは刺激物なの。内臓が弱っている人は、コーヒーも緑茶も摂取しちゃいけないの。わかる? 」
「知ってるさ。それにタバコも駄目なんだろ? さんざん、小椋先生が言ってた。」
「なら、あたしに『コーヒーを買ってこい』、なんて台詞は出てこないはずでしょ? 」
 一応、真理子も臨床検査師という医療従事者である。その自分に命じたって、認められないとわかるはずだ。だが、保護者はクスクスと笑い、「かわいい娘にお願いしてるんであって、怖い医療従事者に頼んでるつもりじゃないんだ。」 などという。
「でも、あたしが叱られるんだよ? 小椋先生に。」
「バレやしないさ。缶コーヒーでいい。それなら、おまえが飲んだって言い訳ができる。」
「身体のことを考えてないでしょ?」
「嗜好品を口にするぐらいで悪化するほど、軟じゃないよ、俺は。なあ、真理子、頼むからさ。」
結局、真理子だって、りんの言葉に弱い。拝むようにされたら、「うん」 と、頷いてしまう。コンビ二で一番小さくてミルクの多いカフェオレを手にした。それを、しばらく手にして考える。りんはブラックの人で、絶対に余計なものは入れない。たぶん、これは、りんの頼んだものではない。けれど、身体のことを考えれば、これでも駄目な範囲に属している。だが、ちらりと見えたブラックと、自分の保護者の顔を思い出して、やっぱり自分もパパには甘いのだと、それを手にした。
「おまえ、これは浦さん並みの嫌がらせか? 」
 最初にカフェオレを見せたら、ものすごくげんなりされた。次に、「これ」とブラックを差し出したら、ニヤニヤと笑いつつ起き上がった。
「やっぱりかわいい娘は、俺の好みも把握してくれてるわけだ。」
「わかってるわ、そんなこと。でも、ほんとは駄目なのよ。」
「当人がいいって言ってるからいいんだ。やれやれ、やっと旨いものにありつけた。」
 カコンと、プルトップを軽く空けて、ごくりとりんは口に含む。風邪をひいてからというもの、浦上が嫌がらせにカフェオレしか出さなかったから、長いこと好みの味に飢えていた。さすがに高熱を数日、我慢したのは辛かった。どうしても締め切りの仕事があって、無理矢理に薬局の解熱剤を使って仕事を終わらせた。終わって、それらを送信した時点で、もう意識がおかしくなっていて、そのまま執務室で倒れたらしい。我ながらよくやったと褒めてやりたいのだが、浦上と小椋は顔色を変えて、自分に怒鳴り散らしたのは言うまでもない。
「真理子、こっちの暮らしはどう? 」
「うん、楽しいかな。まだ、いろいろと覚えることとかあって大変だけどね。」
「なあ、みやが戻ったらさ。一度、みんなで旅行に行かないか? 瑠璃さんが、水野家の旅行がまだだから、ちょっと不満らしいんだ。」
 弟が全快したら、家族旅行なるものをしようと、みんなで約束した。佐伯家のほうは、弟が少しよくなった時に行ったので終わっているが、水野家のほうは、まだだった。
「うーん、有給ってないんだけど・・・・ああ、夏休みをずらして取れるから、その頃なら。」
「ちょうどいいだろう。みやが戻るのは、それぐらいのことになるだろうからな。瑠璃さんと、真理子で決めてくれ。俺は、そういうのあまり苦手で、瑠璃さんの相手にならないんだ。」
「いいよ。ママが戻ったら、それは相談するわ。やっぱり、パパは温泉とかがいいわけ? 」
「あ? 瑠璃さんが、なんか言った? 」
「うん、パパは生粋の日本人だから、温泉が好きらしいって。」
「いや、そういうわけでもないんだけど・・・・」
 瑠璃の両親から、とりあえず新婚旅行してこいと追い出された時に、りんは温泉と旨い食事があればいいと、そんな場所に滞在した。それ以外に、妻と旅行なんてしていないので、妻としては、夫は、そういうものが好きなんだろうと理解しているらしい。
作品名:りんみや あんにゅい3 作家名:篠義