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コミュお題:石鹸

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コミュお題:石鹸




石鹸を、『食べたい』と思った時期があった。

もちろん今は思っていない。
いや、もしかしたら無意識のうちに何回か思ったことはあるかもしれないが、とにかく今は無い。
しかし、あの白くてつるりとした感触や、石鹸から香る清潔感あふれるいい匂いが、
なぜか私の脳内に「食べたらおいしそう」という印象を焼き付けたようだ。

だから、一度口にしてみようとしたことがある。
もちろん、未遂だ。
私は別に変人でも常識のない人間でもなかった。
まだ小さな子供だったが、「これは食べるものではない」という事は解っていた。
それに、なんとなく「おいしくない」という事が解っていたのかもしれない。

今日、手を洗った時に思い出した昔のひっそりとした私の思い出。
そして未だ私はその石鹸を見つめている。
先ほど使ったために、ぐしょぐしょに濡れてしまっている白い石鹸。
子供のころと同じ、おいしそうな・・・

そこまで考えて、私はハッとした。
手の中にあった石鹸が、ずるりと落ちる。

歯の先に着いた泡は、とても苦くて、私は思わず顔をしかめた。
作品名:コミュお題:石鹸 作家名:渡鳥