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ユキナ・リュカ ~この世界~

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落ちた



ユキナはある日英雄に出会った。
さびれた村で。
ビクトールが声をかけてふりかえった少年は小柄で華奢な、男か女かわからないような顔をしていた。

「リュカじゃねえか、久しぶりだな。」
「ビクにフリック。・・・生きてたの。」
「なんだよ冷たいな、生きてたに決まってんだろ?」
「行方しれずって聞いたけどね。で、何をしている?ここで。」
「ん?ああ、実は今、また戦いに参加しててな。ああ、そうだ。リュカ、こっちが今の同盟軍・・・ハイランドと戦ってる、の軍主のユキナだ。ユキナ、聞いた事あると思うが、こっちはトランの英雄。リュカ・マクドールだ。」

フリックがお互いを紹介した。

「へえ、そう。よろしく。」

リュカは軽くそう挨拶した。ユキナも慌てて挨拶する。

「あ、はじめまして。」

軽く驚いていた。
リュカはどう見ても小柄な少年である。
そんな彼があの赤月帝国を?そんな驚きが顔に出ていたようである。

「信じられない?」

リュカがこてんと首をかしげて聞いてきた。
その様子はやはり一国を倒した男にはとうてい見えなかった。
どちらかといえば、はかなげな少女?

「信じられないならそれはそれでいいけどね。なんだったらここで手合わせでもしてやろうか?君の首をへし折ってみせてもいいよ?」

はかなげな様子のまま、しかし顔はニヤリとしつつリュカがさらりと言った。

「な、なんなんだよ、あんた。」

ユキナはぎょっとした。ビクトールがまぁまぁ、と言いかけたがそのままユキナが続ける。

「まぁ、確かに俺が不躾な目で見てたんかもですね。すみませんでした。」

そうしてスッと頭を下げた。その潔い様子に、リュカはおや?っという顔をする。

「でも・・・」

頭をあげたユキナがニヤリと笑ってさらに続けた。

「手合わせはかまいませんよ?なんだったら、俺があんたの首をへし折ってみせてもいい。」

周囲は青くなる。
リュカはきょとん、としたかと思うと不意におなかをかかえて笑いだした。

「あはは、うん、悪くない、悪くないよ。ねぇ、首をへし折るのは勘弁してやろう。でも、どう?」

そう言って棍をすっとユキナの方へ向けた。

「・・・いいですよ、うけましょう。」

リュカを正面からグッと見つめ、ユキナはスッと構えた。
周りではビクトールとフリックが青い顔をしているが、2人とも眼中にない様子だった。

勝敗は間もなくついた。
三年前にすでに国一つをつぶしている年上の英雄に、ついこの間までただの少年兵であった子供が勝てる訳もなく。
ただ。
リュカはこの結果に違う意味で満足していた。
ただのお飾り的な軍主かと思いきや、どうしてどうして。
確かに自分にはまだ勝てそうにはないが、きちんとついてきてはいた。
動きといい、腕といい、そしてそれらを生かす頭といい、予想をはるかに上回る出来であった。

一方でユキナは唖然としていた。
自分の腕を今まで信じていた。
実際、自分とやりあって勝てる人間なんてそうそういなかった。
それがどうだ。
いともあっけなくついた勝敗。
やはり・・・英雄は伊達ではないと言う訳か・・・。

「なかなかいい腕をしていたよ?」
「・・・どうも・・・。・・・・・・ねえ、マクドールさん?」

棍をつきつけられ、両手を挙げた後でニッコリとリュカに言われ、ユキナは憮然として礼を言った後で少し考えて呼びかけた。

「なに?」
「あの・・・一緒に戦ってもらえませんか?」
「・・・。そうだな・・・うーん・・・僕をさ、客人として迎え入れない?」
「・・・は・・・?」

相手はすでに戦争を経験した英雄、どうせ断られるだろう、と構えていたユキナは思わず脱力した。

「きゃ・・・客人?」
「うん。そう。どうせ仲間集め、やってるんでしょ?」
「はぁ・・・えっと、じゃあ仲間になってくれる、と?」
「いや?」

ニッコリとしたまま速攻で否定されて、ユキナは首をかしげる。

「仲間にはならないよ。僕は戦争自体に参加する気はない。もう十分味わったから。ただたまに協力はしよう。」
「要は仲間にはならないがたまに協力する代わりに城で養え、と?」

不躾なくらいストレートに言われ、リュカはムッとするでもなく、むしろ楽しそうに答えた。

「いや、うん、まぁそうなるのか?まあ僕はこれでも不自由はしてないよ。別に君の城に住ませてもらおうとは思ってないし。ただ、君といると楽しそうだしね。」
「人が生死をかけて戦争してる状態だってのに、楽しい?けっこうふざけた方ですね。過去に俺のような経験をされてなかったら、今すぐにでもぶん殴ってるところです。でもまあ、言いだしっぺは俺ですからね・・・分かりましたよ。こちらとしても、たまに協力していただけるだけでもありがたいですからね。じゃあ、よろしくお願いします。」

一瞬ムッとした顔をしたユキナだが、ふ、と軽いため息をついた後でこう言って自分の手をリュカに差し出した。
リュカは首をかしげた後で何も言わずにニッコリとしてその手を握り返した。

ふいにそれを見たユキナが嬉しそうに、つられたようにニッコリとする。

「って、オイ、何勝手に話進んでるんだよ。」

ずっと傍観していたフリックが突っ込んだ。
ビクトールがそれにたいし、のんきそうに答える。

「まぁ、いいじゃねぇか。確かにリュカはいい戦力になるしな。」
「そりゃそうだが。」
「決めるのは俺だよ、2人とも。俺がいいってゆったんだから、シュウさんや2人の許可はいらない。俺はマクドールさんが気に入ったよ。だからそれでいいじゃない、とゆう事で、帰ろうか。」

そう言うとユキナは、行きましょうか、マクドールさん、と声をかけてから踵をかえした。
おい、待てよ、とフリックが後に続く。