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ユキナ・リュカ ~この世界~

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守る壁



たまたまリュカが医務室でホウアンの手伝いをしていた時、ルックが移転してきた。
かなり青い顔をしているが支えている人間を見た時、リュカはびっくりした。

「ユキくん!?ルック、いったい・・・」
「ちょうど良かった。僕にはこいつを抱えてベッドに寝かせられない。頼む。」

慌ててそばに行き、ルックからユキナを受けとった。
青い顔をし、ぐったりとしたまま動かない。焦げ臭いと思って見れば、左手の手袋がなく、手のやけどがひどそうだった。
とりあえず何も言わずに急いでベッドに寝かせる。
ホウアンとトウタが色々な医療器具などを用意してベッドの周りのカーテンを閉めてしまった。

「ルック・・・とりあえず君も具合が悪そうだ。見てもらったほうが・・・」
「僕はいい。しばらく休んで魔力が回復したら自分で治す。」
「いったい何があったの?あ、具合悪いのに話すのはキツイね、ごめん、いい。」
「いや・・・ああ、まあそうだね・・・ちょっと先に休ませてもらう。」

そう言うとルックも自ら空いているベッドへ移動し、横になった。


心配そうにしながらも無理強いはせず、リュカはとりあえずユキナの介抱をホウアンに任せて自分はその他にやってきた自分でも対処できそうな患者の面倒を見ていた。
しばらくのち、ようやく起き上がったルックは改めて目を瞑って自分の魔力の状態を確認していたようで、次の瞬間には呪文をとなえて、癒しの風で自分の体力をもどしていた。

「ルック、もう大丈夫なのか?」
「まあね・・・僕は大したことなかったから。」
「ユキくんはいったい・・・?」
「ああ。」

ルックが教えてくれた。


「だめだ。俺は、引かない。」

ルックは怒りが湧き上がってきた。
こいつ、何をいってるんだ!?状況、分かってるのか!?
にらんだが相手はこんな状況だというのに、またそのにらみに対して、笑みを浮かべて見返してきた。

「あんた、何言ってんのさ!?今の状況、分かってる?そんな事、言ってる場合じゃないだろ!?」

彼らは今、絶体絶命のピンチに出くわしていた。
たまたま危険はないと思われた場所に交易に行っていた為、メンバーはあまり先鋭ではなかった。
その帰り、まさかの状況だった。
誰もいないような草原に、どこからか(多分トランあたり?)移動してきたのか、盗賊団に出くわしたのである。
どうやらかなり腕の立つ輩な上、そうとうの悪党だったようで、ユキナとルック以外のメンバーは皆倒れてしまった。
向こうは相当な数がいており、あきらかに人数的に不利・・・、ここは撤退しか考えられなかった。
だというのに、ユキナは首を縦にふらない。

「もちろん、状況は嫌ってほど、分かってる。」

戦いで傷ついたのか、口から出ていた血をぬぐいつつ、それでも笑みを浮かべながらユキナは言った。

「だったら・・・」
「ルック。俺は、俺一人、もしくはお前だけくらいなら抱えてでも簡単に逃げおおせるよ。」

その時、ぱりぱり・・・と周囲に電気の音とイオンの匂いが満ちてきた。
盗賊達はそれにまったく気づく様子もなく、距離を縮めて来ていた。

「だが・・・今は・・・違うだろ?」

不敵に笑い、そう言ったユキナは左手を横にすっと伸ばした。
左手につけた雷の紋章を使っているのだろうに、なぜかユキナの右手までもが呼応するように光り出した。

「俺の背後には・・・」

バリバリッ、ドォン・・・ッ!!!
雷の雨が降った、いや、そういう風に見えた。
あたりに何か肉の焼け焦げる匂いがただよう。
ルックは何も言わず、さっと風を呼び、匂いを払った。
それでもまだ何か焦げたような匂いがした。
見るとユキナの左手は焼け焦げたようになっていた。

「ちょ・・・」

手袋はもちろん墨となり、あとかたもない。ルックは手をとってみると、焼け焦げたのはその手袋のようではあったが、手のやけどがかなりひどかった。
ユキナのいる下で何か光ったような気がし、ふと見ると、彼の足元でガラスの破片のような何かがキラキラと光っていた。

「・・・雷の・・・紋章が・・・」

恐らく雷の紋章で使える力以上の力を使ってしまったために壊れてしまったのであろうが、とうてい普通では考えられない事であった。

「ルック。悪いけど・・・皆の回復を・・・頼、む・・・。」

ユキナはそう言うと、がくり、と崩れるように、座りこむようにして気を失った。
ルックは舌打ちしてから周りで倒れているヤツらの回復を行った。
まったく・・・無茶だ。

・・・でも。

ため息をついてから、もう一度ユキナのところまで来て回復の呪文を唱える。
もちろん、あれほどの力を放出したのである、それも怪我をしながら。
今のルックに出来るのはせいぜい手のやけどを少しでもマシにするくらいであった。
あのすさまじい力を使っても手のやけどで逆に済んだのは、多分あの時光っていた、右手の紋章のおかげであろう。
とりあえず皆を移動させるほどの魔力も残っていないため、ユキナの荷物からまたたきの鏡を出し、仲間の一人に手渡した。これでなんとか鏡が使えるところまで移動し、全員城へ戻ってもらう。
それからまだ目が覚めないユキナを抱えて、ルックは残りの魔力を総動員させ、移動魔法を使ってこの医務室に来たということであった。

「そんな・・・事が・・・」
「まったくこのバカにはほんと参るね・・・」

そう言いつつも、ルックの口調にはいつもの毒がなかった。
口には出さないが、ユキナの事を認めているのであろう。

「じゃあ僕はもう行くよ。」
「え、ルック、君はもう大丈夫なのか?」
「ああ。もう問題ない。君はあのバカの看病でもしててやりなよ。」

ルックはそう言うと、さっと杖を振って消えてしまった。

リュカはユキナの眠っているベッドへ行った。
ホウアンはとりあえずもう大丈夫だと言っている。しばらく眠っていたらいずれ目が覚めるだろう、と。

「ホウアン先生、トウタくん、お疲れ様。後は僕が看病しておくから、休憩、してきて下さい。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか。」

そう言って、ホウアンとトウタは医務室から出て行った。多分お茶でも飲みにいったのであろう。
リュカは眠っているユキナを見た。
まだ幼さの残る、だが端正な顔。今は治療がほどこされた後なので、上着を脱がされた状態でいたるところに痛々しそうに包帯やガーゼが貼られている。
だが先ほどよりも顔色が良くなっているのを見て、リュカはホッとした。

「・・・まったく・・・君って人は・・・」

そう言いながらも優しい眼差しでリュカは見下ろした。

「・・・お疲れ様・・・。」

そっとそうつぶやくと、ユキナの額にかかる髪をそっとなでるようにすいた。