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犬のお巡りさんを壮大にしてみた

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第二章 山の向こう側 〜Out Side.


この町、『アンデベル』という町は東側の方角に大きな山脈がある。
西側には空軍基地があり、それを越えた先には隣町の『ロンタノ』がある。
北側のすぐ傍には未開拓の樹海があり、南側には隣国、『グロウフ』を繋ぐ唯一の大陸間高速道路があるだけだった。
『グロウフ』はこの国きっての大都市だ。技術力、人口など共にアンデベルを凌駕している。

名物は一切無いが、あるとすれば年に一回町で盛大に開かれる収穫祭だけだ。
この収穫祭が開かれる時だけ『ロンタノ』、『グロウフ』の二つの国から出荷組合が来て様々な機材を持ち込んでくれる。
持ち込まれた機材の中には花火や大型のサーチライトなど収穫祭に必要な物品が次々と送られて来る。

収穫祭の時は町が一番盛り上がる時で、もちろんその時も俺たち保安官は町の安全を守らなければならない。
そりゃ、収穫祭のドサクサに紛れてよからぬ事をしでかそうとする輩もいない訳ではないので、そのような事態に対処できるように町中をパトロールしなければならないということだ。
パトロールの途中、そこかしこからバーベキューの香りがする。多分この時の『これ』が俺の原動力だと思う。
収穫祭以外にもクリスマスやハロウィンなどもしたりする。だが、どちらも収穫祭には敵わない。
これほど大規模な収穫祭はこの『アンデベル』だけだ。

元々『アンデベル』は空軍基地の兵士たちの居住区だったのだが。
地味な発展を繰り返した末にこの町が出来上がった。
その名残として、この町の至る所には兵士たちが刻んだ空軍のマークがあるのだが。
これを探してみるのも良いかもしれない。



今回の問題はだ・・・・・
この『アンデベル』の東側に位置する山脈の先の事だ。
実はこの山脈の先は地元に住んでる人たちですら分からない。
分からないんじゃない、行けないんだ。
詳しくは登山経験のある人たちにしか知らないことだったので、山脈を登ったという登山客に聞いてみたところ「山自体は上れるのだが、その後に山頂に近づこうとすると急に頭に激痛が来てやむ終えずに下山しなければならない」という。
しかもその激痛で死者が出たほどだ。
恐ろしいことに、ヘリで越えようとすると謎の突風で制御不能になり墜落、さらには戦闘機で通過しようとするとレーダー機器、GPS、さらにはコントロール装置もショートしてしまう。
だから、この山脈は長年誰も上っていないのだ。
上れるはずのない山は、この町のすぐ近くに聳え立っていた。
まるで、侵入者を拒む鉄壁の要塞のように。
しかしながらこれは要塞かどうかも理解できない代物だった。
誰もが一度は越えようと期待されている山は謎の超常現象によってその願いは撃ち砕かれる。

そうシェパードが考えにふけていると、突然何か思いついた。

「・・・・・・・・・・・監視衛星だ・・・!そうだ!監視衛星だ!」

突如、シェパードが大声を出したのでソファーでボーっとしていた少女が体を、
ビクッ
と震わせ、心配な目で睨んできた。

「いくら、山を越えようとして戦闘機やヘリを送り込んでも電子機器がオシャカになる。だが、この地球を回っている軍の監視衛星までは電子妨害できない!ただでさえ衛星地図と言うものがあるんだ、絶対に載ってる筈だ!」

そう言い、自分のデスクに置いてあるパソコンの電源をカチッと押した。
初心者がピアノを弾くような不器用さでパソコンのキーボードを打つ。
ページが開き衛星地図が表示される。
アンデベルの東側の山の向こうへスクロールし、その謎が明かされると期待したが。
結果は凄まじいものだった。

「・・・・なんなんだ?これは?・・・・地図が切り取られて真っ白になってる・・・」

山までは写ったのは良いのだが、その後の部分が綺麗に山を沿うように切り取られていた。
普通では考えられないような事態にシェパードは混乱しそうになった。
なぜならこの衛星地図のサイトは企業運営のものではなく、政府が運営しているからだった。
しかも自分は一応空軍に所属していた身だ。
町の周りの事情は完璧に理解しているつもりだった。
山の向こう側は『平原』と教えられていたし、特に何の変哲もない土地だったとも聞かされていた。
だがよく考えてみれば、いつもそれを言っていたのは隊長でもなく上層部の連中でもなかった。
確か、そいつらは・・・

「オフィシャルズ・・・・」

そう呼ばれていた。
いつもいつも任務のブリーフィングの際、必ずといって良い程彼らは自分たちと同じ席に座っていた。
ガチガチのスーツで黒いサングラスで目立っていたからよく覚えている。
ブリーフィングの途中からは彼らの独壇場で、『不可侵領域』や『所持品』のことまで演説ををはじめる。
そういえば・・・
不可侵領域だけいつもこの山の事を話していた。

「「ここは作戦地域外だから行くな」」

今思えば、なぜ念を押すようにそのことばかり注意するのか分からなかったが今はもうわかる。
そうだ。
ここは政府関係者が関与しているんだ。
かなり手荒な方法でだ。