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我らアスター街17番地区ストレングス部隊

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特徴がないことが特徴という、のどかな街アスター。
 ちょうど午後の間延びする時間帯、行き交う馬車の速度も遅い通りを、三人の若者が歩いていた。揃いの黒い隊服に輝く、獅子のレリーフのついた金ボタン。街の治安を守るストレングス
部隊の面々だ。
「ねえねえ! こんなの拾った」
 声をあげたのは三人のうちで一番年下のサイラスだった。男の割りにほっそりした手に、小さな紫の宝石が散りばめられた幅広の指輪が乗っている。
 唯一の女性隊員、ファーラがおもしろそうに覗き込んでくる。その拍子に腰まである赤い髪がサラリと揺れた。
「あら、結構高価そうな物ですわね。女性の親指用ですわ」
「へえ。あ、ほら、僕の中指にぴったり〜」
 サイラスがふざける。
「とりあえず、隊で預かっとくか」
 言ったのは隊長のアシェルだ。
 ストレングス部隊では拾得物の管理もしている。この指輪、結構高価そうだ。すぐ落とし主が現われるだろう。
「「え、売らないの?」」
 サイラスとファーラ、二人の応えが重なった。
「……。おい、お前ら自分達の職業、自覚してるか?」
「え? 街の便利屋さん」
「たまに命張ってる割には安月給の割りに合わない損な役回り、ですわ」
「当たらずしも遠からずな所が悲しいな。しかし、売るとしたら、こいつと話し合いをしないと」
 アシェルはサイラスの頭の上を指差した。
 ファーラがその方向を見上げ、「あら」と呟く。
 そこには、半透明の女性が浮かんでいた。
「憑いてますわ。その指輪」
 サイラスが必死に指輪を抜こうとする。
「ああ! 取れない! 取れないい!」
 古風な服を着た、長い金髪の美女は、サイラスを見下ろした。
「あら。おかしいと思ったら、誰か、私の指輪をはめたのね」
「なんで? なんで僕ばっかり運が悪いのぉ!」
 サイラスの悲鳴は、とり憑いた幽霊自身が気の毒に思うほど感情がこもっていた。

「私、サシクといいます。生前は無名の画家でした」
 アシェルは隊の詰所でイスに腰かけ、女の訴えを聞いていた。
「画力はあったと思うんですけど…… 世間に認められなかったのが悔しくて悔しくて」
「なるほど。それで化けて出たのか。で、俺達にどうして欲しいんだ? まさか、自分の絵を有名にして欲しいとか?」