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サイコシリアル【5】

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「こ、ここ・・・・・・九紫?」
 「はい、私ですよ。不法侵入の涙雫先輩には後で詳しく説明しますよ。それよりも今は━━兄の方が問題なんですから」
 九紫は、そう言って兄、九紫戌亥の方へと歩み寄って行った。
 その途中、自らの父の死体を捉え悲痛な表情を浮かべたが、すぐに九紫戌亥へと向き直った。
 「お兄ちゃん、こんなことして何になるの?」
九紫は言った。
「こんなこと? 馬鹿言うんじゃねー。一族が、俺達が、何よりもお前達が騙されていたといのに黙って指くわえて見てろってのか?」
「確かに一族は騙されていた。政府に管理されて、いいように使われていた。
けど、お父さんを殺して・・・・・・馬鹿を通り越してるよ!」
九紫は、その言葉を口切り、泣き出した。
ゆっくりと、こちらに迎いながら泣き出した。
「賽ノ目さんに頼んでまで、私の死体を……偽体を作って何がしたいの。それを『妹達の為』なんて言わないで。それで悪役を演じて、自分一人で罪を被ろうとでもしてたの? 一族を壊して、私達を解放してあげようとでも思ったの? 妹の為、妹の為って・・・・・・だったら何で。何で、その妹が泣いてるのよ!」
九紫が九紫戌亥に掴みかかった。九紫戌亥の体を揺さぶる様に。
さながら、だだを捏ねる子供のように。
いや、子供のようにという表現は間違っているか。 九紫は、殺し屋である前に少女で、少女である前に妹なのだ。
掴みかかられた九紫戌亥と言えば無抵抗で、成すがままに揺さぶられていた。
それにしても、偽体とは何のことを言ってるのだろう。端的に考えてしまえば、あれは九紫ではなかったということになるのだが。
しかし、今はこの兄弟のやり取りに口を挟むべきではない。
語り部に徹するだけだ。
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし