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扉のむこうの、あなたは、だあれ?

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後編


 何かが居る気配はする。足代 が試しにこちらから1つ、ノックすると・・・。

 ・・・・・・・・・・・・とん。

ちゃんとノック1つが返ってきた。2つノックすれば2つ。足代は咳払いして、扉
に向かって、言った。
「ええーと、幽霊サン? 質問しても大丈夫…ですかぁ?」
他の3人は皆ハラホロヒレハレ状態である。ところがノックは律儀に返ってきた。
ガチョーンである。

 最初は薄気味悪がっていた仲間も興味本意でいろいろ質問し始めた。イエスなら
ノックを1回、ノーなら2回、てな具合に。
「ねね、幽霊サン、歳はいくつ?」
やせぎすがまたノックをして尋ねる。

とんとんとんとん・・・きっちり、15回。

 他称「幽霊」さんは、幽霊ちゃんらしい。15歳の女子高生で小柄で長髪。性格
は明るい方ときたもんだ。アイドル研の面目躍如、好きなアイドル歌手の名前も
聞いたがこれは分からなかった。フナキカズオって誰だ?
自分の名前や家族関係の事にはノックの返事がなかった。「自分を知ってほしい、
でも立ち入った話をされるのはイヤ。」そんな感じだ。幽霊の正体見たり。誰もが
扉の陰に人見知りな女の子がいることを疑わなかった。

…だけど。
小太りが、冗談半分に、聞いてしまった。

「――それじゃ、君が、本当に幽霊で、『殺された』んなら、1,000回戸を叩いて
くれるかい?」

 そう聞いた途端! 
 
どん!

どん!どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんっ!!

どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどおおどどどどっっっっ

どだだだだだだだっだだだだっだだだっだだだだだっっだだだだだっだっっ!!!

だんっ! だんっ! だんっ!だんっ!だっだだだだだだだっだっだっっだだっ

だっだっだああっっん!!!!


 部屋中に響き渡る激しい叩きつける音に皆声も出せなかった。彼等は、聞いては
いけないことを聞いてしまったんだ。裏切り、悲しみ、怒り、絶望…。呪詛のごと
く打ち鳴らされる、果てしない負の旋律。これが少女の手によるものなら、とうに
手の皮や肉は裂け、血は跳ね骨さえ砕けるだろう。それでもその現象は止まなかっ
た。

 だんっ!
だんっ! だんっだんっ! だっだだだだっ、だっだっだああっっん!
どがっ、どがっっ! どがっっっ!!

旧式のプレハブは部屋ごと揺れ、扉は鍵をつけたまま内側に押し出されてきてい
る。
「ちいいくしょおおお〜〜っっ!」
足代はたまらず扉に駆け寄り、皆の止めるのも聞かずにカギを開ける。
「やいやい、誰だかわかんねえけど、言いたいことがあるんなら出て来い! こっ
ちは逃げも隠れもしねえぜ、全部受け止めてやらあ!」

バンっ!
そして、一気に扉を開け放った。

 ――その時、やっと気付いたんだ。

扉のむこうは、何も『ない』。反対側の非常階段は壊され、がらんとした空き地が
見渡せる空間があるだけだと!

勢いがついて2階のそこから落ちそうになるのを踏み止まり、彼は、呆然と何もな
い場所を見つめ続けた・・・・・・。


                               ・・・続く。