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なつきすい
なつきすい
novelistID. 23066
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閉じられた世界の片隅から(4・完結編)

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「一、二の三で振り返って、銃を構えてたら防壁張るから私から離れないで」
「了解。じゃ、違ったらフィズは真っ直ぐ。僕は後ろに回って馬車壊してくるよ」
「ん」
 短い返事。頷いたのを確認して、僕は数えた。重たいふたり分の荷物を、地面に置いて。
「一、二の、三」
 振り返る。思ったほど人数は多くない。まあ多かったところで有利になるというものでもあまりない気もする。その場合一網打尽にされたら終わりだし、そういう大雑把で大掛かりな作戦は、フィズの最も得意とするところだ。むしろ人数が少なくてばらけられたほうが面倒くさい。距離はまだある。十人ちょっとか。荷馬車は二台。正直言って、いきなり街を一個吹っ飛ばしてしまうようなレベルのとんでもない大技をかまされでもしない限り、負ける気はしていなかった。あるいは、街の人のような顔をして寄ってきていきなり刺されるとか、食べ物に毒を混ぜられでもしなければ、正面きって向かってきた相手であればまわりの被害さえ気にしなくて良ければ確実に勝てるという自信と、その根拠となる実力がフィズにはある。たとえ相手が何人いようと、どんな武器を持っていようと。人数が多い方が虚を突かれにくい分有利だと思えるほど。本人は一個小隊の間違いだと言うけれども、一個師団と喧嘩したとかいう噂は伊達ではない。
 だけど。
 血の気がさあと引いていく。僕らが彼に負わせた重い重い、取り返しのつかない怪我。片腕となり、足を引き摺ったあの男が、そこにいた。
 まるで、死人のような顔をして。笑って。
 雨音が、近づいてくる。