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なつきすい
なつきすい
novelistID. 23066
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閉じられた世界の片隅から(2)

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 この人に、生半可な嘘は通用しない。問い詰められたら隠し通すことはできないけれど、白状するわけにもいかない。考えてみれば認められるわけがないだろう。血が繋がってないとはいえ、フィズは僕の姉なのだから。そのことを意識すると、途端に気が重くなった。
 どうやって誤魔化したものだろう。必死で頭を回そうとして焦れば焦るほど、逆に頭の回転は目に見えて落ちていく。
 しかし、僕の困惑をよそに、じーちゃんは表情を緩めた。
「まあイエスかノーかを無理やり言わせるなんて、そんな野暮な真似はしないよ」
「え?」
 思いのほかあっさりと引いてくれて、僕は思わず拍子抜けした。咎めるつもりはないようだった。
「あの面倒がりで、大変そうなことからは直ぐ手を引いていて、いつもフィズラクの後ろにいたサザが、帰ってきたら随分雰囲気が変わっていたんで、驚いたよ。こんなに急に変われるだけ、大切なんだろう? 良いことだよ。でもねえ」
 やはり咎められるのか、そう思って身構えた僕を待っていたのは、予想外の言葉だった。
「フィズラクを任せるには、まだ少し足りないな。サザもスゥファも俺の可愛い孫だけど、フィズラクだってそうだからねえ。お前たち三人には、やっぱりじいちゃんとしては誰よりも幸せになってほしいと思ってるよ」
 全部見抜かれていて、それなのに、否定されなかった。それに驚いて、安心して、僕は何も返せなかった。
「だから、もう少し大きくなって、フィズラクに見合う男になればいい」
 そして、安心しろ、カラクラには黙ってるから、と付け加えてくれた。
 僕は答えないけれど、それが肯定の返事のようなものだった。
 そしてほんの数時間でこれだけのことを見抜いて、しかも完璧な配慮をしてみせるじーちゃんが、一体これまでどんな年月を過ごしてきたのか。それがとても知りたかったけれど、僕にそれを知る術はなかった。ましてや、その表情の意味を読み解くことなど。
「おやすみなさい。灯り消してもいい?」
「ああ、おやすみ。じゃあ俺が消しておくよ」
 じーちゃんの言葉とほぼ同時に、ランプの火が消える。あたりがすっと真っ暗になった。明日は早い。それなのに、いろいろなことが気になって、なかなか寝付けそうになかった。じくじくと痛む口内炎みたいに。