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最強の足跡

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「好きにしろ。俺が自ら手に掛けるほどの大物では無い。貴様と違って俺は大物専門なんだよ、沖田。」
軽く言い合う二人に割って入るのは、山南である。
「そして私は変態二人の尻拭いと葬式の幹事をすると…。」
『山南ぃ…切腹と闇討ち、もしくは八つ裂きか、好きなの選べ!』
沖田と斉藤の声が重なる。無言の原田が口を開いた。
「そこらへん、うるさいよ?俺を怒らしたら…わかるだろ?」
しかし、誰も聞いていなかった。伊藤が唐突に口を開いた。
「近藤さん、もうすこし泳がせていい。どうせ、小物ばかりが被害にあっているだけだ。松平さんになんか言われたら考えればいい。」
「伊藤の意見に俺も賛同する。近藤さん、いいだろ?」
土方が呼応する。結局はまだセイヤを斬らず、セイヤを見たら逃げるように方針を決め、似顔絵を使って仁商連のメンバーに伝えた。

セイヤはまだこんな風に狙われ、警戒されていることを知らない。今日も強奪をしていた芹沢を捕まえて、役所に突き出してきたところだ。謝礼金は日本円にして合計一千万円にもなる。一年の稼ぎとしては実に大きな数字だ。生活にゆとりができたセイヤはヤヘイにある闘技場に赴いた。道場ではわからない広い世界を知るためだ。一回戦、二回戦をサクサク勝ち抜き、参加費一万円を取り戻した。参加費一万円で一勝につき五千円が支払われる。だがいずれもかなりの手練れが相手なのだ。次なる相手はなんと、女流剣士である。
「さて、次の挑戦は闘技場の主、レナの登場。レナは闘技場史上最多の216連勝中。対するチャレンジャーはセイヤ。どのような戦いになるのか?」
退屈な実況に合わせて、レナが現れた。セイヤと対峙してしばらく時間が流れた。セイヤの力はレナにはそれなりに映るようだ。
レナはなかなか動かない。
セイヤもまた動かない。
先に動いたのはレナだった。
剣を振り下ろすと衝撃波が現れた。セイヤは初めて見る現象だ。投げつけられたと考えれば良さそうだ。
ならば素早くよければよい。
セイヤは見知らぬ攻撃を凌いだが破り方はおろか、どんな技術なのかも知らない。
セイヤにはいささか不利だ。
ゆっくり間合いを詰めるがレナは素早く距離を取る。
これはおそらく接近戦を嫌っているのだろう。
レナはその証拠に足を前に出すと緊張の糸を張られたように間合いを取る。
こちらが一気にかかるところにカウンターで衝撃波をピシャリとするのが狙いだろう。
セイヤはその裏をかくなら、正面から衝撃波を打ち破るのが吉とし、突進した。
案の定衝撃波がセイヤに浴びせられる。
セイヤは飛び上がってかわし、空中からレナを捕らえた。
面の位置に寸止め、これで充分だった。
闘技場での遊戯を勝ち越したセイヤは宛ても無く旅を続けた。最近は顔を知られたせいか悪党を見かけても逃げてしまう。やはり仁商連らしき家紋をつけている。こののちセイヤは仁商連に果敢に立ち向かうことになる。

 ところ変わってセイヤに敗れたレナは闘技場を去り、武者修行を敢行した。接近戦が苦手という意識を払拭するためである。衝撃波の使用を独自に禁じ手とし、様々な武器を使う戦士をたたき伏せていった。いくら勝利を重ねてもセイヤの顔が頭をかすめていく。唯一自分を破った男である。セイヤに勝つにはあとどれほどの修行をすればいいのか?
いや、修行に限りなどあるわけも無いが今すぐセイヤに追いつき、追い越したい。衝撃波を華麗な空中殺法でかわし、
流れるように木刀を自分の目の前に突きつけた姿は見事という他に無い。
世界を巡り巡って、またヤヘイ闘技場に戻ってきてしまった。この間にセイヤに追いついただろうか?今まで誰にも真似できない、代々伝わる衝撃波を使っての勝負ではなく、あくまでも接近戦による勝利を重ねていった。中でも、相手の剣を何度もつついて砕いてしまう技などはこれまでの訓練の賜物であろう。レナはこのあとさらに技を高めて、再びセイヤの前に現れることになる。

「局長、やはり例の男は我々の同胞を次々に捕らえては役所に突き出している。やはり、危険因子として、討ち果たすべきだ。」


土方がかなり強い口調で近藤に言う。これに対し、近藤は手練れを向かわせて暗殺する方針を提示した。原田を呼びつけて言い放った。
「原田。貴様の槍裁きでセイヤという男を討て。必要ならば兵も貸す。」
原田は無表情で返答する。
「無用。我一人で討ち果たしてごらんに入れよう。」
仁商連では一番格下の十番隊だが隊長の実力は実に高い。仁商連が有する最強戦力がついにセイヤを狙い始めた。さらに近藤の号令の下、仁商連全勢力がセイヤを狙う。

さて、そのセイヤは久しぶりに立ち向かってくる悪党を役所に突き出した。
「我こそは仁商連が情報部の責任者、山崎である。貴様を討てという上からの命令だ。覚悟しろ。」
鋭い剣筋はセイヤの紙一重をかすめる。いや、セイヤが完全な見切りをしているのだ。
腹部に拳をめり込ませて山崎を気絶させれば終了。手配書には『スパイの山崎』と書かれている。たしかに実力はあるがセイヤの敵ではなかった。さらにセイヤは仁商連を名乗る剣客を次々と撃破し続けた。
ある日、セイヤの前に一人の女流剣士が現れた。レナである。
「あなたを探していた。あなたを倒します。命までは取らないから安心してください…っ」
言葉の途中にも剣を振り、たった一振りで無数の衝撃波を打ち出した。
今度は飛んでもかわしきれないし、レナには隙ができていない。
セイヤはここぞとばかりに新技を使った。
体中を使い、剣を一回転すると、空気の刃が360度を飛んでいく。
無数の衝撃波を次々に吹き飛ばしてレナを狙う。
だがレナは身を低くしてやりすごす。
素早くそのままセイヤに突っ込む。
セイヤは初めて余裕の無い勝負を経験した。
猛烈な剣さばきでセイヤを押している。
しのぐセイヤ。なんとかレナの剣筋は見えている。
レナの猛襲にほころびができた。
逃がさない!セイヤの木刀はすでに鰹節のようにボコボコだがレナの腹部にあてられた。
余裕がないとはいえ、女性の腹部を攻撃するのは男としてはいかがなものか?レナはゆっくり起き上がり、キッとセイヤを見据える。
「一応私もレディなんですよ?女の子のお腹…私のお腹は壊れたでしょうね。きっと子供が産めなくなっちゃった。お嫁にいけません。あなたのせいです。責任取ってください。」
やはり言われた。セイヤは困りながらも、
「いや、君が手加減できないくらい強くて、どうしようもなくて…」
レナは言葉をさえぎった。


「私を引き取ってください。いつか倒します。あなたを毎日24時間監視して弱点を捜しますから。」
セイヤはひたすら困り果てた。
「引き取るって…つまり…け…け…けっ…」
「そ〜です!責任取って私を嫁にするの!私より強いから条件もクリア。めでたしめでたし!」
セイヤにとってはどっちもどっちだが、一緒に旅をするには充分に強いのでそばに置いた。
突然殺気が現れた。
狙いはセイヤの後頭部!
レナがとっさにセイヤの後頭部に剣をかざし、攻撃をさえぎった。
「誰っ!?」
「我が名は原田。貴様に暗殺命令は無い。消えろ。」
原田の攻撃がさばかれたため、原田は距離をあけた。これに対し、レナが対峙した。
作品名:最強の足跡 作家名:peacementhol