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篠原 求婚1.5

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「科局の秘蔵っ子」と「物理の申し子」という、とんでもない才能の持ち主の後ろをつ

いて歩く。だが、話していることは、ただの世間話だから、誰も、そんな才能溢れている

とは思わないだろう。
「ニンジンを、さ。バターと砂糖で・・・それで、レンジして・・」
「ニンジン? そりゃ、ジャガイモとか・・・ああ、でも、塩でバターか・・・」
 どう聞いていても、料理の話だ。ふたりとも料理ができるらしく、話していることも、

そういう話題が多い。どちらも、楽しそうに、メニューの話をはしているが、途中で、「

粉砂糖」とか「粉塵爆発」とか、違った単語に変わってきた。
「・・・株式市場はよくないよ・・・ハッキングは犯罪じゃなかったっけ? 」
「俺が、そんなトンマだって? あんなもの、セキュリティーホールだらけだぞ。・・・

だいたい、あそこの管理は杜撰すぎるんだ・・・」
「麟さん、それだけじゃないだろ? 北米のマザーだって・・・・」
「それ、知ってるってことは、おまえ・・・・うちのマザーに・・・あれのやり方を開発

したのだって、おまえじゃないか・・・」
 何となく、話が怖い方向に向かったような気がした。もしかして、この人たちは、人に

知られないところで、とんでもないことをしているのではないだろうか・・・・。
「なんでも僕のせいにして・・・・あんなの、麟さんだって、ちゃらちゃらだろ? 衛星

の角度変えるより簡単だ。」
「ああ、・・・・を脅しに落下させてやれば・・・・大惨事? バカ、ピンポイント指定

するさ・・」
「そんな手間かけなくても・・・ほら・・・え?・・ああ、それ、使ったから・・・清水

さんにバレちゃった・・・ごめんごめん・・・」
 そして、不意に、ふたりの足が止まった。くるりと振り返って、「細野、クレープでも

食べない? 」 と、篠原さんが尋ねる。
「へ? 」
「ちょっと議論が白熱してのどが渇いたんだ。」
「ぎろん? 」
 あれのどこが議論なんだろう。延々と犯罪経歴を聞いていたような気がする。さすが、

テロリストとは口が裂けても言えないが。実は、このふたり、破壊工作をやらかして、テ

ロリストと呼ばれたことがあるるのだ。特に、穏和なほうの僕の直属の上司が。
「仮想敵国に対する防衛を論じていただけさ。なあ? 若旦那。」
「うん、ただの空想だから。そこの公園で休憩しよう。」
 ふたりして、ニヤリと笑って、また歩き出した。別に急ぐ用事ではない。近くのコンビ

ニまで、ひとっ走りしてこいと、追い出された。戻ったら、ふたりとも無言で違う方向を

眺めていた。



 公園のベンチに並んで座った。ふう、と、息を吐き出したら、「無理するなよ。」 と

、叱られた。
「いきなり? 」
「おまえが、どうにかなるとな、とんでもないことが起こる。だから、無理に動くな。」
「ああ、あれ? あれは、僕じゃない。」
「わかってる。だから、ああいうことになるから、おまえはのほほんと放蕩若旦那でいて

くれ。」
 麟さんが、「殺したかと思った。」 と、苦笑するのは、僕が倒れた原因になった会議

の首謀者の、その後だ。すぐに、献金問題とか密談疑惑とかが取りざたされて、姿を消し

た。それだけではない。過去からの悪事のほとんどが、マスコミにリークされたから、刑

事も民事も大忙しになるだろう。あれから、表舞台にはあがってこない。それを、やった

であろう人間は、僕の後見人だ。本当は、消したかったらしいが、それでは、こちらにも

目が向けられてしまうと断念したらしい。
「しばらくは、のほほんとしているよ。無理が利かないんだ。」
「右手か? 」
「そっちは、リハビリで、どうにかなってる。基礎体力。」
「ああ、そりゃ、三ヶ月もベッドに沈めばないだろう。歩け。そして、うちのお袋の漢方

薬をのむんだな。」
 ははははは、と、おかしそうに大笑いして、麟さんは、黙り込んだ。そして、「おかえ

り。」 と、ぽつりと呟いた。
「今日は、無口じゃないんだね? 雄弁すぎて怖いな。」
「うるさいよ。」
「うん」
「もう黙ってろ。」
「はいはい。」
 そっぽを向いてしまった親友は、照れたらしかった。




 江河教授に挨拶して、麟さんを、そこへ貸し出すことになった。
「いいのかい? いきなり、これを借り出して。」
「ああ、いいんです。その代わり、僕が向こうへ出ますから。」
 教授は、申し訳なさそうだったが、それでもうれしそうだった。僕が手伝うよりは、息

子のほうがいいに決まっている。
「ごめんなさいね、篠原君。とりあえず、きみには、これをプレゼントよ。」
 教授の奥さんが、僕に紙袋を、ひとつくれた。そこにあるのは、漢方薬で、東洋医学の

専門である奥さんは、滋養関係のものを用意してくれたらしい。
「すいません。」
「いいのよ。麟と友達をしてくれるなんて、本当に人間ができてると思うわよ。こんな愛

想のないのより篠原君のほうが可愛いしねぇ。」
 息子の麟さんと同い年ということで、江河夫妻は、僕のことも可愛がってくれる。仕事

のことで、揉めていた時は、いっそ、こちらの研究所に移ればどうか? と、薦めてくれ

たほどだった。
「当たり前だろ。こいつ、どこのプロジェクトで仕事してもアイドルなんだからさ。」
「アイドル? また、そういうことを・・・麟さんなんか、モテモテのくせしてさ。」
「うっとおしいんだぞ、あれはあれで。とにかく、うちの両親に拉致されないうちに帰れ

。」
「あれは冗談だよ。」
 職場で大袈裟に言っただけで、本当ではない。手伝いの打診はされていた、という程度

だった。
「拉致はしないが、よければ学会には聴講に来て欲しいね、篠原君。きみにも興味深い話

があるんだ。」
「はいはい、親父はいいから、仕事しろ。それから、お袋は帰れ。」
 教授が、手にした資料を僕に手渡そうとしたら、麟さんが慌てて止めた。
「麟、それはあんまりじゃないか? 」
「篠原は、今日から職場復帰したばかりだから、仕事の話は無理だ。」
「ああ、そういうことなの? じゃあ、私と少しデートしましょうね、篠原君。うちのバ

カ息子は甘いものがダメなの。」
「いいですよ。少しぐらいなら。」
「こらっっ、すぐに帰れよっっ、若旦那。」
「麟さんも行く? 」
 麟さんは、甘いものが苦手だ。さらに、会話も好きではない。だから、僕の提案に眉間

に皺を寄せて黙った。
「じゃあ、私も休憩に行こうかな。おまえ、ここを仕切れるだろ? 」
 教授まで、そう言って、書類を手にして、僕らの元へやってきた。以前に聞いたが、ど

んな議論でも容赦なく論破してしまう麟さんが、言いくるめられるのが、教授たちは楽し

いのだそうだ。それも、そのほとんどが、僕に関することなのだという。


 アカデミー内のカフェテリアへ、細野も連れて移動した。席についたら、いきなり、夫

妻が噴出した。
「はははは・・・あの顔。」
「久しぶりに勝ったわっっっ。ほほほほ。」
「すいません、できれば、穏便に。」
 楽しそうに思い出し笑いをしている夫妻に、僕は慌てる。このままだと、また、麟さん
作品名:篠原 求婚1.5 作家名:篠義