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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
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偽善者賛歌04「遊離」

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倉敷を見て橋田はうげっと声を上げた。いや、自分が殺したのだが。さしてバラバラ死体にしたのは自分であり、それは倉敷のせいではあることは間違いのない事実であり、しかしそれをどうだかこうだかああだかそうだかうんたらかんたらくどくどくどくどぺらぺらドゥビドゥバしゃべっている暇なぞない。何か問題や有らん?この自らのオポーチュニティーを無駄にした男を。
 独り言でついつい難しい言葉を使いたがる橋田は、だから角田に笑われるのだ。まるでおまえは善人みたいだな、と。でもおまえがやっているのは心からの善じゃねえぞ、別にかまやしないけどな、俺はおまえみたいにけじめを付けさせる奴が好きだ。彼はそういって大口で笑う。現実から遊離した世界、社会でかれは暗い中に善の裁き。それは果たして許されまじきことと断罪できるのか?
 かつて電車に乗っていたときに出会った女は、確か哀憐と名乗っていたっけか、ともかくも「あなたは偽善者だ」と呟いた。なんだとっ、と振り向けばそこにはもういない。なぜか、彼女が名乗った思いではある。名乗る時間など無かった気がするのに、哀憐の名前を聞いた機会があった気がする。一日しか会ったことのない人間の名前と顔立ちを覚えている。
 などと過去のことを思いだしているうちに帰路に就いていた。大丈夫だ、また返り血は浴びていない。まあ浴びていようと捨てればいいことだ、捨てれば。それにナイフはもう捨てた。…彼は笑っていた。現実逃避はできない。しかし、現実遊離は容易ではないか。偽善者の特技だ。これが。