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山田文公社
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『犬、エゴ、殺し方』【掌編・文学】

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 小松が私の顔を見た。
「かわいそうな動物を救うって言ったな! おい、だったら案内してやるよ、今すぐに! 行って、山に入って救って来いよ! 野犬で入山禁止になった山に入って救ってこいよ!」
 結城も私の顔を見た。
「動物はな、信頼が無ければただの畜生なんだよ、恐ろしい獣なんだよ! 人だって、襲うんだよ……」
 私の目には涙が溢れていた。無力さに……分かり合え無い無力さが、悔しくて仕方なかった。
「警察を呼ぶんだ、早くしないと遺体を食べに、さっき逃げた犬が仲間を連れて戻って来る」
 
 警察がやって来て検証が始まるなか、犬が5匹ほど戻ってきた。警察の威嚇射撃で3匹逃げたが、他の残り二匹が逃げないので安全確保の為に射殺したそうだ。事情聴取が一通り終わると警察は私を逮捕した。動物愛護法違反だと言っていた。どれだけ弁解して反論しても釈放は認められなかった。

 それからすぐに拘置所に送られて、略式裁判で有罪判決が出た。懲役6ヶ月の判決だった。不服だったが国選弁護人は控訴しても無駄と、怒鳴りちらす私に、ゆっくりとわかりやすく諭してくれた。

 刑務所で過ごすなかで人と動物の関わりについて考えた。考えれば考えるほどにそれが人の産み出したエゴであることに至った。動物を飼うのも、捨てるのも同じ人なのだと、人のエゴなのだと知った。
「そうか……人が全てわるいんだな」
 刑務所のなかで、次の仕掛けを考えた。
 引き続き山の犬も始末しなければならないが、その問題の根幹も正していかなくてはならない。
 しかもそれは犬より遙かに狡猾で恐ろしい生き物を相手に……だ。

「さて、どうやって殺すか……」
 秋の夕空を眺めながら、考えるのであった。