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笑えなくなった女の子のお話

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ある街に、一人の女の子がいました。

その女の子は、周りと少し違っていました。
それは、言葉を上手く言えない事でした。
言葉を上手く言えないから、話している内容が周りの人に通じませんでした。
だから、女の子は周りから馬鹿にされていました。

女の子には、お父さんとお母さん、妹がいました。
けれど、女の子の家族ですら、女の子と上手く話ができないのでした。
家族なのに。

女の子が泣いたり、笑ったり、怒ったりする理由が家族には分からず、意味不明でした。
だって、女の子が一生懸命説明しようと言葉を探しているのに、言葉が出てくるまで家族は待っていてくれませんでした。

女の子は心の中でしか叫ぶことができませんでした。
家族から大きな声を出すことを許されていなかったからです。
そして、その心の叫びは誰にも届くことがありませんでした。

女の子が話す言葉は、外国語ではありません。
けれど、周りには女の子の話す言葉が、外国語のように聞こえました。
女の子は話すのがあまり得意ではありませんでした。
だから、言葉が上手く言えず、聞いている人には外国語のように聞こえてるだけでした。

女の子は、昔はとてもお喋りでした。
けれど、お母さんから「もう少しお淑やかに」とか「大きな声で喋っちゃダメ」などと言われました。
女の子が話す時に制限をかけたのでした。
女の子はこの言いつけをしっかりと守りました。

そして、女の子は周りから「いじめ」られました。
女の子は最初は抵抗しました。
しかし、周りはその反応を面白がり、更に「いじめ」をエスカレートさせていきました。
女の子は、周りに助けを求めました。
けれど、誰も助けてくれませんでした。
女の子の家族もでした。

女の子は話すことをやめました。
「だって、あたしが話すとみんながクスクス笑うんだもん」
女の子から言葉が失われ始めたのでした。

すると、女の子は笑うことが出来なくなりました。
声を出して笑うことも、笑顔で笑うことも。

女の子は笑うことを忘れてしまったのです。

そして、女の子はだんだん泣くことしか出来なくなりました。
けれど、女の子の家族は女の子に泣くことも許してくれませんでした。

そして、とうとう、女の子の心の中はからっぽになってしまいました。
何をしても楽しめず、何をやっても面白いと感じず。
何に対しても、「つまらない」という言葉しか、女の子の口から出てきませんでした。

無表情となった女の子に対して、家族は「いらない物、厄介者」として扱うようになりました。
自分達のせいだと気付かずに。

そして、女の子はいつの間にか、誰からも見えなくなってしまいました。
そして、いつの間にか、女の子はいなくなってしまいました。

(終わり)