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夢と現の境にて

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「…ん―…」

微かな呻き声、顔を見ると狭霧はまだ眠そうな様子で眩しそうに目を瞬かせた。しかし、俺を視界に捕らえるや否や目を見開いて「は…!?」と驚いた声をあげて飛び起きた。前も思ったが寝起きはいいほうらしい。

「な、なんで…いるんだよ」
「呼ばれないから…、それよりお前大変なことになってるぞ」

言いながら狭霧を指差す。寝ていた時点で着崩れていた着物は動いたがために肩から滑り落ち上半身は殆ど裸。帯も緩々な状態で前も開いて足も覗いている。寝相は最悪らしい。
指摘された狭霧とはというと、自分を見、顔を赤くした後「うっさい、ほっとけっ」といいながらもそれを手早く直し布団も整え始めた。その様子を一部始終見ていた俺は、ちょっと得した気分に浸りながら黙って終わるのを待っていた。

狭霧は周りを片付け終わると、顔に似合わず堂々と胡坐をかき「で」と話を切り出した。

「何しに来た」
「協力しに」
「…呼んだ覚えはない」

そういいながら目も合わせない。やっぱり協力なんてできないのだろうか。そうしたら俺がここにいる意味をなくしてしまう。だから単刀直入に聞いた。

「なら、いつになったら呼んでくれた」

今度は狭霧が黙りこくる番だった。唇を硬く閉じ、目を伏せながら何事かを考えている。こいつにとったら俺はそんな大きな存在ではないのかもしれない。それでも

「…分からない」

狭霧が口を開いた。搾り出すような声。俺とやっと目を合わせるとそのまま続けた。

「最近夢見が悪いんだ。いつも…誰かが死ぬ夢を見るっていったけど、それだけじゃない。現実には起こらないはずの、人が死ぬ夢も見る」

どういうことだと顔を顰めると、なんといっていいのかなといったように狭霧は腕を組んだ。

「人から聞いた話だが、夢を見ているとき之は夢だ、と思うのは、有り得ない事が起こればそう思うものだと聞いた。」

俺の場合はそれが人が死ぬ場所ややり方で置き換えられる、と憎憎しげに言葉を紡ぐ。

「例えば背景が明らかに日本のどこかじゃなかったりとか、変な場所だったりとか、殺し方が可笑しかったり、人じゃなかったり…まぁ、色々ある」

そういうのは大体、予知夢ではなく自分が見る謂わば、普通の人からしたら唯の夢ということになる。だが、そんな夢が唯の夢といえるだろうか?はっきり言えば悪夢だ。

「俺の夢は、必ず絶対、何かが命を落とすんだ。唯の夢であろうが、予知夢であろうが。俺の意思とか思考とか関係ない、唯見せられる」

本当に迷惑な話だよな、と狭霧は乾いた笑いをする。そしてまた真剣な顔へと戻ると小さく溜息をついた。

「そういう時は大体…体調が崩れる。ヤバイ時は精神的な面だけど。そんな状態でお前を呼んでも、予知夢も見てないわけだし、単に迷惑かけるだけだろうから」

だから呼ばなかったのか、と心の中で呟いた。そんな、一番大変そうなときに俺は呼ばれない。何もすることがないだろうからと、そんな理由で。

「体調が崩れたとき、いつもどうしてる」
「え?」
「一人で堪えてるのか」

不躾な言い方になる。怒ったようにも聞こえているだろう。だが実際、俺は怒りが込み上げていた。

「しょ、しょうがないだろ。こうなるとどうしようもないんだよ」

狭霧が怖じけた様に声をだす。しょうがないって、何がだ。何がしょうがないんだ

「俺がいても、それは変わらないのか」

狭霧が目を見開いた。呆然と見つめるその視線を真剣に見る。
なんで、そんなことを一人で抱える必要があるのだ。どうして

「わ、分からない…」

困惑したように首を振る狭霧に、俺は苛つきが沸き起こる。
なんで、どうして頼らない。まったく、この、阿呆は…

俺は一度目を瞑ると、息を吸い込んだ。



作品名:夢と現の境にて 作家名:織嗚八束