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くりすます

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「それは、おまえの行動いかんによる。ちゃっちゃと風呂入ってメシ食ったら、サンタの俺も時間があるで? 」

「ええんか? おまえ、明日も仕事やろ? 」

「なんとな、明日も定時なんや。せやからやれる。」

 定時なら、軽い運動をしてもどうにかなる。無茶はでけへんけど、それなりのサービスはできるはずなので、そう言うと、ダンナは楽しそうに風呂に向かった。連日の深夜残業に休日出勤が続いて、ここんところ、そっちの相手はしてなかったから、ちょうどええ。

 ダンナがカラスの行水で風呂から出てくるころに準備は整っていた。食卓の真ん中に、半身の七面鳥とシャンパンの小瓶、それに野菜スープと焼き魚という陣容が並んでいる。

「チキンか。」

「どあほ、七面鳥じゃ。今日と明日は七面鳥に決まっとる。」

「ええーこれ、高いやんけ。」

「かまへん。たまにのことやし、せっかくやったら、やっぱり笑いのネタはいるやろ? 」

「シャンパンもか? 」

「これは洒落や。おまえ、乙女やから雰囲気も大事やろう? 」

「雰囲気て・・・・うちの家やったらシャンメリーでええんやんけ。」

 ぶつぶつと言いながら、ダンナは先を越された、と、居間から小さなツリーとモールで出来た小さなトナカイを食卓に運んできた。

「おまえもやっとるやんけ。」

「そら、やらなあかんやろっっ。クリスマスやねんから。」

 どうしても、笑いのネタというイベントはやりたいらしい。カチンとコップを合わせると、へらりとダンナは笑った。

「初めてや。おまえが生きてるイヴイヴ。」

「せやなあ。俺も初めてやわ。」

 いつもは、死に体でご飯を食べて眠るだけの状態で、こんなふうにゆっくり食事することもない。ふたりして、この時期にシャンパンを飲む余裕なんてものは初めてのことだ。

「ほんで、東川のおっさんは、なんで孤独なクリスマスなんよ? 」

「それがなぁー可哀想な話なんや。あのな・・・・」

 今夜の時間をプレゼントしてくれた東川サンタについての話をしつつ、ふたりでシャンパンを飲みつつ、七面鳥を切り分けて箸でつつく。

 それはそれは・・・と、ダンナは同情する言葉を吐きながら笑っているし、俺も、その話をしながら、肩を震わせる。いかついおっさんのサンタは、俺らに初めての時間を贈ってくれた。それが、俺ららしくて笑える。

「ほんなら、明日は外食でもするか? 」

 せっかくなら、そういうこともするか、と、ダンナは言い出したが、俺は反対や。そんな似合わへんことせんでも、家でのんびりするほうがええ。

「疲れることせんでも、うちで茶漬けがええ。」

「さよか、ほんなら、ちょっとええ料理用意して疲れることさしてもらうわ。軽めでな。」

「連荘? 」

「せやから、軽めに二日。今日は、おまえがサンタ。明日、俺がサンタ。」

「・・・・・どあほ。んなエロい顔のサンタおるかっっ。」

 へらへらとダンナは楽しそうにエロい顔で笑っている。なんか想像しとるか、明日の予定を組み立てているに違いない。

「まあ、まかせとき。悪いようにはせぇーへん。」

「どこの悪徳金貸しや? その台詞。」

「そういうのがええか? 」

「ああ? 普通でええ。」

「普通? それは・・・・・向き合ってるほうがええっちゅーことやろか? 」

「男同士は背後が普通やろ? 」

「それ、寂しいんやで? 動きやすいけど、おまえ、無口やからそそられへんのよ。『ああーん』 とか 『いくぅーん』とか台詞追加してくれたら、それでもええけどや。」

「はんっっ、言わせてみぃーや。俺がわけわからんようになったら、言うかもしれへんで。」

「あほ、そこまでやったら、翌日、起きられへんやろ? それは正月にたっぷりする。」

「なんでもええけど、仕事に行けるようにはしといてや。」

「はいはい、合点承知の介。」

 だらだらとアホな与太話をして食事した。それから、ダンナが片付けをしている間に、俺のほうは風呂に入る。



・・・・・・綺麗に洗っておくとしょーか。・・・・・・・



 ここいらでストレス発散しておけば、年末年始の忙しいのも乗り切れる。ほんま、ええサンタやわ、東川のおっさん、と、感謝しつつ湯船に浸かった
作品名:くりすます 作家名:篠義