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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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太陽と影

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【太陽と影】



その女は太陽だった。眩しく輝く太陽だった。けれど太陽の強い光はこの目を焼き、心を暗闇に落としてしまう。



私は太陽にも影にもなれない。


私には幼なじみがいた。その人はとても美しく、すべてにおいて優秀だった。能力、容姿、性格、魅力……彼女は愛される資質を持って生まれていた。
それらは私には到底持ちえないものだった。私は醜く、すべてにおいて劣った人間だった。

私達はまったくと言っていいほど似ていなかった。友人ではあったが全くの別の生き物だった。
周囲の人々は当然、彼女を愛した。魅力的で優しい彼女といると幸せな気持ちになれたんだろうと思う。
彼女は優しかった。……こんな私にも、優しかった。


当然のように私は彼女が大好きで愛していたし、また、……大嫌いだった。それはきっと何よりも自然なことだろうと思う。人の心は人を愛し、人を憎むものなのだから。
妬みと、そして憎しみ、嫌悪感……。



私と彼女は物心ついたときから友達だった。お互いの家が近かったからだ。私と彼女は何をするのも一緒だったし、いつもふたりだけの秘密の世界にいた。

私は彼女の言うことを聞いた。彼女の言うことはいつだって正しいのだ。彼女の言うことなら何だって信じられたし、また彼女の存在に心から安心するのだ。
私は彼女が大好きだった。
ふたりの秘密の花を愛した。


そして、小さい頃、私は性格も弱く、おどおどとしていたために近所の子からよくいじめられていた。物を盗られたり、馬鹿にされたり、嫌がらせをされていた。
彼女はそんな私をかばってくれていた。
私は彼女に感謝すると同時に、自分が嫌になっていた。
自分で自分を守ることすらできずにかばってもらっているのだから。
私は脅えたまま泣くばかりだった。本当に情けない生き物だと思った。

そして、かばってもらうたびに、彼女のことも嫌いになっていった。
なんと自分勝手な感情だろう。彼女に救われれば救われるほど、私はみじめになり、少しずつ心が割れていった。

人をかばうなどという吐き気のする行為をなぜ彼女はできるのだろう。助けることで救われる命には必要なのだろう。
けれど、助けることで壊れていく心ならばどうすればいいのだろう。

私は彼女の笑顔も嫌いだった。暖かく優しく、どこか作り物めいていたから……。
どうしてそんな嘘のような笑顔ができるのだろう。
私は自分の思い込みだとは思いながらも、その笑顔が嫌いで、怖くて……悲しかった。彼女はもしかすると、心から笑っていないのではないかという不安が私の心にあった。


そんな私達の関係はずっと続いていた。
彼女を愛し、彼女を嫌悪する私の気持ちも渦のように私の心に流れていた。
作品名:太陽と影 作家名:冬野すいみ