小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ひとつの桜の花ひとつ

INDEX|4ページ/32ページ|

次のページ前のページ
 

街を歩いて


「そうですね、この部屋なら、空いたたばかりですけど、中は見れますよ。こっちは28日にならないとお引越しにならないので、中はまだですね、外観だけにならごらんになれますよ」
座っていた、女子高生と母親に説明をしていた。
推薦で、大学が決まっているらしく、にこやかなお嬢さんと母親だった。
「では、見させてもらってもいいですか・・」
「はぃ、歩いて両方いきますか・・」
「お願いします」
ま、言わなきゃ、若い社員に見えるらしく、なんとなく、こっちが恥ずかしかった。
「ちょっと、待ってくださいね、鍵とりますから」
後ろを振り返って、主任の大橋さんを見ると片手に鍵を差し出して、にっこりだった。がんばってねって顔だった。

「中は見られないんですけど、そっちのお部屋からご案内しますね」
歩きながら横の母親にだった。
「中は見れないんですね」
「えぇ、すいません、でも、築3年で綺麗ですよ、駅から7分ぐらいですね」
「そうですか、この辺のことはまったくわからないんですけど、娘がここがいいらしくて・・」
「人気の駅ですから、少し高いですけどね、便利なところですよ」
家賃は少しって感じではなくて、だいぶ高い場所だった。
「そうですか」
「駅前はにぎやかですけど、少しあるくと静かですから、いいですよ」
駅前は12時になってもにぎやかな街だけど、少しあるけば、やっぱり世田谷の古い街だったから、静かな住宅街が広がっていた。
「えっと、あれですね、あの白いマンションです」
あんまり、おかーさんにばかり話しかけていたから、お嬢さんにだった。
「はぃ」
短い返事だったけど、うれしそうな笑顔だった。おかーさんも娘さんも話し方はなまりがなかった。
「3階建ての、2階の向こうから二つ目です」
「南ってどっちなんですか・・」
「こっちですね」
お嬢さんに聞かれて手を上げながら指差していた、少しだけ東を向いた、南南東に面して大きな窓のある部屋だった。
「部屋は見れませんけど、入り口まではいってみましょうか・・」
2人をうながして、階段を登っていた。
「床はフローリングで、ユニットバスで、トイレは振り分けですから・・」
「あのう、これって何畳なんですか・・」
ワンルームのフロリーングの部屋だったから、おかーさんには広さがわかりづらいようだった。
「8畳かけるぐらいですね、広いほうですよ、で、ここにクローゼットがついてます」
2人に部屋の間とり図を広げながらだった。
「今の方が引越しされてから、掃除いれますので、入居は3月頭になっちゃいますね、ここは・・」
「もう、それはかまわないんですけど・・」
2人に一緒に言われていた。
「中が見られればいいんですけどね、他の部屋も空いてないもんですから、すいません」
「いいえ、新しいから綺麗ですね」
お嬢さんが嬉しそうにだった。

「えっと、このマンションはもう中に入れますから・・」
二つ目は、もう少し歩いた、静かな場所に建っていた。住宅街だったから小さなマンションだった。
「3階のお部屋ですか・・」
「そうですね、こっちは角部屋です」
鍵を回して中に一緒に入りながらだった。
床張りの台所と、奥に6畳ほどの和室になっていて、少し年数は経った部屋だった。それでも、10年ほどだった。
「どっちがいいの・・京子・・」
「うーん、悩んじゃうなぁ・・おかーさんは、どっちがいい・・」
話し声を少し離れたところから聞いていた。個人的にはこの部屋のほうが古かったけど、静かな場所で好きだった。
「どうしましょう、会社に戻りますが、ご一緒いたしますか・・」
ドアの鍵を閉めながらだった。
「はぃ、そうします」
「下北沢ですと、ご予算ですとこれぐらいですけど、他の駅でもよろしければ、まだ物件もありますし・・」
感触としては、どっちかの部屋に決まりそうな気がしていた。
「会社に帰る途中で、よろしければ、もう少し高くなりますけど、ご案内できる部屋もありますよ」
「えっと、いいです、きっと悩んじゃうから・・」
お嬢さんがはっきりとだった。
「あら、見せてもらえばいいのに・・」
「いいって、絶対そっち気になっちゃうし」
「そう・・遠慮しなくてもいいのに・・」
「悩んじゃうからいいよ、私、さっきのが気に入ったから・・」
「そう・・ならいいけど」
なんか、あっさりこのまま決まっちゃうのかもって思っていた。

「いかがいたしますか・・」
会社の前で、2人にだった。
「ちょっと、だけコーヒー飲みながら相談してきますから、その間待ってもらってもいいですか・・」
「はい、時間決めてもらえれば、他のお客様にご紹介しないようにしますけど・・30分ぐらいでよろしければ・・」
時計を見ると、11時30分だった。
「それで、充分です」
娘さんのはっきりした返事だった。
「では、12時までに戻ってきてもらえるか、ここに電話をお願いしますね」
なんだかアルバイトなのに名刺まで出来あがっていたから、それを差し出しながらだった。
「はぃ すいません、すぐに戻りますから」
「いいえ、時間までならゆっくり相談なさってください。ではお待ちしてます」
言いながら頭を下げて会社のドアをまわしていた。

「どうなの・・」
カウンターにいた石島さんに聞かれていた。
「うーん、どうかなぁー 30分だけ相談って言われたんで、それまで、物件止めてください」
「うん、いいよ」
「見たのでダメでも、なんとなく他の物件でも、押せそうな感じです」
「そう、頑張ってね、主任はお客様のご案内でてるから」
「はぃ」
石島さんは朝から電話で、昨日物件を紹介した人が、電話で契約を申し込んできて、午後に本契約を1件とっていたから、けっこうご機嫌なようだった。
「柏倉くんってさ、社長の知りあいなんだって・・」
「はい」
「お父さん同士が友達だったりするわけ・・」
「叔父なんですけど・・」
聞かれなかったから、初めて口にしていた。
「叔父って、うちの社長が叔父さんって意味だよね、柏倉君の・・」
「はぃ、親父の弟ですね、あ、弟さんです」
「えっー 知らなかったぁ・・ちょっと早く言ってよー」
「隠してたつもりじゃないんですけど・・」
「それって 知ってるのって私だけ・・」
「ここではですかね・・本社では知ってる人何人かいると思うけど・・」
「そっかぁ・・ちょっと面白いから内緒にしとうこかな・・」
「どっちでもいいですよ、別に」
「じゃあ、内緒にしといてよ、ばれちゃうまでは・・面白いから」
なんかうれしそうな顔をしていた。
俺は、少し苦笑いだった。

作品名:ひとつの桜の花ひとつ 作家名:森脇劉生