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初恋

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 その視線が追う先にあるものがなにかってことぐらい、実はとっくに、気がついていた。




■■■




 そいつは何故だか、昼休みのたびにうちのクラスにやって来た。
 隣のクラスの男で、来るたびに歌ったり騒いだりでまったく落ち着きというものがなく、あたしは最初ただやかましい上にバカなそいつのことが、実はちょっと苦手だったりしたんだけれども、さすがにガッチャマンの替え歌をフルコーラスで、しかも振り付きで歌われたときには笑うしかなかった。
 そいつが教室にやってくる目的であるところの、幼馴染であると言う相良くんは、「お前、バカだなあホントに」と、よくそいつのことをそう評していた。
 それと同じように、「バカだけど面白いから許す」と言うのが、うちのクラス全員の、あいつに対する評価だった。
 女子の家庭科の授業に、女装までして紛れ込もうとした男。合唱際で一人、頭に大マジメにウサギ耳をつけて入場して、担任に大目玉を食らった男。遠足で、クラスメイトの男子と「バスガイドのお姉さんのスカートを捲ったら一万円」の賭けをして、バスガイドのお姉さんを泣かせてしまった男。


 やりたい放題の子供みたいで、始終能天気に笑ってばっかりの、悩みなんてきっとないんだろうななんて思わせるそいつの名前を、「芹沢彬」と言った。



作品名:初恋 作家名:ミカナギ